第26話 大殺戮現場
最近清は投資話で金融機関や企業を駆け回る仕事を従業員の大番頭に任せて、あれだけしつこく食い下がった母の言う事が本当なのか調べようと、仕事で出掛けたと皆で口裏を合わせて、屋根裏部屋に隠れて父優作の実態を探ろうとした。
(嗚呼……どうせ……母の考え過ぎに違いない)そう思い仕事の疲れも有り深い眠りに落ちてしまった。
「キャ――――――――――ッ!タタ 助けてください!タタ タスケテ――ッ!」
余りの悲鳴に一気に目が覚めた清はこっそり声のする方へ降りて行った。するとその時父が別宅の地続きになった清夫婦の、エリと梨香子が眠っている寝室に入って行く所だった。
(だが、ここで出て行っては証拠が掴めぬ)するとエリが梨香子を連れて何とも着物が乱れて、半裸状態で寝室から出て来た。
そして…恐怖に満ちた凄い悲鳴をあげて慌てて夜の闇に逃げ出して行った。エリはこんな夜中に電車は走っていないので、父優作から逃れるために、使われていない納屋の2階で一夜を過ごし、朝こっそり抜け出して岐阜県多治見市のエリの育った故郷に着いた。
本当は里に顔を出したい所だが、今の現状を考えればあの卑劣な舅に居場所を知られる事だけは避けたかった。
こうして…いつもどんな時も農作業に従事している次郎の所に助けを求めた。
「次郎相談があるの。お願い!一生の私の頼み聞いてくれる?」
「お嬢様の要件でしたら……何でもお受けします。ところで……その要件とは何でしょうか?」
「あのね……暫くの間……梨香子を預かって欲しいのよ。深い話は出来ないのだけれど……私……近藤家を出ようと思っているの。だから……近藤家の追っ手が梨香子を連れさらって行かない為にも……梨香子がいる事は絶対に言わないでね。必ず……私……必ず梨香子を迎えに来るから……もし梨香子の正体を知られたら……名前を偽って……別の名前で呼んで頂戴!」
そして…多額の金貨とお金を渡してエリは、またしても足早に去って行った。
一体夫清とどんな話になって居たのか?
★☆
エリは夫清に相談していた。それは……舅と同じ敷地内で生活していてはまた同じことの繰り返しになってしまうと思い、一日でも早くこの家から逃げ出したかったからだ。かと言っても夫清に舅に無理矢理犯された事実は話せない。
「ねえ?あなた……梨香子の為にも……名古屋で生活したいのよ。色んな環境が整っているでしょう?」
夫の返事はいい加減なもので、はぐらかされっ放しだった。そこでエリはいつまでも煮え切らない夫清との別離を考えて、梨香子を当面次郎宅に預けて迎えに行く算段でいた。
一方、姑は姑でこのままでは夫がエリの魅力に狂って、自分の居場所が無くなってしまうと思い危機感を感じた姑は、一刻の猶予も無い何とかしないと追い出されてしまうかもしれない。
そこでこの家の大黒柱清に全てをぶちまけた。
☆★
この日は町内会の祭りの練習で父優作は出払っている。父優作は笛の名手で指導に当たっていた。3人母カヨと息子清に嫁のエリは早速この日を待っていたかのように、誰も居ないのを見計らって何やら居間でひそひそ話を始めた。
「お母様……僕もこの目で父の悍ましい姿を目撃しました。そこで僕は考えました。エリと父のどちらが僕にとって必要かということです。僕はハッキリと結果が出ました。お母様はどうですか?」
「私も同じだよ。あの獣……何とかしなくては……」
「エリさんあなたの気持ちはどうなの?」
「私も……ハッキリ言って……あんな獣何とかして欲しいです」
「エリ本当にお母様が言った事は……本当なのか?」
「ウウウ(´;ω;`)ウゥゥワァ~~~ン😭ワァ~~~ン😭」
「どうなんだ!ハッキリ言って見ろ!」
「ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭」
「清およし!私はこの目でハッキリ見たんだ。あの獣生かして置いて何になる?」
