第18話 完全に身バレする
「流石です、師匠!」
「すばらしいですわ」
ダンテが去っていったところで、二人が嬉しそうに駆け寄ってきた。
「怪我はないか?」
「はい、師匠……あの、ありがとうございます」
長壁さんが申し訳なさそうに言う。
怪我がないなら何よりだな。
「ところで、あの……師匠、どうしましょうか」
長壁さんが気まずそうにポーチから取り出したスマホを見せてくれる。
また通知がえらいことになっていた。自称50万人フォロワーの前で戦ったわけだから当然なのかもしれないが。
「すみません……あの、私も配信を切っておりませんで」
蘭城さんが申し訳なさそうに言うが……ダンテに撮られていたんだから、そもそも蘭城さんが切っていようがいるまいが変わらない。
「師匠。ごめんなさい……私をかばってくれたばっかりに」
「まあそれはもういい。自分で決めたことだ」
あの場で見逃せば俺の身元は割れなかったかもしれないが、そんなことは流石に出来ない。
俺はどうせ配信チャンネルなんて作る気はないから俺が絡まれることは無いのが幸いだ。
ただ……放置していたSNSアカウントがあった気がする。
念のために消しておこう。
「あの……返信していいでしょうか?」
長壁さんがスマホを片手にして言う。
質問が殺到してるんだろうなと言うのは察しがついた。
「ああ、いいよ。だが俺の名前とかそう言うのは伏せておいてくれ」
今更遅い気もするが、とりあえずそれだけは釘を刺して、長壁さんのスマホの画面を覗かせてもらう。
前と同じように通知がひっきりなしに来ていた。
【つーかニンジャマスター強すぎ】
【ダンテを一蹴とか笑うわ】
【ダンテさん、終わった……終わったよ】
【で、この人、結局誰なんだ?】
≪あの人は私の師匠です≫
【ていうことは、長壁さんがニンジャマスターなんじゃなくて、ニンジャマスターが長壁さんの師匠か】
≪そうです≫
【スゲェ】
【ていうか、どっかにアカウントとか配信チャンネルとか無いの?】
【ブルーカラーって言っていたけど、なんだそれ?】
≪師匠に配信チャンネルは無いです≫
【それは余りにも残酷!】
【どんな人なのか知りたいんだけど】
【長壁さん、師匠を説得してくれ!頼む!】
質問が波のように押し寄せてきて、長壁さんがスマホを操作して質問に答えていく。
「しかし……なんか面倒なことになったな」
一体これからどうなることやら、想像もつかない。
「しかしですね、草ヶ部様の名前が上がれば……
蘭城さんが言う。
「そうかもな」
あまり
ただ、恐らく全員が共通しているのが、それぞれの事情があって命懸けで深層で戦っていること。
そして、そのことを誰にも知られていないってことだ。
俺が知っている限りでも何人かは深層から戻ってこなかった。
そいつらがしたことは、最初から何もなかったように誰も知らないだろう。
殊更に目立ちたいとは思わないが……俺たちがいること、そしてしていることは知ってほしいとは思う。
「そう考えれば悪いことばかりじゃないか」
「とはいえ、草ヶ部様の素晴らしさは私だけが知っていればいいと思いますが」
「あたしは、師匠の凄さをみんなに知ってほしいなーって思うんだけど」
長壁さんが話に入ってきた。
どうやら返信は一応終わったらしい。
「いえ、その必要はありませんわ」
「でも……」
「長壁さん、あなただって困るでしょう、例えば草ヶ部様に弟子入り希望者が殺到したらどうするのですか」
蘭城さんが言って、長壁さんがポンと手を打った
「あ、それはそうか。困るね」
「なので草ヶ部様の素敵さは私たちだけが知っていればいいと思うのです。そうでしょう?」
「確かに……セーラちゃん頭いいね」
「当然です」
蘭城さんと長壁さんが納得したように頷き合うが……なんか俺の事なのに、俺の意思は置き去りにされているような気もするぞ。
◆
1章はここまで。
続きは明日の朝と昼に更新します。
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