第35話 熱海ダンジョン(仮称)探索・上
書きあがったのでとりあえず更新します。
◆
休暇ということでホテルの滞在は三日目になった。
温泉は快適だし、食事は美味しい。
客室もとてつもなく豪華だった。
特に寝転がったベッドの寝心地が最高だった。別にタワマンに引っ越したいとは思わないが、寝具は改善した方がいいだろうか。
とはいえ……やる事が無いのはどうにも落ち着かない。
借金返済に追い回されていた時は休みたい、ゆっくりしたいとか思っていたが、実現したら物足りなさのようなものを感じるあたり、人間は勝手なもんだと思う。
◆
「ところで……なんか、お客さんが少なくないか?」
「ですよね、師匠。私もそう思ってました」
長壁さんが大きくカットしてもらったローストビーフを食べながら言う。
今日で3回目の夕食だが、食事はどれも美味しい。
それに、このレストランはビュッフェスタイルでカジュアルな感じで気楽に食べれるのが良い。
堅苦しいのは苦手だ。
ビールでも飲みたい気分ではあるんだが、なんとなくこの二人の前で飲むのは少し気が引ける。
二人とも飲めない年齢ではないが、蘭城さんはグレープフルーツジュース、長壁さんはお茶を飲んでいるから、こっちもそれに合わせてお茶を飲んでいる。
料理はおいしく、快適なホテルなんだが……客はあまり多くない気がした。
昨日と一昨日は平日だったから仕方なかったのかもしれないが。
今日は土曜だからもっと賑やかになるかと思ったが……温泉も殆ど貸し切り状態だった。
レストランも広い分だけ人の少なさが目立つ。
まばらなお客さんと空いたテーブルで、スタッフの人たちも手持無沙汰な感じだ。
「いつもこんなにお客様が少ないのですか?」
蘭城さんが近くの制服姿のウェイターの人に声をかけた。
「実はですね……1週間ほど前にこの近くにダンジョンが現れたのです」
彼女が蘭城家のお嬢様だということは流石に皆が知っているようで、ウェイターの彼が礼儀正しい口調で答えてくれた。
「この辺りには配信者とかそう言う人も居ないので、中に何があるのか全く分からないんです……変な音が聞こえるという噂もありますし」
その彼があたりを憚るように言った。
ダンジョンそのものは危険は無いものとして扱われている。
ただ、それでも不気味なものは不気味だから周囲には人は寄り付き辛くなる。
八王子とか新宿とかのダンジョンが割と気にされてないのは、配信者たちが中に入って色々と配信とかをしているというのはあるらしい。
そういう意味では配信活動は役に立っている面もあるようだ。
ダンジョンなるものが日本に発生してからまだ3年ほどしかたっていないわけで。
何となく日常の風景になりつつあるが、それでも薄気味が悪いという印象はあるのだ。
観光地としては迷惑な存在だろうな
「とはいえ、しばらくすれば落ち着くのではないかと思います。それではまた何かありましたらお声がけください」
そう言ってその彼が一礼してカウンターの向こうに歩き去っていく。
……どことなく疲れた気配が漂っていた。お客が入らない状態ってのか気が滅入るんだろうな。
「あの……草ヶ部様」
その背中を見ていた蘭城さんが意を決したように口を開いた。
「なんだ?」
「そのダンジョンの様子を見に行きたいのですが……よろしいでしょうか。聞いた以上は蘭城家の者として放っては置けません」
蘭城さんが真剣な口調で言う。
……別にこれについて彼女が責任を感じたり何かをやることはないと思うが。
この辺の使命感のようなものは、名門の家に生まれたからなんだろうか。
「まあいいと思う。俺も付き合うよ」
「ありがとうございます……草ヶ部様」
そう言うと嬉しそうに蘭城さんが笑みを浮かべた。
「……とはいえ、丸腰で行くわけにはいかないぞ」
「大丈夫です。そう言うことならお任せください」
◆
続きは明日の朝にでも。
引き続き書け次第更新していきますので、応援よろしくお願いします。
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