第11話落ちぶれの経緯(4)

「でも、よかったじゃないですか?コミカライズされて、十二支兄妹がより売れたんだからさ。」

「たしかにそうだ、だけどその後上は周藤さんに漫画部への異動を命じたんだ。コミカライズでより人気が出たから、いっそのこと漫画にして売り出すという方針にしたんだよ…。」

「それじゃあ、周藤さんは……」

「異動した、それから児童小説作品部は廃れはじめたんだ……。」

浜野や理真が周藤のことを「裏切り者」と呼んでいた理由が明らかになった。そこへ浜野さんがやってきた。

「おい、渡辺。」

「あぁ、浜野さん…。」

「あの一件のこと、話してたんだな…。聞こえていたぞ」

「すみません…、ぼくがお願いしたんです。」

「別にいいけど、理真にはするなよ。今でもその件で自分を責めてる」

「どういうこと…?」

天城のとなりに座った浜野が言った。

「元々コミカライズを提案したのは理真なんだ、部署同士の連携で『十二支兄妹』を売り込もうとしたけど、それが仇になったからな。」

天城は理真の気持ちを思うと、なんだか周藤に憧れていた自分が申し訳なくなった。


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