第24話 レッドドラゴンとの再戦
目の前に現れた三つ首の犬、バーゲストの喉を小鴉丸が切り裂いた。
戻ってきた小鴉丸を鞘に納める。赤黒いドロップアイテムが残るがそれは無視する。
今は20階だからこの辺りから手ごわいモンスターも増えてくる。
周囲の色は藍色から深い紫色のようになってきていた。
「障害になりそうな敵は倒しておく。深層では退路の確保は大事だ」
イヤホンマイクに向かって話すが、聞こえているのかは分からん
後ろを振り返ると、ドローンが付いてきていた。
ふわふわした動きでついてくるのが、なんかの小鳥とか子犬のようでなんか可愛らしい。
ダンジョン内では一人だからこんなのでも相棒がいるようでいいかもしれない。
「ドロップアイテムは回収しない。
置いておくと帰りの道標になるのもあるが、モンスターが近づいてこない。理由は分からないから聞かないでくれ」
ドロップアイテムは放置しておくと形を失って消える。
そしてドロップアイテムの周りにはなぜかモンスターが近寄ってこない。
理由は分からんが、自分たちを殺すことができる何かがいる、と警戒しているんだろうと俺は解釈している。
深層に出てくるモンスターは強い。
目標の敵と戦って消耗した帰り道で戦うくらいなら、先に倒しておく方がペース配分がしやすい。
それに一仕事終えた帰り道で戦うのは疲れる。
理想的にはレッドドラゴンを倒してそのまま逃げ切れるのがいい。
回廊を走り続けて階段を駆け下りる。
これで25階を超えた。
階層が深くなると通路が広く、天井が高くなるが、青色は濃くなってきて暗闇の様に圧迫感も強くなる。
「そろそろ出てきそうだな」
マイクに言ったところで、通路の向こうから地響きのような足音とうなり声が聞こえてきた。
走る足を緩めて角から向こうを見てみる。
レッドドラゴンだ。前にやった時よりは小型だが……さすがに5メートルを超える姿を見ると気が引き締まる。
巨大な爪と牙や焔のブレスは一撃食らっただけで死ねるし、赤い鱗に覆われた巨体はそれだけで威圧感がある。
何度も戦って倒してきたが、それでも侮れない相手であることには変わりない。
角からの距離は20メートルほど。この距離は焔のブレスの距離だ。
天都を抜いて焔に備える。さて、どう戦うか。
『草ヶ部、どうせなら派手にやろう』
天目の声が頭の中に響いた。
「なんでだ?いつも通りでいいだろ」
『今はその……なんじゃ蜻蛉のようなどろーんとやらであの娘どもにみられているのであろう?如何なる仕組みかは妾には見当もつかんが』
「まあな」
『お主はあの者らの師であろうが。ならば力を示しておけ。その方が良い』
「そういうもんか?」
『上の立つ者にとっては強さは威厳になる』
『それに草ヶ部、あんたはあたしたちの主だろ。いいところを見せてほしいのさ』
面倒なこったな。敵は最短距離で殺せばいいだけだと思うんだが。
こっちに気づいたのか、レッドドラゴンが地響きのような足音を立ててこっちに向かって来た。
そのまま首を大きく振り上げて焔を吐く動作をする。
普通ならここで避ければいいだけだが……そこまで言うならそれに従うか。
「
『任せよ』
吐き出された焔が目の前でガラスの壁にでもぶち当たったように逸れた。
神楽鎚の焔を操る能力は単に刀身から火を放つとかそれだけじゃなくて、こんな風に焔を操ることもできる。
何度かあったし能力は信用しているが、目の前で渦を巻く焔は気分的には心臓に悪い。
天都を横凪ぎに振りぬくと、風が渦を巻いて風の刃が足を切り裂いた。
レッドドラゴンが地面に倒れ伏す。レッドドラゴンが怒りの咆哮を上げて、長い首をもたげた。
口の中に赤い炎がちらつく。
『主様!拙者にも活躍の場を!』
「分かったよ」
小鳥丸を上に放り上げると、高々と飛び上がった小太刀がドラゴンの蜥蜴のような口に突き刺さって地面に釘付けにした。
これでほぼ終わりだな。
風で空中に飛び上がって、レッドドラゴンの首を狙う。
「こんなもんでいいか?」
『まあ良いだろ』
『あまりあっさり片付けるのも良くはないが、手間取るのも威厳に関わるからのう。塩梅が大事じゃぞ』
「はいはい」
『ただし、強いだけでは意味をなさぬ。
あの二人の師となるならば、心せよ。誰かを教え導き誰かのためになる者だからこそ強さは価値がある。それをせぬものは恐れられるだけじゃ』
「分かったよ」
天津を振りぬくと風の斬撃が飛んで、風が地面に縫い留められたレッドドラゴンの首を切り落とした。
◆
その頃、地上にて。
「レッドドラゴンってこんな簡単に倒せる相手でしょうか?」
「ていうか、見たこともないからわかんない」
「炎が曲がったんだけど」
「あれが剣の能力なんでしょうか」
「本当にすごいね……師匠。想像以上過ぎて意味わかんない」
「さすが草ヶ部様ですわ!早くお嫁に入りたいです」
◆
続きは明日の朝と昼に更新します。
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