第4話 過去の過ち



 混乱するといけないので神崎家の相関図を説明して置かなければいけない。


 1992年10月某日、日本中を震撼させた一家惨殺事件で、父親茂、母親恵子、長男剛、長女めぐみ4人の死亡が確認された。


 たった1つの救いは、愛人里美との間に誕生した娘沙織は無事成長していた。


 

 だが、祖父母はその後、長男茂一家惨殺事件に苦悩して後を追うように相次いで亡くなっていた。そこには不幸続きの息子2人の死が大きく影を落としていた。幾ら勘当したと言えど……いずれは亮夫婦との和解を望んでいた両親だった。それなのに……今度は兄茂一家までもが……。

 

 弟の亮は学生時代の21歳の時に風俗店勤務の彼女が妊娠した事によって、大学卒業後子供が誕生したのを機に結婚していた。


 そして…2人の間に誕生した息子は現在50歳を超している。



     ◇◇


 1977年5月某日早朝名古屋市の公園や民家の敷地内で見付かったバラバラ遺体は、一体誰のものなのか?


 早速公園の清掃員が熱田警察署に通報した。


 次に所轄署の強行班係の刑事、鑑識、そして重大事件の初動捜査を専門とする組織が現場にやって来て調べが始まった。現場の証拠物や目撃者の証言等を確保する為に必死になって居る。その結果殺人事件の可能性があると判断され、捜査一課の殺人班に出動命令が下った。



 こうして…愛知県警による特別捜査本部が設置され、凶悪事件の陣頭指揮を執る捜査一課長の下、「名古屋市熱田区バラバラ遺体殺人事件」の大規模な捜査態勢が敷かれた。


 管理官は捜査本部をまとめる立場であり、捜査会議では進行役を務める。


「5月某日早朝名古屋市の公園や民家の敷地内で見付かったバラバラ遺体は、公園の清掃員によって発見されたが、歯形からUAT銀行名古屋南支店に勤務する神崎亮26歳と判明した。何とも惨い事に、発見された場所は転々としていて、頭部を名古屋市熱田区の公園に、上半身は熱田区の公園の森の路上に、下半身は名古屋市金山の民家の敷地に、左腕と右腕はまだ見つかっていないそうだ。この猟奇的殺人事件の犯人の手がかりを一刻も早く見つけ出してくれ!ところで何か……新しい情報を掴めたものは要るか?」


「ハイ!あのですね?この神崎夫婦はセレブで通っていて、マンションの住人の話では旦那の亮は高級車を乗り回し、時計やスーツなど全てブランド品で統一していたようです。当然実家は凄い資産家で不動産会社を経営しているようですから、お金には困っていなかったように思われていたようですが、銀行口座を調べた結果借金を抱えていたようです。どうも……亮の親戚筋の話では両親が風俗店勤務の妻美枝子との結婚に大反対していたようで、勘当状態だったらしいです。お坊ちゃまが生活の質を落とす事も出来ず生活苦に陥っていたようです。それでもマンションの住人の前では円満夫婦を装っていたようです」

 若手で仕事に情熱を燃やす田代26歳が口火を切った。この事件に並々ならぬ情熱を燃やしている。


「……という事は、妻美枝子の犯行という事なのか?」


「そう思われたのですが?実は…妻美枝子は1週間ばかり実家に帰っていたようなのです。夫の暴力から逃れるために暫く実家に身を寄せていたようなのです。それは裏が取れています。だから……死亡時刻から割り出すと美枝子の犯行は不可能です」


 今度はベテラン刑事寅さんが、饒舌に詳しく説明し始めた。何故寅さんなのかというと「男はつらいよ」のフーテンの寅さんに行動が似通っているからである。それは風来坊の様に行方が分からなくなり何処からともなく現れるから、刑事仲間からそう呼ばれるようになった。でも本人は「男はつらいよ」のファンなのでまんざらでも無く思っている。


「新しく分かった事ですが、この神崎兄弟のことですが、子供の頃から凄く仲の良い兄弟だったらしいですが、兄茂の妻恵子と弟亮は高校大学が同じで、高校時代から付き合っていたようです。弟亮は子供の頃から成績優秀でハンサムボーイ、一方の兄茂の方はスポ-ツ万能でリ-ダ-的存在だったようですが、茂と亮に兄茂の彼女由香里と弟亮の彼女恵子4人は、時間のある時はいつもどんな時も行動を共にしていた仲の良いカップルだったのですが、2人の女の子が両方とも亮を好きになってしまったらしいのです。そして…兄茂は弟の彼女恵子を好きになってしまい、収拾が付かなくなってしまったのです。幾ら仲の良い弟の彼女だと言っても、人を好きになるという事は恐ろしい事で、感情を抑える事などどうして出来ようか、どんな結論に至ったのか分かりませんが、結果的に弟亮の彼女恵子を兄が奪った形で茂と恵子は結婚したのです。どんな事が有ったのか分かりませんが、兄の彼女由香里は不審死をしているのです。こんな理由が有って弟亮が苦しさを紛らわすために、風俗店勤務美恵子に救いを求めた事は十分に考えられます」


「そういえば……このカップルは弟亮がカップリングしたものだったのです。高校生の時に弟亮が兄茂に由香里ちゃんを紹介したのです。それはナガシマスパ-ランドが1966年に本開業した事によって一緒に行こうという事になったのです。まだこの頃は弟亮は恵子とも由香里とも友達だったが『ナガシマスパ-ランドが開園したら行きたいね』と言っていたのです。こうして兄茂を交えて一緒に行く事になったのです」


「……って事はこの恐ろしい殺人事件にはズ~ッと昔の過去、由香里ちゃんの不審死に着目しなくてはいけないという事だね?もう10年ほど前の話になるなぁ?」


「一体4人の関係はどのようなものだったのですかね?由香里ちゃんの不審死の原因は当時の残っている記事に目を通したところ、残った内の3人の誰かに殺害された可能性もあると書かれてありました。それこそ弟亮にすれば元々彼女だった恵子が兄茂の奥さんだったら複雑ですよね」


 益々難解になって来たこの呪われた一家には、どんな恐ろしい秘密が隠されているのか?





 


 
















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る