借金の形に深層でドラゴンと戦っていたブルーカラーのオッサン、何の因果かニンジャマスターと呼ばれ美少女配信者の師匠になってしまう~俺のチャンネルなんてものは無いが、他人のは定期的にバズっているらしい~
第33話 ある動画とそのコメ欄(とある配信者SIDE)
第33話 ある動画とそのコメ欄(とある配信者SIDE)
「皆さん、こんにちは。真実を追求する配信者、ダンジョンウォーカーズ。和木です」
「北林です。今日も衝撃的な事実を皆さんにお届けします」
30歳くらいの黒っぽいスーツ姿の二人の男がカメラに向かって言う。
片方は中肉中背で少し長めの髪、もう一人は少し太り気味だ。メガネをかけていて頭髪が少し寂しくなっている。
その横には、これまた30歳ほどのスーツ姿の女が立っていた。
背が高く、短めの髪を茶色っぽく染めている。鋭い目つきが印象的な顔立ちだ。
三人のスーツには足形のピンバッジがつけられていた。
「では早速ご覧ください。この鑓水ダンジョンは住宅地の真ん中にあるダンジョンです。地味な場所で殆ど配信者は寄り付きません」
その言葉と同時に背景が地図に切り替わった。
「しかし私たちはこのダンジョンにニンジャマスターと呼ばれる男が出入りしているという証言を得ました」
「本当ですか?北林さん」
「ええ、不確かな情報かと思ったのですが……張り込みをすること3日間。ついに彼をとらえた。情報は正しかったのです」
「私たちはニンジャマスターと呼ばれる男の真相に迫るべく鑓水ダンジョンにやってきました。そして驚くべきものを見てしまった」
言葉と同時に画面が切り替わる。
ニンジャマスターと呼ばれる黒装束に刀を背負った男に連れられるように、袴姿の少女とジャージ姿がダンジョンに入っていく映像だった。
「それは何ですか?植田さん」
「この映像をご覧ください。彼は二人の年端もいかない少女をダンジョンに連れ込んでいる。片方は長壁さん、もう一人は有名な配信者、セーラでしょう。
成人男性がこの二人とダンジョンの中に入って……数時間も出てこないのです」
植田と呼ばれた女が意味ありげな口調で言って言葉を切った。
「一体何をしているんでしょうか」
「ニンジャマスターというくらいだから……くのいちの修業をさせているのでは?」
軽口をたたくように和木が言って、植田が大げさな感じで和木を睨む。
【くのいちの修業ってどんなんだよ】
【やっぱり性的なアレじゃない?敵を体で誘惑するとか】
【あの颯爽とした長壁さんがそんなことしてたら俺は泣く】
【ニンジャマスターとかマジフザケンナだわ】
「知っての通り、セーラさんはあのニンジャマスターに命を助けられた。あの動画を覚えている人も多いでしょう」
「しかし……その恩を着せてなにか……そう、人には言えないような行為に及んでいるとしたら?」
和木と植田が深刻そうな表情を浮かべて言葉を交わし合った。
「もしそうならば、到底許されることではありません」
「勿論、何をしているかは分かりません。今すぐ入って問いただしたい。
しかしこの鑓水ダンジョンについては殆ど情報がない。中に入るのは危険を伴います」
悔し気な様子で植田が言ったところで、動画の背景が切り替わった。
背景にアカデミアのポーションのCM映像が流れる。
「そして、ニンジャマスターのもう一つの謎。それはアカデミアの新サプリに関係があるかもしれないということです」
「アカデミアは販売する薬のラインナップを変えて一躍、一流企業の仲間入りを果たしました
このポーション、貴方も目にしない日はないでしょう。一体これにどう関わっているのでしょうか」
植田と呼ばれた女が白いポーションのパッケージを掲げながら思わせぶりに言う。
「そしてもう一つ。彼には本当にレッドドラゴンを倒したのかという疑問もあります。
八王子の地下にあんなものが本当に存在するのか?彼についての謎は尽きません」
「この謎を解くため!私たちは彼の追及を試みようと思います」
「ニンジャマスターの正体を暴く!真実を追求する私たち、ダンジョンウォーカーズの次の放送をお楽しみに」
植田と北林、和木がそれぞれ言って決めポーズのようにカメラの方を指さした。
【しっかり頼むぞ!】
【正体を暴いてくれ】
【マジであの二人を食い物にしてるんなら絶対に許せん】
【俺もあのドラゴンの映像はフェイクじゃないかと疑ってる】
◆
「再生回数はどうだ?」
「公開から半日で25万だ。コメントもいい感じ。SNSの拡散も上手く行っている。投げ銭もまずまずだ」
動画の再生数を見ながら北林と和木が言葉を交わし合う。
「じゃあ当分はあいつがターゲットだな」
「なんか今はニンジャマスターとか持ち上げられてるからね。でもきっと何かしているわ、正体を掴んでやる」
植田が言って和木が頷いた。
「内容によっては週刊誌とかにも情報を売れるかも」
「話の持って行き方次第ではアカデミアとか蘭城財閥とかの真実を暴けるかもしれない」
「これは……上手く稼げるかもな」
和木と北林が言って、植田が顔をしかめた。
「ちょっと、待ちなさい。あくまで私達は真実を追求するために活動してるのよ。
お金が目的ではない、そうでしょう?」
植田が言って、北林と和木が表情を引き締める。
「そうだな」
「その通りだ。隠された真実を暴き悪を討つ!それが俺達だ」
◆
今日中にあと一話更新します。
引き続き頑張って書きますので、応援いただけると幸い。
よろしくお願いします。
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