第25話 母と息子清と嫁エリの話し合い
それにしても……何故恵子は由香里が虐めの標的になった時に、お友達だという事をおくびにも出さず、庇うどころか一緒になって暴言を吐き無視したのか?
恵子の家庭に大きな問題、それは父親の家族に対する日常的に行われる罵倒と暴力の数々に耐え兼ねて、そのうっ憤を晴らす相手が気の弱い由香里だったと言われているが、当然それも大きな要因のひとつではあるが、実は…恵子自身が父親に似てサディストだった。
だから…由香里が虐めの標的になり、悲しみうろたえる姿にゾクゾクと快楽を感じていたのだ。
※サディスト:相手を痛めつけることで快楽や喜びを感じる人。
そこで腹に据え兼ねた由香里は、今まで耐えに耐えたうっ憤が爆発してしまった。興奮して皆の前でとんでもない事を言ってしまった。
「恵子ちゃんはね、大殺人鬼の誰もが知っている大熊清隆の親戚なんだよ!」
テレビが急激に普及した事によって、昭和の大殺人鬼特集がよく組まれていた。それなので、誰もが知っている連続婦女暴行殺人事件犯人「大熊清隆」が、恵子の親戚だと分って恵子は学校での居場所をすっかり奪われてしまった。
こうして…色んな伏線が複雑に絡み合い由香里殺害事件に突き進んで行く事となる。
恵子は由香里が発した言葉が原因で、光が丘小学校に居られなくなり転向を余儀なくされてしまった。
それでも…由香里不審死に亮バラバラ遺体殺人事件、更には一家4人惨殺放火殺人事件の真相究明の為には、100有余年前の事件を掘り下げ無くてはならない。
★☆
「キャキャ――――――――――ッ!ヤヤ 止めて下さい!」
エリは舅と夫清の三角関係の縺れから一時的に逃げて逃げて逃げて両親の住む岐阜県多治見市に辿り着いた。だが、両親宅には絶対に行けない。それは…娘梨香子を近藤家に取られてしまうからだ。エリはどんな事をしても娘梨香子と2人だけで生きる事を決意していた。
そして…10年前にこの多治見のお寺の境内で助けて貰った少年たちとは、エリの少女時代にすっかりお友達関係が築かれていた。
エリは梨香子を抱えて逃げて逃げてやっとの事、神崎家の息子で小作人の息子次郎に、金貨とお金を渡して「少しの間梨香子をお願いします」と言って逃げた。それはあの卑しい舅から逃げ出して来たのだった。
だが、エリはその後どうなった事か、そこには想像だにしない悲劇が繰り広げられていた。
そして…梨香子は母エリと永遠の別れを迎えていた。更には……近藤家では…恐ろしい惨劇が起こっていて、誰一人として梨香子を迎えに来たくても来れなかったのだ。
母エリが最後に神崎次郎に言い残した言葉それはこんな言葉だった。
「どんな事をしても、この梨香子を守って下さい。追っ手が追いかけて来ない為にも名前を変えて……どうか……どうか……暫くの間お願いします。私は必ず梨香子を迎えに来ます」
あの時は少年だった次郎は、一家の大黒柱として小作人ながら独り立ちしていた。こうして梨香子は名前を神崎ヤエとして生きて行く事になった。
☆★
どうしてエリは、このような状況に追い込まれてしまったのか?
実は…事件の発端は母カヨだった。カヨは当主で夫優作の事では並々ならぬ積年の恨みを抱えていた。それは……一度ならずも二度も夫の醜態を見せ付けられた事への憤り、それも一番有ってはならぬ腸をかきむしられるほどの一撃を喰らわされていた。
頭に血が上り、血が激流して焼き殺しても足りないほどの激しい嫉妬にかられた出来事。夫優作の愛の頂点現場を二度も見せ付けられて、腸が煮えくり返り改めて自分にもまだ女の部分が有った事を、まざまざと思い知らされる事件だった。
それも……この世の者とは思えない美しいエリとのセックス現場を目の当たりにして、この今の気持ちをどう整理したらいいものか、手立てが見つからなかった。
当然以前の芸者との本番を目の当たりに許しがたいものが有ったが、それはカヨを追い出したくて敢えて醜態を見せ付けて追い出そうとした感が強かったのだが、あの頃は大地主様で政治家という、二足の草鞋を履く飛ぶ鳥を落とす勢いの優作だったので、優作の周りに寄って来る女性達も名立たる女性達ばかりだった。
後援会に名を連ねる貴族の子女や有名詩人、作家、更にはブルジョアに至るまで優作の周りには名立たる女性達が言い寄っていた。そんな名立たる女性達からすれば、冴えない年増の妻カヨなど目にも止まらない。
いくら可愛い息子の母親だとしても、自分の思い描く女性と結婚すれば幾らでも子宝には恵まれる。あんな落ちぶれ果てた織物問屋の実家が、バックに付いている冴えない女なんか、何の役にも立たない。だから天狗になり、調子に乗りまくっていた頃だ。
カヨにすればあの頃は清がまだ幼かったのと、弟が不出来で実家に援助をして貰わなければ困るので絶えることが出来た。それから……名立たる女達も政治家の力を借りて自分達に都合よくが引き立てて貰えればいいのだ。事がうまく運べば去って行ってしまった。
