第23話 再び八王子ダンジョン

 あのあと小津枝に連絡を取って、早速次の日の朝からダンジョンに潜ることになった。

 詳しいことは分からないが、恐らく一刻を争う状態なんだろう……余程の急病か、それとも事故かなにかか。 

 それを聞いても今は意味がない。

 

 そんなわけで、八王子ダンジョンに来た。

 今日は平日の午前中だから結構車どおりも多いし人通りも多い。

 一方で、一番大きい入口の周りもさすがに今日は人影がまばらだった。


 とはいえ、長壁さん達は色んな意味で知名度が上がってしまっている。

 騒ぎを起こさないように前と同じく、かなり離れた入り口から入ることにした。

 

 それに、どうも長壁さんとかじゃなくて俺のことを探っている奴もいる、と蘭城さんが教えてくれた。

 ニンジャマスターの正体を探れってことらしい。こんなオッサンの事を知っても面白くないと思うんだが。

 

 しかし、八王子ダンジョンは人気の配信スポットらしいが、その深層にレッドドラゴンがいるなんて誰も思いもしないだろうな。

 

 前と同じ公園は今日も誰もおらず閑散としていた。

 今回はレッドドラゴンが相手だから完全武装で行く。装備は今日も木林が車で運んでくれた。


 ニンジャ風なんていわれた防刃防火の装備を着て、背中には天都、腰の後ろに神楽鎚かぐつちを差す。

 脇のホルスターには小鴉丸。


 走るのに邪魔にならないように、且ついつでも抜けるようにするとこの組み合わせがベストだ。

 袖や裾がひらひらして邪魔にならないように組みひもとベルトできちんと止めて準備は整った。


「あの、草ヶ部樣……このような状況でお願いするのは心苦しいのですが」

「師匠、ドローンを連れて行ってもらえませんか?」

「一応言っておくが、配信はする気はないぞ」


 なんかもう色々と目立ってしまってる気がするが、これ以上目立つ気は無い……というか、必要以上に目立つ気は無い。


「それは分かっています。ですが、ダンジョンの深層は普通の人にはまず到達できない場所です。貴重な記録になると思います」

「師匠、あくまで録画映像ですから見るのは私達だけです。ぜひ師匠の戦いを見せてください。すべてが勉強になります」


 二人が言う。

 まあそういうことなら問題ないか。それに前の話を聞く限り、俺ができるということを見せるのはこの二人の成長に効果があるっぽい。


「まあそうことなら構わない」

「ありがとうございます、師匠!」

「あの……できればどういう風に考えておられるか話して頂けると……そう、実況のようにですね」


 蘭城さんが言うが……実況とはいったい何なのか。


「努力はするよ」


 話をしながら走るとか、そんなこと考えながら戦ったことは一度もないんだがな。

 蘭城さんが渡してくれたイヤホンマイクみたいなのをつけて、ドローンの端末をベルトに挟む。

 ドローンがふわりと浮いて俺の後ろに陣取るように静止した。


「映ってるのか?」

「はい、問題ありません」


 蘭城さんがタブレットを操作して頷いた。

 

「草ヶ部様……お力になれなくて申し訳ありませんが……」

「師匠、どうか気を付けて」


「ああ、ありがとう。行ってくる」


 二人が心配そうに言って頭を下げた。

 こんな風に言われて誰かに見送られてダンジョンに入ることがあるなんてな。



 続きは昼に更新します。


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