第16話 そいつの本性

「SNSを見たときは心底ムカついたぜ。

ヘルハウンドを殺せる討伐者アタッカーは俺だけだ。インチキ野郎が俺と同格に扱われるのは許せねぇんだよ」


 ダンテが小声で言ってもう一度ゴーグルの耳のあたりを押す。

 

「まあいいさ。アンタの正体なんてどうでもいいんだ……ニンジャマスターよ、ぜひ受けてもらいたいな、この俺の挑戦を!」


 また大仰な口調に戻って大袈裟に手を広げる。

 どうやらあれはマイクのオンオフらしい。 


 マイクで話す時はキャラづくりをしているわけか。

 どうやら人気者らしいが、人気者も色々大変そうだ。


「で、どうすればいいんだ?」

「今まさに配信してる。俺のフォロワー50万人の前で決着を付けようじゃないか」


 そう言ってダンテがまたポーズを取った。


「なるほどな」

「ところで……お前は配信チャンネルは無いのか?」

「見ての通りドローンが無いだろ。持ってない」


 そういうとダンテが怪訝そうな顔で俺を見た。


「じゃあ結局あんたは何なんだ?こんなところで何をしている?」

採掘者ブルーカラーだ」

「なんだそりゃ?」


 ダンテが首をかしげる。

 やっぱり採掘者ブルーカラーの存在は知られてないらしい。まあそれはどうでもいいか。


「まあいい。どういうわけか知らねぇが、配信チャンネルが無いのなら、俺が勝ったらこの場で認めてもらうぜ。

自分はダンテ様の足元にも及びません、とな。

そして……お前がやらないなら、お前の後ろの偽ニンジャマスターに相手してもらうぞ。偽物が俺より強いとか言われてるのは我慢ならないからな!」


 ダンテが俺の後ろの長壁さんを指さして言う……さすがにそう言われると黙ってはいられないな。

 

「それをさせるつもりはない。相手するよ」

「草ヶ部様!」

「師匠!」


 二人の声が後ろから聞こえる……名前を呼ばれた気がしたが聞かなかったことにしておこう。

 

『妾にやらせよ。このような痴れ者、3つ数えるうちに消し炭にしてくれる』

『主様!ここは拙者が!』


 鴉と燁蔵かぐらの声が聞こえてくるが……ここでこいつらに任せるのはちょっとな。


「……天目、頼むわ」

『ああ、いいよ。アタシに任せときな』


 二人の声をとりあえず無視して天都を抜いて構える。

 

『なぜ妾にやらせぬのじゃ』


 燁蔵かぐらの不満そうな声が頭の中に響くが。


「50万人フォロワーというのが本当かどうかは知らんが……お前手加減しないだろ」

『当然じゃ。このような痴れ者に遠慮する必要などどこにあろうか。それに、妾の使い手であるお主が侮られるのは我慢ならん。そもそもふぉろわーとはなんじゃ』

『そうです!主様!』

「気持ちには感謝するよ」

 

 そう言ってもらえるのは嬉しいが、相手の能力があまり分からない時は天目が一番対応力が高い

 燁蔵かぐらや鴉は攻撃に偏り過ぎていて、下手すれば相手を殺しかねない。

 俺が殺すのはモンスターであって人じゃない。


「何をブツブツ言ってるんだ?言っておくが今更降参は認めないぞ」

「降参はしない。で、どうするんだ?」


「一騎打ちだ。俺と勝負してもらう。とはいえ安心してくれ。事故配信は望むところじゃない。手加減はしてやるさ」


 ダンテが言って後ろの二人に手で合図した。

 どうやら後ろの二人は撮影係のようなものらしい。取り巻きとでもいうのか。

 とはいえ、片方は刀、片方は鞭を持っているから能力なしではないらしい。


 ダンテが握手を求めるように手を差し出してきた。

 さっきのアレを思い出すと、正々堂々の握手をするって感じではないが……一応こっちも手を差し出す。


「あんたと後ろの二人がどういう関係か知らねぇが、あの二人を差し出すなら手加減してやってもいいぜ、オッサン」


 握手したらまた絡むような口調でダンテが言った。

 どうやら今はマイクオフらしい。


「どうだ、いい取引だろ?」

「俺の感覚だと弟子を守るのは師匠の義務だが。お前は違うのか?」

「……後悔すんなよ、バカが」


「ダンテさん!同接60万人超えですよ」

「皆期待してますから」


「任せてくれ、皆。俺の強さを見ててくれよ」


 ダンテがドローンに向かって爽やかに手を振っている。

 しかし、まさかの対人戦か。人と戦うのは初めてだ。


 採掘者ブルーカラーは人と戦う必要が無い

 ……と言いたいところだが、質の悪い追剥みたいなのもいるらしく、柴田は戦ったことがあるって言ってたな。


 まあいいか。

 トップ討伐者アタッカーだか何だか知らんが、レッドドラゴンより強いってことはないだろう。



 続きは昼に更新します。


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