第15話 トップ討伐者、あらわる。
上の階に戻って処でもう一度爆音が聞こえた。
爆発音に少し遅れて小さく悲鳴が聞こえる。
「長壁さん!」
蘭城さんが俺より先に駆けだした。
「下がってろ」
一声かけて蘭城さんの前に出る。
この階層にこんな音を出す攻撃をするモンスターは出ないはずだ。
だが何だか知らんが敵対的な何かがいる可能性はある。
ダンジョンの中では何が起きるか分からない。例え低階層であっても。
階段を駆け上がって上の階層に戻る。白く光る通路を走ると、向こうに長壁さんの姿が見えた。
とりあえず無事らしい……と思ったところで、長壁さんが追いかけられたように倒れ込む
同時に周りで爆発が起きた。
◆
一瞬肝が冷えたが……爆発の煙が薄れて長壁さんの姿が見えた。
怯えたように長壁さんが通路の向こうをみる。
「噂のニンジャマスターもこんなもんか?」
もったいぶった声が聞こえて背の高い一人の男が回廊の影から姿をみせた。
銀色の模様を入れた黒のロングコートに銀色のラインを入れた黒髪の男だ。派手派手しい格好だな。
白く光るドロップアイテムの玉を首飾りのようにかけていた。
その後ろから二人、これまた似たような黒コートの男が姿を見せる。
3人組か。
「さあ、立て。このままじゃ評判倒れにも程があるぞ。俺としても弱い者いじめをするのは体裁が悪い……それとも……俺が強すぎるのか?」
芝居がかった口調でそいつが言ってロングコートの裾を大袈裟なしぐさで払った。
「やっぱ、あの映像はフェイクっすわ」
「ニンジャマスターとか言ってもこんなもんでしょ」
後ろの二人がはやし立てるように言う
そいつが右手に持った銃を長壁さんに向けた。
「おい、やめろ」
声をかけるとその男達がこっちを見た。
三人とも蘭城さんと同じく配信用らしいゴーグルをつけている。
その後ろにはそれぞれドローンが飛んでいた。3台持ちとは豪華だな。
「なんだ?お前は?」
「あれは……トップ
そいつがこっちを向いた。かなり若いな。20歳半ばくらいだろうか。
誰かと思ったが蘭城さんが後ろから小声で教えてくれた。
「あんたが誰だか知らないが、俺はヘルハウンドを倒せるという
部外者が口を挟まないで貰いたいな。もちろんセーラもだ」
ダンテとやらが芝居がかった口調で言う
モンスターが現れたとかじゃなくてこいつが攻撃してたのか。
危険なダンジョンの中で人間同士でバトルするなんて俺の感覚からすると理解不能だが。
「さあ、ニンジャマスター。俺と勝負しろ。皆がお前のことを見ているぞ」
ダンテが長壁さんを見下ろして言う。
トップ
チルタを使いこなしたなら兎も角、今の長壁さんでは勝てないな。
「そいつは俺の弟子だ。何か言いたければ俺に言え」
「え?師匠……あの」
長壁さんが戸惑ったように俺の方を見た。
「何度も言わせるなよ。俺が用があるのはヘルハウンドを倒せる
「ヘルハウンドを倒したのは俺だ」
そういうとダンテがこっちを見て納得したようにうなづいた。
「ほう、あんたがそうなのか。
確かにこいつではあまりにも歯ごたえが無さそうと思ったんだよ、ていうか強者の雰囲気が無い」
ダンテが言って俺の方を見た。
「だがあんたも冴えねぇオッサンだな、ニンジャマスターって面かよ。刀三本も持ってやがるからセーラの荷物持ちかと思ったぜ」
「貴方!草……この方への侮辱は許しませんよ!」
蘭城さんが鋭い口調で言って、ダンテが剣幕に押されたように少し下がった。
「一体どういう関係なんだぁ?まあどうでもいいか。
あんたがヘルハウンドを倒せる
そう言ってダンテが手に持った銃で顔を隠すような仕草をした後に一振りしてポーズをとる。
よく見ると鋭い目つきに整った顔立ちで中々のハンサムさんだ。
多分こいつとしてはここで俺に驚いてほしいんだろうが
……生憎とついさっきまで知らなかったから驚きようがない。
「……おい、お前、俺のことを知らないのか、まさかとは思うが」
多分期待した反応が無いのに困ったのか、ダンテが戸惑ったような表情を浮かべた。
「生憎だが知らない、すまないな」
「信じられん、ダンジョンに関わる人間で俺のことを知らない奴がいるなんてな。世界はまだ広いぜ」
芝居がかった口調で言ってダンテがゴーグルの耳の方に触れた。
「おい、お前。あの動画はデタラメだろ?」
ダンテが言うが……いきなり口調が変わって、なんか絡むような感じになった。
◆
続きは明日の朝と昼に3連投で更新します。
面白いと思っていただけましたら、ブックマークや、♡、下の【☆☆☆☆☆】から☆のポイント評価をしてくださると創作の励みになります。
感想とか頂けるととても喜びます。
応援よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます