第8話 休憩していたら金猫が来た。
草原で眠っていたら攻撃をされていた。
(これって反撃していいのかな?)
したらしたで殲滅しないと追われるよね。
盗賊共はフェンリル達に丸投げしたけど、フェンリル達も遙か遠くに居てこちらに来ない。
私は顔を洗ったまま、
(とりあえず、魔力糸を伸ばして)
左手の爪先から一本の魔力糸を伸ばす。
それを途中で分岐して、剣や槍を持つ人族共の頸椎に刺して自由を奪う。
「なっ!?」
「か、身体が!」
「う、動かない!」
「い、息が出来な」
一人だけ延髄に入ったっぽい。
そのまま硬直したように死亡した。
死者が出たのにローブ女は気にしていない。
ヒステリックになりギャンギャン騒ぐだけ。
「どうしたのよ! はやく捕まえなさい!」
騒がしい女は嫌われるよ?
私は耳を畳み、煩そうに女を睨む。
「ひぃ!?」
若干、威圧が入ったのか、女は顔面蒼白で腰を抜かせた。地面を濡らして後ずさる女。
(面倒だし、こいつらも殺そうかな)
魔力糸をそのまま女にも与え、硬直した男共と共に延髄を撃ち抜いた。呼吸が止まり、白目を剥いて泡を吹く。そのまま死亡が確定した。
(攻撃して来なければ死なずに済んだものを)
それも見世物小屋へと、私を売るために行った金銭欲の愚行だ。白い魔物というだけでね。
私は地面に大穴を掘ったのち中に入って姿を変える。下着を身につけ上着とズボンを穿く。
(枝のある森以外はこの姿で居た方がいいね)
周囲を索敵し隠れている者が居ないか探る。
一先ず、逃げ果せた者は居ないようなので、
「装備品だけでも物色しますか」
粗相のローブの女を洗浄したのち乾かして服を脱がせていく。どういう訳か胸当てはあれどパンツは穿いてすらいなかった。装備品はそれなりに使えそうなので杖以外確保しておいた。
「薬瓶が三本、マナポーション?」
私の場合、自動回復するから不要だけど。
ただ、売ればそれなりの価値があると思えた。盗品だから売れるかどうか知らないけど。
裸に剥いた女を大穴に落とす。ローブなどの服はサイズが合わなかったので大穴に投げた。
「尻は大きいけど胸が無いから着られないね」
男共は装備だけ物色した。見たくないし。
男共はそれなりの剣を持っていたので、直剣だけ貰っておいた。剣身に持ち主の名が彫られていたので二本とも水魔法で削っておいた。
「盗品と分かると面倒が舞い込むもんね」
槍も不要ということで女の下腹めがけて投げ入れた。グサッと刺さったが、どうせ死んでいるので問題は無い。男共も大穴に放り込み、
「埋めてもいいけど、炎魔法で片付けしよ」
高火力の炎で骨まで焼いてあげた。
「やっぱり臭いね。風魔法で反対に向けよう」
そんな行いから、慈悲はないのかと叫ばれそうだが私は元魔物だ。今は魔人で人族がどうなろうと知ったことではない。攻撃して来なければ反撃されることなんてないのだから。
「結果的に耐性が強化されたから感謝だけしておこうかな。後は武術を育てるために剣だけは帯剣しておこう。パッと見、剣士に見えるし」
ただまぁ元々が他人の剣なので重心が少々扱い辛かったけど。二本ある内の一本が丁度良かったので、残りは予備として片付けた。
(あ、あと言い訳はどうしようかな? 盗賊に出くわしたとすればいいかな? 一方的に攻撃されたのは本当の事だし)
女の持ち物には所持金らしき革袋もあり、
「鉄と銅? これは銀かな。ミスリルと金?」
残りは白金の貨幣が一枚だった。
流石に貨幣換算は分からないけどね。
(鉄貨、銅貨、銀貨、
鉄貨の表面には数字っぽい文字が書かれていて鑑定では漢数字の「一ルト」とあった。
(一ルトが鉄貨と。銅貨が一〇だから)
一〇枚で位が上がっていくのだろう。
但し、金貨から上は枚数記載ではなく億とあった。とんでもない貨幣って事だけは分かる。
それをあの女は持っていたのだから、それなりに御大尽だったのかもしれない。
私は消し炭と化した、槍で割れた骨盤を持つ女の遺骨を眺める。
「このままだとあれだし埋めてあげようかな」
せめてものお礼として埋葬し予備の剣を取り出して墓標としてあげた。そして、この世界の言葉で〈盗賊この地に眠る〉と刻んでおいた。
「というか日本語なのはなんでだろう? 普通に読めるし言葉が分かるのはその所為かな?」
§
引き続き、その場に居ると襲われると思ったので疾走スキルで草原を駆け抜けた。
(行き当たりばったりだけど仕方ない。今は何処に何があるか分からないし・・・)
すると途中で牛型の魔物を見つけたので武術を育てるためだけに喧嘩を売った。
