第21話 弟子の成長・上

 蘭城氏との面会が終わって、その後は二人の稽古をつけていた。

 2週間ほど、一日おきくらいにダンジョンに入って、モンスターと戦うのを見守ったり、戦い方のアドバイスをしたりと言う感じだ。


 二人とも筋はいいんだが……素の身体能力は長壁さんの方が上っぽい。

 カンが良くて自分の体を上手く操れている気がする。


 能力の高さでは断然蘭城さんだろう。射程が長い攻撃と防御を持っているのは強い。

 なんだかんだで防御能力は生存能力を高めてくれる。


 それに、回復魔法とか便利なものがあればいいが、そんなものは無いわけで。

 となると、せこいと言われようが何だろうが、敵の攻撃が届かない遠間から安全に削り殺せるならそれに越したことはない。

 間合いの長さは正義だ。


 そんな練習がしばらく続いたあと、蘭城さん達から音沙汰が無かったが、5日目に突然八王子に呼び出された。

 

 指定された場所は駅近くのカフェだ。

 ここは蘭城さんのお気に入りらしく、何度か使ったことがある。

 程々に広い店内は黒の木をたくさん使った落ち着いた雰囲気だ。天井からはこれまた古めかしいランプが釣り下がっている。


 店内の隅のソファシートには既に二人がいた。蘭城さんは袴姿、長壁さんはジャージ姿で、ダンジョンに潜る時の格好だ。

 こっちを見た二人が嬉しそうに笑いながら手招きする。いいことがあったらしい。


「見てください師匠!」

「私達二人でソードフィッシュを倒せましたわ」


「ソードフィッシュ?」


「ついさっきです」

「15階層にいるのが分かっていたので……二人で倒しに行ったんです」

「これを見てください」


 そう言って、蘭城さんが大きめのタブレットを出してくれた。



 画面に二人の背中が映った。ドローン視点だからこうなるんだろう。

 配信なるものは少し見たが、大体はこんな感じだ。


 半身に立って盾を持った蘭城さんが半歩前に立って、その斜め後ろあたりに長壁さんが氷の舞ウプンリムセを構えている。

 二人の向こうにはソードフィッシュの巨体があった。


 空中を泳ぐように体を左右に揺らしながらこちらに視線を向けてきている。

 本当にソードフィッシュと戦ったのか。

 

「護りなさい!」


 盾が白い光を放った。同時に突進してきたソードフィッシュが盾に衝突する。

 盾から作り出された壁が白い光を放ってソードフィッシュが弾き飛ばされた。


「行くね!」

「気を付けて!」


 忍者風の衣装に身を包んだ長壁さんが飛び出して氷の舞ウプンリムセを振る。

 白い吹雪の塊が次々と吹き付けるが、ソードフィッシュが巨体を揺らめかせて躱した。


「下がって!」

「了解!」


 長壁さんが蘭城さんの声に応えてバックステップした。

 それを追いかけるようにソードフィッシュがまた突進してくるが、その突進はまた蘭城さんの壁にぶち当たって止められた。

 またソードフィッシュが吹き飛ぶ。


 当たりどころが悪かったのか、弾き飛ばされたソードフィッシュが頭を振るような仕草をして動きが止まった。


「今です!」 

「頼むね!チルタ!」


 もう一度踏み込んだ長壁さんが放った白い吹雪が空中のソードフィッシュに吹き付けてそのまま壁に縫い留めた。

 ソードフィッシュが身じろぎして氷がぱらぱらと落ちる


「セラちゃん!」 

「止め!」


 ソードフィッシュが氷から脱出するより早く、蘭城さんの剣から白い光が飛ぶ。

 白い光が壁に縫い留められたソードフィッシュを両断した。


 うすぼんやり光るダンジョンの壁にソードフィッシュのどす黒い血が張り付いた。

 ソードフィッシュが口をパクパクさせて地面に転がって、体が消えていく。

 あとにはドロップアイテムが残っていた。 

  


 続きは明日の朝と昼に更新します。


 面白いと思っていただけましたら、ブックマークや、♡、下の【☆☆☆☆☆】からポイント評価をしてくださると創作の励みになります。


 感想とか頂けるととても喜びます。


 応援よろしくお願いします。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る