それから……目の前で芸者との本番を見せられたからといっても、一流芸者ではない、所詮蹴転(けころ)と呼ばれる町芸者で、簡単に身を売る尻軽女。その時はカッとなったが、所詮遊び女と割り切れた。
だが、エリは違う息子の嫁で尚且つどこにもいない絶世の美女。夫優作のうっとりした顔から放たれる真剣度の伝わって来る交わりをまざまざと見せ付けられて、今までこれ程嫉妬した事など一度たりとも無かった。
それこそ目の前で行われている行為が、現実であると到底受け止められなくて、涙が滝のように溢れ出て、そして改めて自分の不甲斐なさ、魅力の無さに現実をシャットダウンして、いっその事この世の全てを焼き尽くしてしまいたい。そして…幾度となく激しい嫉妬が波のように押し寄せて来た。
だが、狂ったカヨが火を付けようとした矢先に、女中2人が総がかりで引き止めたので大事には至らなかった。
☆★
余りにも美しいエリの交わりを目の前に、そして今まで一度たりとも見た事が無かった優作の満足そのものの表情といい、エリに対する真剣度がヒシヒシと伝わり、魔性の女エリに対しての対抗意識などとっくに萎えてしまい、全てが狂ってしまう恐怖心が押し寄せて来た。
これでは私は完全に用無しだ。私の入る余地など……どこにもない。カヨは自分の感情を整理出来なくて只々涙にくれた。
★☆
姑カヨは夫優作という男は自分が欲しいと思うものは、どんな事をしても手に入れる男だと言事をイヤという程思い知らされていた。もしも自分がこの家から追い出されてしまったら不甲斐ない弟のいる里にも戻る事は出来ない。そこでこの家で絶大な権力を握る息子清に相談した。
「清聞いておくれ。実は恥ずかしくて人に言えない話だがお父さんが……実は…お父さんが……エリさんに……エリさんに……手を出してしまったんだよ。困った事だ。放ってはおけない。お父さんはエリさんに……ウウウ(´;ω;`)ウゥゥワァ~~~ン😭ワァ~~~ン😭(ノД`)シクシク……夢中になってしまっている。だから……止めようがない。ウウウッ(ノД`)シクシク……どうしたら良いものかワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭」
「お母様考え過ぎですよ。あんなに僕の為にいつもどんな時も考えてくれるお父様がそのような……ましてやこの僕の妻に……まかり間違ってもそんなことは……お母様の考え過ぎですよ。ワッハッハッハ」
「清私は目の前でその行為の一部始終をこの目で見たんだ」
「ハイハイ分かりました。分かりました。そんな馬鹿な話この目で見るまでは信用できません」
☆★
最近清は投資話で金融機関や企業を駆け回る仕事を従業員の大番頭に任せて、あれだけしつこく食い下がった母の言う事が本当なのか、仕事で出掛けたと皆で口裏を合わせて、屋根裏部屋に隠れて父優作の実態を探ろうとした。
(嗚呼……どうせ……母の考え過ぎに違いない)そう思い仕事の疲れも有り深い眠りに落ちてしまった。
「キャ――――――――――ッ!タタ 助けてください!タタ タスケテ――ッ!」
余りの悲鳴に一気に目が覚めた清はこっそり声のする方へ降りて行った。するとその時父が別宅の地続きになった清夫婦の、エリと梨香子が眠っている寝室に入って行く所だった。
(だが、ここで出て行っては証拠が掴めぬ)するとエリが梨香子を連れて夜の闇に逃げ出して行った。
清はハッキリとこの目で父のおぞましい姿を目に焼き付けた。
☆★
この日は町内会の祭りの練習で父優作は出払っている。父優作は笛の名手で指導に当たっていた。3人母カヨと息子清に嫁のエリは早速この日を待っていたかのように、誰も居ないのを見計らって何やら居間でひそひそ話を始めた。
「お母様……僕もこの目で父の悍ましい姿を目撃しました。そこで僕は考えました。エリと父のどちらが僕にとって必要かということです。僕はハッキリと結果が出ました。お母様はどうですか?」
「私も同じだよ。あの獣……何とかしなくては……」
「エリさんあなたの気持ちはどうなの?」
「私も……ハッキリ言って……あんな獣何とかして欲しいです」
「エリ本当にお母様が言った事は……本当なのか?」
「ウウウ(´;ω;`)ウゥゥワァ~~~ン😭ワァ~~~ン😭」
「どうなんだ!ハッキリ言って見ろ!」
「ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭」
「清およし!私はこの目でハッキリ見たんだ。あの獣生かして置いて何になる?」
「俺もエリをメチャクチャにした父が許せない。あの畜生殺したい!」
だが、祭りの練習は獅子舞いなどが出て本格的な練習が屋外で行われていたが、雨が降り出したのでお開きになり父優作は家に帰って来て、3人の話をこっそり聞いてしまった。
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