第2話
「 あの店はどうかしら?」
女が指差していたのは、タワシの専門店であった。
「 店であればいいってもんじゃないよ。」
男は少し不愉快になった。
一日だけの付き合いの場所としてどこを勧めるかは、相手をどのように考えているかの大きな指標である。
それをタワシの専門店とは、相手をバカにするにもほどがある。
しかし、女は言った。「 最近、お風呂に入って体を洗うのに、タオルじゃなくてタワシで洗うのにハマってるのよ。」
「 早速、あの店に行ってみよう。」男は考えを改めるのが得意だった。
男は早くも女と一緒に風呂に入っている想像をしたが、女は全然そんなことは考えてなかった。
「 ひと言でタワシと言っても、いろんなのがあるのよ、今は。用途別には、体洗い用、浴槽洗い用、食器洗い用、窓拭き用、床拭き用などね。私が今日買おうと思っている体洗い用の中にも、形、大きさ、色、材質の違いによって、いろんなのがあるわ。気に入ったのがあれば、あなたも買うといいわ。」
男はそんな説明を聞いても欲しいとは全然思わなかったが、女との絆を深めるために「 そうだね。気に入ったのがあれば買うとしよう。」と言った。
男は早くも裸の女を自分がマッサージをしている想像をしたが、女は全然そんなことは考えてなかった。
おおよそ何事においてもそうであるが、恋愛においても、テレパシー能力の有無は運命の分かれ道になる。
テレパシー能力があれば相手の気持ちや考えがわかるのでその後の適切な対応が取れやすいが、反面、テレパシー能力がないと全くおかしな対応をする可能性が出てくる。
もちろん、態度や表情、仕草などから相手の気持ちや考えを推し測ることもできるが、それには限界がある。
男はテレパシー能力が乏しいだけでなく、態度や表情、仕草などから推し測ることもあまりできなかったので、二人の仲も先が思いやられたのだが。
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