第10話 腕前のお披露目
とりあえず顔合わせ的なことも終わったので10階層まで降りた。
あいかわらず青い光を放つ六角形の鱗のようなものでおおわれた無機質な回廊が続いている。
このくらいの階層だと青色と言うか藍色に近い色合いで、そのせいもあって少し薄暗い感じになる。
「ここまで来るとさすがに怖いね」
「私は15階まで行きましたけど」
長壁さんが周りを見回して不安げに言って、蘭城さんがなんか勝ち誇ったような口調で応じた。
「あたしは6階層が限界」
「まあ……自力では私も同じくらいですわ」
二人が今一つ緊張感のない感じで言葉を交わし合っているが。
「一応言っておくが、万が一俺がやられたら即逃げろ。俺を助けようとか思うな」
「何を言っておられるのですか、草ヶ部様」
「師匠!そんな!」
「どんなときにも何が起きるかは分からないってことだ。心構えはしておいてくれ。ここは遊園地じゃない」
さすがにこの階層に現れるモンスターに不覚を取ることはないとは思うが。
そんなやりとりをしているうちに広い回廊の向こうから気配がした。
二人もそれを感じたのか立ち止まる。
回廊の角を曲がって、匂いを嗅ぐように地面に鼻を近づけた姿勢で、黒い毛の4メートルほどの狼とか犬のような形のモンスターが姿を現した。
ヘルハウンドと呼ばれるモンスターだな
ごくたまに火を噴く奴が居るが、もう少し深い場所でなら兎も角、ここには出てこないだろう
ヘルハウンドがこっちを認識して顔を上げた。
牙をむき出して威嚇するような仕草をする。
「じゃあ二人とも下がっててくれ……
呼びかけて柄に手を掛ける。抜こうとしたが……鞘から抜けない
「おい」
『妾をあのような小物を切るのに使うつもりか。あの程度の妖、鴉にでもやらせておくがいい』
そっけない声が頭の中に響いた。
……この野郎。意思を持つ武器は強力だが自己主張が強いのが難点だ。
「鴉、頼む」
『拙者にお任せ!』
小鴉丸を抜いてヘルハウンドに向かって投げる。
空中を飛んだ刀がイメージ通りに曲がってヘルハウンドの前足をかいくぐって喉を切り裂いた。
よろめいたところで心臓に突き刺さる。
血をまきちらしてヘルハウンドが倒れた。
「戻れ、鴉」
『はいはーい!拙者は頼りになるでしょ?』
小烏丸が自慢するようにくるくると回転して、空中を飛んで手元に戻ってきた。
一応まだ生きている可能性もあるから警戒はするが……ヘルハウンドの体が崩れて行って後には灰色の宝石のようなドロップアイテムが残った。
倒したか。刀身を懐紙で拭いて鞘に戻す。
「まあこんなところだ」
配信者なる連中は戦闘を面白おかしく配信している。
ただ俺達
「秒殺……?」
「ヘルハウンドってこんな簡単に倒せる相手だっけ?」
「違うと思います」
「見たことある?」
「
長壁さんと蘭城さんが小さく言葉を交わし合っていた。
この程度の苦戦しているようでは深層で
長壁さんが姿勢を正して一礼した。
「師匠!改めてよろしくお願いします!」
◆
続きは明日の朝と昼に更新します。
面白いと思っていただけましたら、ブックマークや、下の【☆☆☆☆☆】からポイント評価をしてくださると創作の励みになります。
感想とか頂けるととても喜びます。
応援よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます