第3話 うちのシャンプーどこいった?

ある日、風呂上がりの娘が私に聞いてきた

「お母さん、私のシャンプー使っとる?」

(お母さん、私のシャンプー使ってる?)

「いんや、使っっちょらんよ。なして?」

(いや、使ってないよ。どうして?)

と、私はそう答えた。確かに使ってないからだ。

娘は、けげんそうな顔をして答える。

「私のシャンプーとコンディショナーが無くなーのが早いんだわ。この間詰め替えたにかん、もう、少ないに。」

(私のシャンプーとコンディショナーが無くなるのが早いのよ、この間詰め替えたのに、もう、少ないの)

おかしいねぇ。と、2人で顔を見合った。

娘は、私に似てくせっ毛なのだ。小学校に上がる頃はクリクリのくせ毛で、小学生の頃からシャンプーにはこだわってきた。

高校生になった今頃やっと、シャンプーだけで髪の毛がいい感じに収まるようになってきた。私とは、髪質が違うのでシャンプーは、別の物を使っていた。

2人でちょいと考える。うちにいる後の2人は、坊主だ。旦那はスキンヘッドだし…と、思ったところで息子がパンイチで風呂から上がってきた。


はて、息子の髪の毛がテラテラしている。

もしかして…

「ちょっと、あんたさん、姉ちゃんのシャンプー使っちょらん?」

(ちょっと、あなた、姉ちゃんのシャンプー使ってない?)

「ん?あーあれ姉ちゃんの?めっちゃいいよね、しっとりするし、触った感じもすごくいいし、匂いもいいよ。」

ちょっと待て、お前さんの髪の毛は、何ミリだ?

3ミリだ!丸坊主の頭には、ボディーシャンプーでよくないか?シャンプーならまだしも、コンディショナーまで必要か?

しかも高いヤツ!

私と娘は、目が点になった。しかも息子は、いいでしょ?風に腰に手を当て身体をくねらせてポーズまで取ってくる。

「えっ?いけんだった?」

(えっ?ダメだった?)

と、息子は可愛げに問いかけてくる。

「ダメ!ありえんし!信じれんわ!」

娘は、怒りながら部屋を出た。

「姉ちゃん、ごめーん。」そう言いながら、後を追いかけていく息子。

娘の部屋からは雪崩のように次々と怒号が聞こえてくる。中身は安易に想像できるのだが、中々怒りは収まらない様だ。そして、息子の謝罪の言葉が噴水の様に出てきていた。

娘の怒りが身に染みたのか、それ以降息子が娘のシャンプーを使うことは無くなった。


私のシャンプーも使ってみたが、合わなかったらしい。その後は、私が買ってきたリンスインシャンプーを仕方なく使っているようだ。

坊主頭だから、今はそれでいいんじゃない?

息子さん。

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