第23話 再会

「ところで草ヶ部様、このドロップアイテムは何に使うかご存知でしょうか?」


 蘭城さんがソードフィッシュのドロップアイテムを手にしたまま聞いてくる。

 

「さあな……」


 今までは小津枝に言われるがままにドロップアイテムを集めて、引き渡していただけだったから、これがどう使われているかはさっぱり分からない。

 まさか削って飲んだりしているなんてことはないだろう。

 何らかの加工を加えていることは確かだ……どうやっているのかは知らないが。


「師匠、採掘者ブルーカラーと言う職業の方がダンジョンの深層から取ってきていたのもドロップアイテムなんですよね」

「ああ、そうだ。一番最近戦ったのはレッドドラゴンだが……あいつは」


「ちょっとお待ちください……ドラゴン?」

「あの……師匠、まるでジャイアントリザードと戦うような調子で言われましても……」


 二人が口をそろえていうが……戦っていたものは居たんだからしょうがない。


「というかダンジョンにはドラゴンが居るんですね」

「八王子の25階層より下に出てくる」

「八王子の地下にそんなのが……」


 ちょっと怯えたように長壁さんが言って、地面の下を見るように視線を下に向けた。

 ダンジョンは厳密に言えば地下にあるというより異空間にあるっぽいから、この下にモンスターがいるわけではないんだが。

 とはいえ、言われてみれば恐ろしい話かもしれない。


「レッドドラゴンのドロップアイテム……火竜の火種は生命力の塊でいろんな病気に効く薬が生成されるんだそうだ」


 俺達採掘者ブルーカラーは基本的には依頼主に言われて深層に潜り要求されたものを獲ってくる。

 依頼主は小津枝のような連中だ。


 そして彼らはその獲ってきたものを加工して金に換えている……この辺のことは俺は詳しくは知らない。

 採掘者ブルーカラーのことを知らない人がほとんどだろうが、俺は俺で小津枝が何をやっていたのかは分からない……世間というのはそういうものかもな


 小津枝は蘭城さんから俺の借金を返済してもらって、その後どうなったのかは分からない。


「逆に討伐者アタッカーとか言う連中はなにに使ってるんだ?」

「大抵は倒した敵の証明です。倒した相手が強ければ美しいと言われていますので」


 長壁さんが紅茶を飲みながら教えてくれた。

 文字通りの戦利品なわけか。


「では、これも何かに加工できるのでしょうか?」

「さあ……考えたことも無かった」


 言われてみれば可能性はあるんだろうが……採掘者ブルーカラーの仕事は戦うことであって、そのドロップアイテムがどうなるかまでは知らない。

 それこそ小津枝とかなら知っているかもしれないが。



 その日も木林が家まで送り届けてくれた。

 車から降りたら蘭城さんが当然という顔で着いてくる。


「一々送ってくれなくてもいいんだがな」

「いえ、草ヶ部様とは少しでも長くご一緒したいので……あの、ご迷惑でしょうか?」


「迷惑ってわけじゃないが」


 吹きさらしの古びた階段を上りつつ応える。

 女の子に家の前まで送ってもらう年上のオッサンと言うのはなんとなく気まずい構図だ。

 

「ではお供させてください。それにまだ祝福のハグを頂いておりませんわ」


 そう言って蘭城さんがついてくる。

 こだわるな。


「ですが、やはり一番良いのは我が家にお越しいただけることですわ。そうすれはいつでもお傍で恩返しができます。考えて下さいましたでしょうか?」

「それは……保留にさせてくれ」


 蘭城さんの父親の話を聞く限り、なんかそうなると人生にレールが敷かれそうな感がある。

 借金生活のレールよりはマシだろうが。


 そんな話をしているうちに俺の部屋の前についた。

 蘭城さんが俺の部屋の飾り気のない鉄のドアを横目で見る。


「それでは、私が草ヶ部様のお部屋に引っ越すというのは如何でしょうか?」

「……狭い部屋だから無理だ」

「狭ければいつでもお傍におれますわ。何の問題もありません」

「まあ、その話はまた今度にしよう」


 そういうと蘭城さんが不満げに頬を膨らませて大きく手を広げた。

 

「では、ハグを。草ヶ部様」


 こればかりは誤魔化せないらしい。

 仕方ないか……こっちも手を広げて蘭城さんに近づいたところで、後ろの方、というか廊下の奥から足音がした。

 薄暗くて気付かなかったが誰かいる。 


「誰だ?」


 声をかけると廊下の暗闇から黒い人影が姿を現した。

 誰かと思ったが……小津枝だ

 


 続きは夕方に更新します。


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