第39話 暴露系の乱入
「これはダンジョンの中の温泉でしょうか?衝撃的な映像ですね」
「世界初の映像をお届けするのは、皆さんご存知、真実を追求するダンジョンウォーカーズ!」
大声を上げながら広間に入ってきたのは、それぞれドローンを連れたスーツ姿の三人組だった。
誰かと思えば……あの暴露系だか何だかと言う連中か。
そいつらがこっちに気づいたように近づいてきた。
床に薄く流れているお湯を踏んでバシャバシャと水音が鳴る。
「逃げられると思ったんですか?このダンジョンウォーカーズから。私たちの調査能力を甘く見てもらっては困ります!」
「さあ、答えてもらいますよ!ニンジャマスター、いえ、草ヶ部耀。
まず、第一にこの二人の女性とあなたの関係は何なのですか?あなたのような中年男性が不適切だと思いませんか?」
男の一人が押し付けるように小型のマイクを突き出してきた。
「一言で言うと……そう、世間ではこういうのをキモいというんですよ」
「は?」
「師匠は素敵です!キモいとかないですから!」
蘭城さんと長壁さんが怒ったように言うが、男の方は平然としている。
「恩を着せられているんじゃないですか。私は貴女たちの味方だ!」
「あのさーあ、こいつらなんなのー?」
湯から上がってきたリュドミラが不機嫌そうに口を挟んできた
「おお……この赤い髪に赤いドレスの少女は誰なのでしょうか?」
「まさか……他にも女性を食い物にしている?」
「うるさいなーあ、こいつら、草ヶ部の友達ー?」
リュドミラの口調に明らかにウザったそうな気配が滲んでいる
……というか、この連中が何をするよりも、コイツの機嫌を損ねる方が100倍ヤバい。
「違う」
「なーんだ、じゃあ殺していいかなー?」
「まて、責任もって俺が追い払うから止めてくれ」
「なんですって?追い払う?」
三人のうち、女が大げさな口調で言う。
それに合わせるようにドローンがこっちを向いた。
これがライブ配信とかだと色々とヤバい気がするが……そうじゃなくて都合よく編集した動画で稼ぐスタイルだとか小津枝が言ってたな。
此処をライブ配信されてないのは正直言ってよかった。
「今すぐ帰れ」
「これは何ということでしょう!彼は私たちを脅迫しようとしています」
「よほど見られたくないものが有る、そう判断せざるを得ない」
「追い返したければ追い返してみなさい!」
「そして、甘く見ないで貰いたいわね。私たちは三人なら15階層まで行けるのよ」
「そう、俺達は三人ならダンテより上だ」
男が言って、二人が俺を囲むように左右に散った。
「トライアングルフォーメーション!」
三人が俺を囲むように位置取りして決めポーズを取る。
それぞれの手には槍と斧が握られていた。蘭城さんと同じように武器を作り出すタイプか。
もう一人は素手のままだから魔法使い系らしい。
「言っておくが、私たちのフォロワーは30万人、彼女たちのフォロワーに比べれば圧倒的に多い。この影響力は絶大だぞ。
お前をどう料理するも私たち次第というわけだ」
「……そんなこと言っていいのか?」
「編集で切るから問題ない」
正面の奴が言う。
ただ、悪いが今はフォロワーがどうとかはどうでもいい
後ろではリュドミラが明らかに不穏な気配を漂わせている。周りにさっき見た赤い霧が浮かんできていた。
……こいつらは現状のヤバさを全然わかってないな。
「今からニンジャマスターの本当の力を探ります!」
「レッドドラゴンを倒したというのはフェイクか!ファクトチェックの開始です!」
芝居がかった口調で言うが……そんなことより今回はドローンも潰さないといけないか。
腰に挿していた
「あー……
『妾に任せよと言いたいところじゃが……なんじゃこの道化どもは』
露骨に嫌そうな声が頭の中に響く。
「同感だが……頼むから殺すな」
モンスターは倒せばドロップアイテムになるだけだが、人間はそういうわけにはいかない。
それに人を斬るのはやはり気分的には抵抗がある……クソみたいな連中ではあるが。
『分かっておるわ、全く。何度も申すな。というより焼く価値もないわ、斯様な者共』
「ニンジャマスター!我々は暴力は望まないが、戦うというなら手加減は……」
「さっさと終わらせよう」
『そうじゃな』
鬱陶しい口上をこれ以上聞く必要もないな。
そいつらが決め台詞を言い終わるより前に空中で焔がはじけて、まずドローンが火を噴いた。
◆
「え?」
何が起こったか分からないって顔でそいつらが後ろを振り向く。
炎に包まれたドローンが地面に落ちた。バッテリーか何かに引火したのか、小さく爆発が起きる。
「熱っちい!」
「ぎゃあ!」
「火が、火がぁ!!」
一人が顔を抑えて地面に倒れ込んだ。
2人はスーツの裾に火が付いたようで地面を転げまわっている。
直接燃やしただけわけではなく、至近距離に焔の壁を立てただけだが。
……吹き付ける熱風はかなり痛みを感じる、というのは何度も体験して身に染みている。
俺の着ている防熱の装備は飾りじゃない。
床には薄くお湯が流れている。
悲鳴を上げながらそいつらがしばらく転げまわっていたが、しばらくしたら火は消えた。
◆
続きは明日に更新します。
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