第17話 討伐者とのバトル
改めてダンテを見た。
右手には映画とかで見るような二連装の短めの銃を持っている。あんなもんどこから持って来たんだか。
左手には魔力が集中しているのが見えた。
能力的には魔法使い系らしいな。
ダンテが半身に構えて距離を測るようにすり足で立ち位置を変える。ブーツが床に摺れる音が響いた。
すぐにかかってくるかと思ったが、意外に慎重なのか。
銃は突き出すように構えられたままだ。
見たまんまの銃で先制攻撃して魔法で追撃というスタイルのようだが、切り札を持っていないとは限らない。
「
『ぶぅぶぅ……拙者にやらせないのに、それだけしろっていうんですか、主様。拙者、すごーく不満なんですけどぉ』
不機嫌そうな鴉の声が頭に響くが、とりあえず無視しておく。
鴉は
初見の相手と戦うときは頼れる能力だ。
『……陰陽師です、左手に陰陽術。馬上筒の方は普通の武器ですが、主様と同じく霊力を宿す力がありますね。
後ろの二人は武器使いですけど、特殊な力は持ってません。主様に比べたら小物も小物です』
しばらくしたら頭の中でまた声が響いた。
陰陽師は鴉の言い回しで、要は魔法使いだ。
「ありがとな」
『次は拙者に晴れ舞台を頂きたいです』
とりあえずタネが割れるのはありがたい。どんな相手でも準備があるのとないのじゃ随分違う。
一つ深呼吸してダンテの方を見た。
「食らえや、オッサン!」
銃声が響いて白い煙と同時に黒い弾丸が飛んできたが、天都の風の壁で止まった。
重い音を立てて弾が床に落ちる。ゴムか何かっぽい大きい丸い弾だ。
物理攻撃ならこれで十分。
「なんだと?」
もう一発の弾が飛んでくるがそれも俺に当たる直前で風が絡みつく。
空中にピタリと止まった弾丸が床に落ちた。信じられないって顔でダンテが床に落ちた黒い弾を見る。
「風魔法使いか!ならこれを食らえ!」
左手を前に突き出してきた。白い魔力の球が打ち出される。
確かに魔法は風では止められないが対応が遅い
足元に風を吹かせてそれに乗って横に回り込む。
天都を振り下ろすと風が渦を巻いてダンテを捕らえた。ダンテの体が軽々と空中に浮く。
……イメージしたより風が強い。
「うわっ!」
小さな悲鳴のような声が上がってダンテが壁に派手にたたきつけられた
◆
壁にぶつかったダンテが床に倒れ伏した……いくら何でも死んではいないと思うが……動く気配が無い。
連れの二人があっけにとられたって顔でこっちを見る
「えっ……ちょっと、おい」
「これって、何?どうすんだよこれ」
「圧勝配信のはずだろ」
「マズいって……コメ欄が」
二人がわちゃわちゃしている。
あの配信用の道具にコメントとやらが流れているのかどうなのか。ていうか、負けるなんてことは考えてなかったんだろう。
それはそれとして。
「天目……やり過ぎだ」
『殺してないから気にしなさんな。それに精一杯加減したんだよ、あれでもね』
天目のそっけない声が響く。ドローンが付き従うようにダンテの方に寄っていった。
あれだけの風を吹かせてドローンをあえて避けているあたりがまたなんとも。
しばらくしてダンテがうめき声をあげて体を起こした。
「なんなんだ……ニンジャとかいってくせに、風系統の魔法使いか?」
「いや、違う」
そもそも俺は一度も忍者とか言った覚えがないんだが。
「なんなんだ。クソ野郎が……」
ダンテが膝立ちになった。後ろに隠した左手に魔力がまた集中する気配を感じる。
まだ戦う気か……だが。
「止めとけ。自分が強いと思うなら、みっともない悪あがきはするな」
そう言うと、観念したようにダンテの左手の魔力が消えた。
ある程度強いからこそ相手の強さも分かる。俺との実力差が把握できない程こいつは弱くないと思う。
「で、そこの二人、かたき討ちをするか?」
後ろで突っ立ってる二人に声を掛けてみるが。
「ひいぇぇぇぇ!」
「ニンジャマスターやばすぎるぅ、助けてくれ!!!」
「殺される!!」
悲鳴のような声を二人が回廊を走り去ってった。
殺されるとは人聞きが悪いことを言うな。
そして、こいつを置いていくとは……倒れたままのダンテを見る。
「立てるか?」
手を差し出したがダンテが顔を背けて沈黙する。
少し間があって自分で立ち上がった。ダンテが俺を睨む。
「一回で勝ったと思うなよ!情けは受けねぇ。ニンジャマスターだか何だか知らねぇが……次は勝ってやんぞ、覚えとけや!」
うなだれたダンテがよろめきながら歩き去っていった。
ドローンが付き従うようについていく。
あそこで弱い姿はさらせないか。
最後に意地を張れるなら、いずれは強くなるかもな。
◆
続きは夕方に更新して一章終了となります。
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