第52話 新しい剣・上
いつもの時間よりちょっと遅れました。
◆
鈴木の体が床に転がった。
床に血が広がっていく……口封じってことだろうか。
ただ、どういう風にしたのか見当もつかない。
何かの魔法とかなのか、それとも機械とか何かなのか。
信じられないという表情が倒れた鈴木の顔に張り付いていた。
あんなのだったが……露骨に切りすてられた様を見ると嫌な気分になる。
『いちいち鼻に突く男ではあったが……こやつの主はそれ以上の下衆のようじゃな』
あのままだと何か話しそうだったが……ここまでしても知られたくない秘密がダンジョンにあるってことか。
ただ、鈴木の反応を思い出すと、恐らく俺の推測はある程度は当たっているんだろう。
ダンジョンはおそらくこんな風に日本中に現れる前からあったんじゃないだろうか、それを使ってる奴も。
まだ世界の深層は深いということなんだろう。
「ああ、そうだ……よくやってくれた。みんな」
『妾の力を持ってすれば難しいことではないな』
『久しぶりに思いっきりやれていい気分よ』
『主様、拙者の力、見ていただけました?』
三人が思い思いに言う。
とにもかくにも勝てて良かったな。
◆
一応鈴木の遺体を探るが……身元が分かるようなものは見当たらなかった。
もしかしたらさっきの焔で燃えてしまったのかもしれないが。
さっきのことを考えれば、カメラくらい持っているかと思ったが……それらしいものは見当たらない。
どういうことなんだろうか。
遺体をここに置いておくのは少し気が引けるが、さすがに担いで帰るわけにもいかない。
どうにもならないな。
「悪く思うな」
遺体に向かって軽く頭を下げて、地面の転がったままの鈴木の剣を見た。
この剣はどうしようか。恐らくこれも俺のと同じ、意思を持つ武器っぽいが。
中華風の柄飾りに蛇の尾のような黒い布の飾り、握りに蛇のようなざらついた革が巻かれている。
薄墨を塗ったように黒みがかった長い両刃にはこれまた蛇の彫刻がされていた。
とりあえず剣を取りあげて意識を集中する。
しばらくすると、目の前に人影が浮かんだ。
俺と同じくらいの170センチを軽く超える長身。
青いチャイナドレスのようなタイトな衣装を着ている。
顔立ちは目つきが鋭く男性的だが、体つきから女性と分かった。
漆黒の髪を蛇を思わせる長い三つ編みにしていた。
頬から始まって、スリットから覗く体や足にかけて蛇の入れ墨が彫られていた。
そいつが鋭い目で俺を見る。
『私を折れ……不出来なものとはいえ、あの男は一度は我が主として仰いだものだ。
あれが死んだのならば私もそれに殉ずるのが筋だ』
そいつがそっけなく言う。
……あんな奴でもこの剣には受け入れられていたんだろう。少なくとも殉死しても良いと思うくらいには。
「折られたければ後でやってやるよ」
とりあえず今は帰ることを優先したい。
倒れた鈴木が背負っていた鞘に剣を納める。鞘も蛇の皮の良ようなざらついた素材だ。
剣を納めるとそいつの姿も消えた。
剣を持ち上げるが、ずっしりした重さがのしかかってきた。
かなり疲労が激しい。
普段なら往路で倒したドロップアイテムがモンスター除けになるんだが……帰りに襲われないことを祈ろう
◆
長くなり過ぎたので分けました。続きは明日に更新します。
4章の最後まではあと3~4話ほどの予定です。
面白いと思っていただけましたら、ブックマークや、下の【☆☆☆☆☆】からポイント評価をして応援してやってください。
感想とか頂けるととても喜びます。
応援よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます