第40話 決着
三人が首を振って起き上がった。
肌には薄く火傷の跡があるが大したことはなさそうだ。重大な傷は負わせないが戦意は失わせる、絶妙の火加減だったな。
『どうじゃ。言っておくがな、加減抜きでやるよりも加減する方が難儀なのじゃぞ』
「お見事」
そいつらが床で火を噴いて燃え続けるドローンを見た。
「なんてことをするんだ!器物破損だぞ!」
「しかも、暴力をふるうなんて!」
そいつらが怒りの表情で言うが……
「そもそもお前らが売った喧嘩だろ。
自分から仕掛けておいて、痛い目にあったら怒るなんて、通じないだろ、それは。それに、人の顔を勝手に撮るのはいいのか?」
そういうと、三人が黙りこんだ。
少なくとも被害者ぶれる立場じゃないだろ。
「その程度のドローンならいくらでも弁償してあげますわ」
後ろで蘭城さんが言う……ドローンがいくらなのか知らないが、一応今はその位は払えそうではある。
「ふーん、やっぱり草ヶ部、結構強いんだねーえ、それともコイツラが弱すぎるの?どうなのかなー」
「多分どっちもだな」
はっきり言って弱すぎた。
ダンテより強い、はいくら何でも吹きすぎだろう。流石にあいつがこれより弱いとも思えないぞ。
赤い霧はいつの間にか消えている。
とりあえず機嫌が直ったようで良かった。
「一応言っておくと今のは精一杯手加減した。次はあんたら自身に火をつけるぞ」
『嫌じゃ、このようなものを燃やしては妾の格が下がる』
そいつらが後ずさった。
「もしかして、こいつ……本当にドラゴンを倒したのか?」
一人が言うが……本当にって、マジであの映像は
こんな不用心な連中はダンジョン内で普通にモンスターにやられそうだな。
「しかし、お前ら……マジで命拾いしたのホントに分かってないな」
火傷程度で済んだのは運が良かったと思う。
さっきの感じ、リュドミラは人ひとりくらいは簡単に殺せるだろうし、躊躇もしないだろう。
……しかし、なんで俺がこんな連中の心配をしていないといけないんだ。
「だが!暴力で我々の口を塞ぐことはできないぞ!」
「そうだ、私たちの問いに答えてもらう!」
なんかまた元気を取り戻したようにそいつらが言う……この打たれ強さは大したものかもしれない。
と思ったが。
「黙りなさい」
蘭城さんが静かに言ってそいつらが黙った。
「そもそも、私は自分の意思で草ヶ部様のお傍に居ます。邪魔は許しません」
「あたしの師匠に言いがかりつけるのやめてもらいたいんですけど」
「ですから、あなた達に横から口をさしはさまれるいわれはありません」
蘭城さんの言葉にそいつらがたじろぐように一歩下がった。
「しかし、不適切な関係を見過ごすのは大人として……」
「私たちが良いと言っているのに、なぜあなたたちが良くないと言えるんですか?」
「そうだよ。余計なお世話!」
「これ以上騒ぐなら、こちらもしかるべき措置を取りますよ」
蘭城さんと長壁さんがかわるがわるに言って、そいつらが黙り込んだ。
「いいから、もう、とっとと出ていけ」
◆
そいつらがすごすごと出て行って、ようやく静かになった。
「……今の映像取られてないよな」
「このドローンはHDを積んで映像を録画するタイプですから、本体が壊れた時点でデータは消えてるはずです」
長壁さんが黒焦げになった残骸を見て言う。少し安心した。
正直言ってあいつらを怪我させるとか戦う場面についてはどうでもいいが、リュドミラの姿が全世界配信とかされるのはヤバ過ぎる。
「あーあ、なんか興が削がれちゃったねぇ……今日は此処までにしておこうかぁ。わたしももう帰るよー」
リュドミラが言う。
まだいろいろ聞きたかったんだが……これ以上は無理か
「また来てもいいか?」
「いいよーう、草ヶ部。君みたいな強い奴は好きだからねー。次は一緒にお風呂に入ろうねぇ。
それと、次に来るときはお酒持ってきてくれるかなぁ?」
「酒飲むのかよ」
「
リュドミラが言う
なるほどな。だから神社とかではお神酒を供えるのか。
そういえば天目とかが時々酒を供えろとか言ってくるが、そういう意味があるんだな。
「あとは香袋とか髪油とか持ってきてくれると嬉しいなぁ。人間はそういうの作るの、上手いよねぇ」
「そういうのでしたらお持ちしますわ」
蘭城さんがいうと、リュドミラが無邪気な顔でほほ笑んだ。
「ありがとねー、蘭城。楽しみにしてるよー」
◆
続きは明日に更新します。
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