「俺もエリをメチャクチャにした父が許せない。あの畜生殺したい!」
だが、祭りの練習は獅子舞いなどが出て本格的な練習が屋外で行われていたが、雨が降り出したのでお開きになり父優作は家に帰って来て、3人の話をこっそり聞いてしまった。
そこで優作は拳銃を肌身離さず隠し持ち用心に備えた。
※実は…明治から大正期までは、高額納税者であれば拳銃は所持ができた。拳銃に対して寛容な時代だったと言える。また明治時代は銃規制は有ったものの、許可さえとれば購入する事ができた。
★☆
ある日の夜の事だ。この日は久しぶりにお手伝いさんも早く返して一家団らんで食事を囲んでいる。可愛い娘梨香子は次郎に預けてるので家にいない。
3人は相談した挙句、巨体な優作を殺害するには睡眠薬で眠らせて殺すしかないと考えて、この日はこっそりみそ汁の中に、睡眠薬を混入して眠らせて殺す算段でいた。
すると……案の定巨体の優作は眠りに付いた。
3人は考えたどんな殺害方法が一番犯行が見つかりにくいか?それは……跡形もなく消す方法。田畑を多く所有していた近藤家は山林も多く所有していた。田畑は耕すのでバレるので山林に埋めようと考えた。
こうして…やっと眠った父優作が、いつ何時目を覚ますやもしれないので、縄で縛り付けようと3人がかりで作業し出した。すると、その時父優作が目を覚まして3人に銃口を向けた。
優作は3人の話をこっそり聞いていて、4人だけの状態の時には殺される可能性があるので注意を払っていた。
「貴様ら!何という卑劣な真似をするんだ。絶対に許さん!」
「3人供土間に座れ!」
3人は恐る恐る土間に移動した。だがその時、清が足早に父優作の拳銃を奪おうとした。すると優作も負けてはいない。危機感を察知して誰彼無しに最後の悪あがきで拳銃を発砲した。
だが、昔の拳銃なので連射出来ないので、もたもたしていると女二人は拳銃では太刀打ちできないと危険を察知して、咄嗟に台所から包丁を取り出し、この憎き優作に向けて突き刺した。
父優作も自分の命が惜しいので死に物狂いで刃物を向けたカヨを、一思いに拳銃で撃ち殺してしまった。そして、今度はエリに狙いを定めた。
まさに断末魔だ。おびただしい血の海となって行った。
だが弾を詰めるのに時間が掛かる。エリも必死だ父優作の息の根を止めようと、刃物で父優作を尚も必死に差し続けている。
「エリ許さぬ!よくも――ッ!」
エリに銃口が向けられたその時、清が父の拳銃を取り上げようともみ合いになり、その銃口は清に命中して清はその場に倒れた。
「あなた――――ッ!ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭嗚呼……何て事を……何て事をウウウ(´;ω;`)ウゥゥワァ~~~ン😭ワァ~~~ン😭」
血みどろになった優作はエリに近付き「ウウウ(´;ω;`)ウゥゥワァ~~~ン😭ワァ~~~ン……残酷な事になったウウウッ(ノД`)シクシク……エリ……もうこれ以上血を流さずに……頼む……仕方ないウウウ(´;ω;`)ウゥゥワァ~~~ン😭ワァ~~~ン……俺と……俺と……生きていこう!」
「何を……何を……おっしゃるの……いい加減にして下さい。誰があなたなんかと……もう……私に近付かないで下さい」
エリはその場から逃げて……逃げて……梨香子の待つ岐阜県を目指した。
だがその時、銃口がエリの頭部を一撃、エリはその場に倒れ帰らぬ人となった。
当然父優作も出血多量で息絶えてしまった。父優作はどんな事をしてもエリを離したくなかった。
土間からおびただしい血が流れ出し、どれ程の惨劇だったのかを思い知らされる大殺戮の現場となった
こうして…4人は無念の死を遂げてしまった。
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