────────────────────
名前:なし 性別:オス 年齢:八
種族:ブラッド・カウ(魔物/成体)
Lv:四〇〇
体力:四〇〇〇/四〇〇〇
魔力:四〇〇〇/四〇〇〇
スキル:なし
────────────────────
仮に勝てたなら牛肉が手に入るので、丁度良いと思いつつ。スキルなしの魔物も居るのね。
それなりにLvは高いが、勝てない事はないだろう。私も何気に上位種共に勝ってきたし。
そう、傲慢になりつつ挑んだら飛ばされた。
「わぁ! 角が!?」
角で持ち上げられて空を舞った。
だが、私は元々が猫である。
くるくると回ったのち着地した。
牛は私が存命と気づき追ってきた。
「ちっ! 正面から勝負を仕掛けるのは間違いか。それなら側面から切りつけよう、かな!」
無闇に剣を振ったところで、当たるものではない。私は無心になってスキルに身を委ねた。
その直後、身体が自然と動き、牛を避けつつ真横から首をストンと切り落とした。首を切られた牛はドドドッと走ったあと、横に倒れた。
「魔法と同じイメージと思ったら違うのね。スキルに丸投げして狙い打つ場所を視認すると」
経験値も獲得っと。それでも一だけだが。
この牛も一応は上位種なので魔石を喰らえば一瞬だと思う。とはいえ、仲間に気づかれると面倒なので、私は収納スキルに全て片付けた。
仮に襲ってきたら返り討ちにすればいいが。
牛も無事に解体された。私は骨格と大腸のみを取り出して地面に埋めた。洗浄すればイケると思うが、無駄に手間をかけても意味がない。
収納スキル内も整理したいしね。
「収納スキルが一杯になってきたね。何処かしらで整理しないと閲覧するのも辛くなりそう」
増えすぎても管理が雑になるし、食料としてなら十分過ぎる量が詰まっているし、死蔵するくらいなら、何処かに売りたいものである。
一先ずの私は引き続き疾走を始め、草原の終わりを目指す。それでも終わりが見えそうにないので適当な場所へと止まり、休憩を入れた。
「一体、何処まで続くの、この草原?」
草原に出るとそれ相応の魔物に出くわすし。
安全圏と思ったけど森よりも草原が危険地帯だったらしい。牛以外に同類にも出くわした。
色は黒だったので戦う意思を示さず逃げた。
「ブラック・ピューマも居たのね。鑑定した限り簒奪持ちではなかったけど。やはり私は特殊個体? 今回はLv五〇〇だから逃げたけど」
私は草原を耕してテントを張る場所を作る。
テントを取り出して固定し寝床を用意した。
竈も作って火種も熾した。牛肉を風魔法で細切れにして材木で作った串に肉を刺していく。
そのまま牛串を竈の上に並べて焼き始めた。
「この匂いだけでも、お腹が空くよね」
その直後、ガサガサと物音が響く。
私が振り返ると金毛の仔猫が現れた。
「え?」
「にゃ」
これは匂いに釣られて出てきたのかしら?
若干怯えも見える。それに怪我もしていた。
「こちらにおいで。手当するから」
「にゃ」
仔猫は同類と感じ取ったのか寄ってきた。
頭の耳を見たのか揺れる尻尾を見たのか?
私は怪我した仔猫を治療しつつ鑑定した。
────────────────────
名前:なし 性別:メス 年齢:生後九日
種族:ゴールド・ピューマ(魔物/仔猫)
Lv:一 経験値:〇一/一〇
体力:〇一/一〇
魔力:一〇/一〇
スキル:威嚇/F
────────────────────
結果は私と似たような境遇の仔猫だった。
知性のあるなしは関係ないが、このままでは死ぬ事が予測出来た。今の私には乳が出ないので牛肉を口の中で嚙み砕き材木で小皿を作って吐き出した。それを仔猫の前に置いてあげた。
「食べていいよ」
「にゃ」
仔猫は身体の傷が癒えたからか、私から与えられた牛肉を少しずつ口に含む。とはいえこのままだと育ちそうにないので、フェンリルの魔石を取り出して小皿の上に置いた。それを見た仔猫は一瞬ビクッとし上目遣いで首を傾げた。
「可愛い仕草ね。舐めていいよ」
「にゃ」
それだけで理解してペロペロと魔石を舐め始めた。肉も平らげたし自ずと成長するでしょ。
魔石を舐め終えると仔猫は力尽きたように眠った。残りの魔石は半分、それは私が頂いた。
「涎が凄いけど、構わないね」
その直後、仔猫が真っ白に光り輝く。
私とも魔力的な繋がりが出来ていた。
「こ、これって?」
仔猫は白猫族、魔人の女の子に進化した。
「私が残りを舐めたから?」
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