第11話 事件の発端



「タカエ大変だ!万里子さんと……どんな事をしても会えなくなくなってしまった。俺が……俺が……俺が……ウウウ(´;ω;`)ウゥゥワァ~~~ン😭ワァ~~~ン😭どうしよう?ワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭」


「お兄さんしっかりして!あんなに仲良しだったのに何かの間違いよ。私お友達のユキに聞いて見るわね?」


 何とも…残念なことに、タカエもユキと全く連絡が取れなくなってしまった。


 それでも…諦めきれない孝明は今度は徹底的に電話抗戦で話し合おうとした。だが、先方滝花家も余りにしつこいので堪忍袋の緒が切れてハッキリと言い放った。


「万里子が迷惑しております」


「一度だけ……一度だけ……万里子さんを電話に出して下さい。お願いです!」


「孝明さんいい加減にしてください。ハッキリ言って迷惑です。わたくしはあくまで……お友達のお一人としてお付き合いしていただけです。警察に訴えます」


 ”ガチャン”


 ある日、名古屋駅前の花坂屋百貨店の屋上から1人の男が飛び降り自殺をした。

 それは恋に苦しんだ末の自殺だった。


 近藤孝明享年28歳。



     ◇◇


 知らせを受けて駆け付けた近藤家の当主豊作と母トミ、それに妹のタカエは余りの事に半狂乱になって居る。


「たた孝明……一体どうして……どうして……ウウウ(´;ω;`)ウゥゥワァ~~~ン😭ワァ~~~ン😭」

 父豊作は大事な跡取りが亡くなってしまい絶望で目の前が真っ暗だ。

 

 母トミも狂ったように孝明にすがり付きこの世の終わりとばかりに、泣き崩れている。

「ワァ~~ン😭ワァ~~ン😭どうしてなのよ。ウウウ(´;ω;`)ウゥゥワァ~~~ン😭ワァ~~~ン😭帰ってきて!孝明……孝明……ワァ~~ン😭ワァ~~ン😭」


「お兄さん何で……何で……死んでしまったのよ。まだハッキリ分かった事でもないのに……ウウウ(´;ω;`)ウゥゥワァ~~~ン😭ワァ~~~ン😭」

 それは妹タカエとて同じだ。双子は普通の兄弟の何倍も何十倍も繋がりが深いと言われている。片方の翼をもぎ取られたような思いだ。


 何という残酷な幕切れとなった事だ。全く言葉が無い!


 それにしても万里子お嬢様もあんまりな仕打ちだ。

 一体どんな恨みが有って、孝明の気持ちを弄ぶような卑劣な真似をしたのか?全く血も涙もないとはこの事だ。どんな事が有ったにせよ……一番人間の感情の、繊細かつ弱くてもろい恋愛感情を、いたぶりオモチャにするなど最も卑劣な真似だ。 


     ◇◇



 万里子お嬢様が車で孝明と岐阜県の農村で、すれ違いざまに有ったのは、あれは偶然では無かった。

     

 実は…この2人の出会い。孝明と万里子の出会いをアシストしたのは誰あろうユキだった。


 実はタカエとユキは名古屋市千種区にある淑城女学校の卒業生。女学校時代は「裁縫クラブ」の先輩と後輩の関係だった。タカエが2つ年上だったのでユキは厳しく仕込まれていた。だからタカエが先輩風を吹かせて、万里子お嬢様とのセッティングを強引に頼むことが出来た。


 一方のユキと万里子だが、ユキが4つ年上なのだが、いくらユキが年上と言っても、ユキの父親は長らく「タキハナ」の大番頭として仕えた身だった。そして…ユキの父は今現在子会社の役員になっている。尚且つユキもラッキーな事にこんな大企業「タキハナ」に就職していた。


 例え「タキハナ」のご令嬢、万里子お嬢様が4つも年下だろうと、立場は大逆転。「カラスは白いと思うのだが、何色だと思う」と問われたら、「はい、私も白いと思います」と、返答しなければいけない立場なのだ。


 いくらユキが年上と言っても、相手の万里子お嬢様は、父が勤務していた会社「タキハナ」の社長令嬢で、ユキも父が子会社勤務となってから程なくして「タキハナ」に勤務することが出来た。それでは出会いをどのようにアシストしたのか?


 それは話す事は容易い。家が近所で竹馬の友だからだ。だが、立場の上の万里子お嬢様がそんな話に乗るとは到底思えないのだが?



 ユキはその時は(先輩のタカエさんの頼みだから仕方ない。タカエが怖いのでセッティングの話だけは一応しておかないと……)

 そう思い、万里子お嬢様とはお友達関係なので話してみた。


 するとその話に食いついて来たのは誰あろう万里子お嬢様の方だった。


 そこにはある事件を巡って、折々に自殺した孝明の実家、近藤家の悪事を母ヤエから聞かされていたからだ。

 

     ◇◇



 こうして事件は起こった。

 

 悪しき風習(大地主と小作人)の下に、過去には想像も付かない恐ろしい出来事が起こっていた。孝明の自殺は根強い恨みから起こるべくして起こった事件だった。


そこには怪しい素振りをしていた万里子の母ヤエが大きく関わっている。

 

 

 万里子お嬢様の母は結婚前は、神崎ヤエだった。


 そうなのだ。65年の時を超えて起きたあの一家惨殺事件の被害者こそ、神崎ヤエ達の末柄だった。


 事件というのは、1992年10月某日午前0時半頃、愛知県T市の民家から出火し全焼した事件だ。現場からこの家に住む夫神崎茂さん44歳と妻恵子さん42歳夫婦、更には長女めぐみちゃん16歳と長男剛君10歳の殺害された遺体が発見されたあの事件こそ、神崎ヤエ達の子孫だった。

 

 姉で吉原の芸者だったが、身請けされて三田代議士の妻になっていたアヤの弟がヤエの父次郎。家が貧乏で今日明日にも食べる事にも事欠くそんな小作農家だが、一家を支えて行かねばならない次郎は跡継ぎ息子だ。こうして…歯を食いしばって頑張っては見たものの、とうとう生活苦から仕方なく娘ヤエを遊郭に売り飛ばしていた。だが、才色兼備のヤエは運の良い事に、滝花社長に身請けされて現在「タキハナ」の社長夫人に納まっている。


 そして…自殺した豪農大地主近藤家の長男孝明の先祖を辿って行くと、過去には弱い立場の小作人たちを追い詰め、口では言い表せない程の耐え難い、悲劇の数々が繰り返されていた事が判明した。


 実は…小作人の事を人間とも思わない、それこそ家畜と変わらぬくらいにしか思わない地主近藤家のおごり高ぶりが招いたある事件が発端となっている。


 そこには、血塗られた恐ろしい過去。神崎家の悲劇が有った。

 過去にどのような悲劇が起こっていたのか?


 そして…この傲慢極まりない近藤家の末柄が、不審死をした由香里ちゃんの家だった。

 その由香里ちゃんというのは、1992年10月某日午前0時半ごろ、愛知県T市の民家から出火し全焼。現場からこの家に住む一家4人の惨殺死体が見つかったあの事件の、被害者夫茂の彼女であり、妻恵子とは親友関係だった。


 更には過去に小作人神崎家は大地主近藤家から、並々ならぬ酷い仕打ちに泣かされ続けていた過去が有った。その悲劇の神崎家の末柄が一家惨殺事件被害者の夫茂と妻恵子だった。











 

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