第32話 沙織の家族


 恵子は亮に「大熊清隆」の遠縁である事を由香里にバラされて言い争いになって、プ-ルに突き落としたと茂に話したが、亮は元々その事実は知っていた。何故恵子は由香里を殺害したのか?

 

 恵子は亮が大好きだった。それなのに……亮は冴えない由香里に興味津々。実は…恵子と由香里は年頃で2人の時は恋バナに夢中だった。2人は時間があれば亮の話で持ち切りだった。由香里が亮に夢中なのは恵子はよく知っていた。そして亮も暇さえあれば恵子ではなく由香里の側で微笑んでいる。恵子は不安で一杯だった。


 それでは亮は由香里の事を恋愛対象と見ていたのか?


 亮は由香里を恋愛対象とは思っていなかった。お手伝いトキにあまりにもそっくりなので思慕に似た思いで、近付き居心地の良さを知った。


 だが、由香里はそうでは無い。「滝水高校」の王子様と呼ばれている亮に夢中になってしまった。


 兄茂と弟亮と由香里と恵子は高校生時代は只のお友達関係で、亮と恵子がカップルで兄茂と由香里がカップルだったと思われているが。兄茂は由香里ではなく恵子に夢中になった。亮はというと傲慢な恵子に言い寄られて付き合っては見たが、友達から「大熊清隆」の事を聞かされて一層恵子に興味が薄れた。だが、由香里との時間は掛け替えのない時間だった。


「亮君由香里ちゃんに興味津々だけど……どこが良いの?」


「別に由香里とはそんな関係じゃ無いから……」


「ハッキリしてよ。私と由香里どっちと付き合いたいの?」


「………」


「ハッキリ言って!もし……亮が由香里が好きだったら……その時は……私諦めるから……」

「僕は由香里ちゃんの事をお友達として好きなんだ」

 安心した恵子は尚も問い質した。


「じゃ—私の事はどう思っているの?由香里と私どっちが好きなの?」


「………」


「ハッキリして!」


「兄が恵子のこと好きって言っていたよ」


「それどういう事よ?」


「もうハッキリ言うけど……俺恵子より由香里の方が友達として……好きさ」


 恵子は亮との高校生活に、殆どを捧げていたと言っても過言では無かったのに、あんな冴えない貧乏人の由香里に負けたかと思うと、プライドがズタズタに傷付けられ居ても立っても居られなくなった。


(この2年余りの秘めた思いを、今更あんな冴えない由香里のせいで壊されて堪るものか!由香里さえ居なくなれば亮を自分のものに出来る!)と思い殺害に至った。


     ★☆


 それでは弟亮殺害犯人は一体誰なのか?

 その前に、1992年10月某日午前0時半ごろ、愛知県T市の民家から出火し全焼。現場からこの家に住む夫神崎茂さん44歳と妻恵子さん42歳夫婦、更には長女めぐみちゃん16歳と長男剛君10歳の殺害された遺体が発見された事件だが、この事件で唯一の生き残りとなった神崎沙織の事を詳しく説明しなくてはならない。


 神崎沙織は、現在34歳の平凡な主婦だ。


 30年前沙織は両親と新興住宅地の建売住宅に住み着いたのだが、ここの土地一帯は神崎家の所有地だった。だが、資産家神崎家だけは注文住宅である。


 沙織の夫拓也は町内が一緒で始終顔を合わせていた。そして幼馴染みの拓哉と結婚して早いものでもう彼此5年の月日が流れていた。


 沙織の父親は創業25年周年を迎えた地域密着型の中堅ス-パ-「ヤマカネ」の社長さんだが、現在愛知県下に30店舗を展開している。そして…優しい母親は専業主婦として家族を支えてくれている。一方の拓也は両親が市役所の職員という極々一般家庭の次男坊だ。


 

 ここで沙織の両親を詳しく説明して置かなければいけない。 


 母親は一家4人放火殺人事件の被害者で、父茂の愛人だった当時25歳の里美だった。里美は名古屋錦の高級クラブ「蝶」のホステスだったが、茂との間に子供が出来た事によって「蝶」を辞めていた。その時の娘が沙織だった。


 ひと頃は茂の寵愛を一身に浴びて贅沢三昧の生活を送っていた里美だったが、茂と深い関係になる以前から若い男がいた事が判明し、真実を知った茂と里美には別れ話が出ていたというが、その愛人は兄茂の弟亮が21歳の時に風俗店勤務女性との間に出来た子供直樹だった。


 一家4人放火殺人事件の被害者父茂の弟亮の子供直樹が兄茂の愛人里美の夫になっていた。そして…兄茂と愛人里美の間に誕生した娘が沙織と言われていたが、どうも……若い愛人直樹の子供らしい。


 弟亮の息子直樹は神崎一家が亡くなり、相次いで祖父母も他界した事によって神崎家の全財産を相続した。

 

     ★☆

 

 1977年5月某日早朝、名古屋市の公園や民家の敷地内で見付かったバラバラ遺体は、神崎亮だった。

 まだ幼子だった亮の息子直樹は母美枝子と生きて行く事となった。亮が残してくれた相続分の不動産が有ったので賃貸アパート、賃貸マンションの経営で生活をしていたが、母が仕事で忙しい時は祖父母宅で面倒を見て貰ったり、兄茂の愛人宅に預かって貰っていた。その時に4歳上の愛人里美と知り合った。

 

 幾ら不動産を相続したと言っても、築年数が古いせいも有って入居者にばらつきがが有り、また不動産の修繕工事にも費用が掛かり、直樹は大学時代にアルバイトを始めた。


 母に似て顧みずな性格で、アルバイトもピンからキリまで色んなアルバイトをしたが、その中の1つが里美が紹介したクラブだった。だが、伯父茂に反対されて直ぐに辞めた。だが、ス-パ-のアルバイトだけは長続きした。こうしてスーパ-経営に乗り出した。不動産経営は母美枝子が社長として辣腕を振るっている。


  兄茂は子供2人の世話で大変な恵子に、亡くなった弟亮の息子直樹の面倒を見てもらう事は気が引けた。だから直樹の母美枝子が仕事で留守の時は、愛人里美に直樹の世話を頼んでいた。だから……里美と直樹は以前から顔見知りだった。


 こんな関係から、直樹は里美に強引に言い寄られて男女関係となった。


     ★☆

 直樹は小売りの仕事が好きだった。お客様に新鮮な生鮮食品を提供する仕事に誇りを持っていた。こうしてM&A「企業の合併・買収」を繰り返し行い現在に至った


 ※合併:2つ以上の企業を1社に統合する。

  買収:一部または全部の株式を別の企業が買い取って、経営権を取得する。  


 現在は創業25年周年を迎えた地域密着型の中堅ス-パ-「ヤマカネ」の社長さんだが、現在愛知県下に30店舗を展開している。


 ただ1人生き残った沙織の家族構成も大まかではあるが分かったので、いよいよ本題であるバラバラ遺体殺人事件と、一家4人放火殺人事件犯人の犯人追及の時が来た。

 犯人の正体は?


 











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