第2話 犯行動機
愛知県T市資産家一家4人放火殺人事件とは1992年10月某日に発生した殺人放火事件。現在も犯人は逮捕されておらず未解決事件となっている。
あれから既に30年余りが経過した。警察の威信にかけて犯人追及が行われたが、既に時効が成立。必死の捜査にも拘らず望みは泡の藻屑と消えた。
それでは事件の真相を詳しく追って見よう。
1992年10月某日午前0時半ごろ、愛知県T市の民家から出火し全焼。現場からこの家に住む夫神崎茂さん44歳と妻恵子さん42歳夫婦、更には長女めぐみちゃん16歳と長男剛君10歳の殺害された遺体が発見された。
殺害された茂は地元では特に有名な資産家として知られており、個人でアパートや土地など約100件にも上る物件を所有し、不動産関連の収入で生活していた。以前は毎晩のように夜の街にくり出していたので愛人が何人か居たらしいが、愛人の1人が妊娠した事によって、その愛人宅に入り浸り状態だった。そんな理由から昼間は愛人宅で度々目撃されていた。
犯人は被害者夫婦を何らかの方法で動けなくしたうえ、紐などで縛られ抵抗できない状態にあったとみられ、2人の遺体には防御創がほとんどなかった。その後刃物で胸や腹を刺して殺害した。また被害者の茂が普段外出のときに着用するネクタイやワイシャツ姿でなかったことから、室内で襲われた可能性がある。
用心深い性格だったという茂は、例え近所の住人や兄弟までも敷地内に入れることは滅多になかった。常に敷地にある4カ所すべての出入り口を施錠し、出入り口には人の動きを感知する赤外線センサーが設置され、人の出入りを感知すれば室内にいる人間に音で知らせる仕組みになっていた。
また茂は自宅に高額の現金や所有する不動産に関係する重要な、書類を保管していたとも言われ、実際に遺体が発見された部屋には2500万円以上の札束が残されていた。こうした事からこの事件は、被害者の家の事情に詳しい犯人による計画的な犯行も疑われている。
◇◇
あれだけの残虐非道な殺害事件を起こした犯人は、今もどこかでのうのうと何食わぬ顔で生き続けているのだろうか?
30年前捜査線上に何人か犯人とおぼしき人物が浮かび上がっては消えていた。そこにはあれだけバブルに酔いしれた夢のような豊かな時代の転換期、丁度バブル崩壊の時期が重なっていた。
まず愛人2人に容疑がかかった。
1人目の女里美25歳は名古屋錦の高級クラブ「蝶」のホステスだったが、茂との間に子供が出来た事によって3年前に「蝶」を辞めていた。
ひと頃は茂の寵愛を一身に浴びて贅沢三昧の生活を送っていた里美だったが、茂と深い関係になる以前から若い男が居た事が判明し、真実を知った茂と里美には別れ話が出ていたという。
娘まで儲けておきながら今更捨てられたら大変。それも娘は以前から続いていた若い男と里美の娘である可能性も出て来た。そして…DNA鑑定の結果若い男との間に出来た子供であることが判明。
茂は年を取ってからの娘沙織可愛さに遺言書が作成されていた。かなりの相続を引き継ぐことになって居たのに書き換えられては大変。そう思い殺害に至った可能性も考えられる。
もう1人の愛人智子とは金銭関係で揉めていた。
高級クラブ「蝶」のホステス里美に入れ揚げ、智子が鬱陶しくなりあっさり捨てた。
茂は冷酷な男で子供を授かった里美と子供可愛さに、今までは愛人智子にもお金を毎月支払っていたが、あっさりゴミのように捨て一切の連絡を絶っていた。お店を出して貰う約束をしていた矢先に冷酷に捨てられた恨みは強い。智子は現在36歳で以前六本木のクラブで雇われママをしていた。
だが、羽振りの良かった茂にお店を出してやると言われ、新しいお店も決まりかけていた。だが、丁度そんな時に里美に子供が出来た事によって人生を狂わされていた。雇われママも辞めて店を持とうと張り切っていた矢先に捨てられてしまったのだから……。
そして…更にはたった1人の弟との関係もこじれていた。
それというのも弟亮は21歳の大学生の時に、風俗店勤務女性との間に子供が出来てしまった。当然両親は大反対、だが結婚を反対されたことに激怒した亮は、父親と凄い喧嘩になり押し問答の末父親を押し倒して怪我をさせてしまった。
更に止めに入った、いつもどんな時も味方だった母親までもが大反対した事によって、カ—―ッとなってしまった亮は母にまで手を出してしまった。いつもどんな時も味方だったあんなに仏様の様な母までもが、結婚に反対した事が許せなかった。
亮は愛知県内の最難関校だった私立T高等学校を卒業後、愛知県最難関大学名古屋大学を卒業した優秀な息子だった。
両親は不動産会社を長男茂と2人で盛り立てて貰おうと期待していた。それなのになんで風俗店勤務女と結婚しなければいけないのか?それから子供が出来たと言っても誰の子か分かったものではない。まだあの当時はDNA鑑定を行う人も少なく正確性にも欠けていた。
こうして両親との話し合いが決裂して勘当を言い渡されてしまった。
神崎家は代々大地主さん。資産家として知られており、個人でアパートや土地など約100件にも上る物件を所有し、不動産関連の収入で生活していた。本来ならば二男の取り分も有ったのだが、勘当状態で両親が相次いで流行り病で他界した為、本来半分の遺産の取り分が有った筈が、バブル崩壊と共にアパートや土地など約100件あった不動産は60件程になってしまった。
こうして…骨肉の争いが始まり殺害に至った可能性は十分に考えられる。
1990年代のバブル崩壊直後や、その後のリーマンショック時には沢山の不動産会社が倒産した。
土地を多く所有していた神崎家はバブル期に大規模なアパートやマンションを建設していた。仕入れた土地に1年以上かけてアパートやマンションを建てる。バブル期には新築のマンションを建築中の間にも不動産価格は値上がりしたので、完成直後に簡単に売ることが出来た。そして…更なる値上がりを期待してそれらを買う人が沢山存在したのだ。
しかし、時の政府が急激な総量規制を行い、融資の蛇口を急激に締めたため、悲惨な状態、バブル崩壊となってしまった。
不動産デベロッパーは土地を仕入れて大規模マンションを建てることを当時も行っていたが、販売開始をする頃にバブルが弾け、マンションの価格が大幅に下げないと売れなくなるという事態に直面した。その結果、借り入れた資金を返せなかったり大幅な赤字を計上したりすることになり、マンションの価格が最大40パ-セントの下落に追い込まれた。
この様な理由から亮に渡った不動産は、割の悪い物件20件ほどになった。それを恨んでの犯行だと言われている。
果たして犯人は一体誰なのか?
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