神の子狂幻想
tamaちゃん
第1話 悪夢
神崎沙織は、愛知県T市に生を受けた現在34歳の平凡な主婦だ。
30年前新興住宅地の建売住宅に住み着いたのだったが、夫拓也は町内が一緒で始終顔を合わせているそんな仲だった。そして幼馴染みの拓哉と結婚して早いものでもう彼此7年の月日が流れていた。
沙織の父親は創業25年周年を迎えた地域密着型の中堅ス-パ-「ヤマカネ」の社長さんだが、現在愛知県下に30店舗を展開している。そして…優しい母親は専業主婦として家族を支えてくれている。一方の拓也は両親が市役所の職員という極々一般家庭の次男坊だ。
こんな平和で平凡な、これといった災難が降りかかって来た事など一度もない、極々平凡な34年間だった筈なのだが、時々言いようのない悪夢に襲われる事がある。それは…よく夢の中に現れる想像だにしない悪夢だった。
◇◇
(私は空想壁がある)……そんな変な女の子なのだと、沙織はず――っとそう思って暮らしていた。そして…最初にその不思議なといっても……それは想像を絶する恐ろしいものだった。どうしてこんな優しい両親に育てられたのに、このような恐ろしい夢を見るのか皆目見当が付かない。
その世にも奇妙な体験をしたのは、丁度思春期真っただ中の高校1年生の夏休み期間中の事だった。あれは確か……小学生の頃から仲良しの、近所の同級生舞ちゃんと1泊2日で東京デズニ―ランドに出掛けた時の事だった。
最難関高にも見事合格できた2人だったが、やっと勉強着けから解放されていっときの開放感に浸っていた2人は、両親を説得して前々から合格できた折にはご褒美として、仲良し舞ちゃんと旅行に出掛ける許可をもらっていた。
朝早くに出発して、その足で千葉県浦安市にある東京ディズニーリゾート内のテーマパークに向かった。ワールドバザール、アドベンチャーランド、ウエスタンランド、クリッターカントリー、ファンタジーランド、トゥーンタウン、トゥモローのアトラクション の数々に大はしゃぎの2人は、早速観覧車やジェットコースター に乗りあっという間に楽しい時間は過ぎた。
こうして夜はデズニ―ランドに隣接するホテルで、楽しい食事に舌包みを打った後疲れ切って眠りに付いた沙織だったのだが、夢の中には想像を絶する残酷な一部始終が映し出されていた。
その夢というのは……沙織がまだやっと記憶に残るか残らないかの3歳になったばかりの頃の事だと思う?
いつも優しく沙織に話しかけてくれる年上の男の子と女の子。男の子は沙織よりも幾分年上だ。そして女の子は多分……今の沙織と同じくらいの16歳か17歳くらいの女の子だと思う。その2人が余りにも自然なので多分それはいつもの日常の風景だと思う。ひょっとしたらそれは本当の姉兄だったのではないか、と思うくらい自然に沙織に溶け込んでいた気がする。
優しく微笑み、世話をしてくれる日常が映し出されているが、その2人が兄妹なのか分からないまま時は過ぎて行った。
だが恐ろしい事件は容赦なく襲い掛かって来た。家で沙織1人では心配だから近所か親戚のお姉ちゃんとお兄ちゃんが、沙織の子守をしながらお留守番をしていたのだろうか、そこのところは全く分からない。
3人で穏やかな時間を過ごしていたのに、次の瞬間覆面を被った男がドタドタと家に入り込んで来て……その時必死になってその優しそうなお兄ちゃんとお姉ちゃんが訴えているが、子供過ぎて沙織は何も分からない。するとお姉ちゃんがありったけの力で押し入れかどこか、暗くて狭い場所に沙織を隠した。
沙織は子供過ぎて何が何だか分からない。こっそり隙間から見ていると逃げ惑うお兄ちゃんとお姉ちゃんの姿が確認されたが、まず真っ先にお兄ちゃんの方が刃物で滅多刺しにされている。そして動かなくなってしまった。
一方のお姉ちゃんは必死に逃げ惑っているが、捕まり服を乱暴にはぎ取られている。その……あまりにもお姉ちゃんの切羽詰まった顔に、子供ながらに感じた狂った時間に、お姉ちゃんを助けようと声を張り上げようにも声も出ない怖さで、完全に時が止まり足が一歩も動かない状態に追いやられ、何が起こっているのか、その時は子供過ぎてこの事態を把握する事は全く出来なかったが、只いつもの優しいお姉ちゃんが狂ったように泣き叫び、恐怖で気も狂わんばかりの眼差しで、もう諦めに似た死期を予感したのだろうか、そこまで精神状態を追い込んだにも拘らず、そんな最期を悟った目をした姉の口を一気に塞ぎ、お姉ちゃんに重なりむちゃくちゃに上下運動をする姿が目に入った。
その時は想像を絶する悲惨な状態にある事は分かるのだが、それが強姦されているという事など全く分からなかった。今なら分かる。あの狂気にも似た眼差しは想像を絶する痛さと、苦しさと、悲しさで、死期を予感していたからに他ならなかった。そして…あれは紛れもない優しいお姉ちゃんが強姦されていたのだという事を、大きくなってから理解できた。
だが、その覆面の男が怖くて息をひそめていた沙織だったが、余りの狂気の現状に疲れ果てて眠ってしまった。
どれだけ時間は経過したのだろうか、暗くて狭い場所で目を覚ますと、にこやかな夫婦とおぼしき2人の男女が帰って来た。
その時だ。息をひそめていた男は帰って来た夫婦とおぼしき2人に、凄い剣幕でまくし立て何かを要求していたが、その要望も満たされると、一気に2人の夫婦とおぼしき男女を刃物で滅多刺しにして息の根を止めた。おびただしい血が辺り一帯飛び散って、死に逝く無念の叫び声と悲惨な断末魔の最期となってしまった。
こんな悪夢を定期的に見る沙織だったが、ハッキリ言ってあれが現実の事とは到底思えない。だって沙織は裕福な家庭で何の苦労もなく生きて来たのだから……。
だが、子供の頃に一度だけ近所のおばさんに言われた事が有った
「あなたの今の両親は本当の両親ではないのよ。あなたの本当のお父さんの弟さん夫婦なのよ」
多額の保険金が支払われている筈だが、そんな実態など見た事も聞いた事も無い。沙織はその悪夢から目をそらし、ワザと蓋をしたまま成長した。
時々夢の中に現れる悪夢は只の幻想なのか?
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