第7話 SNSでの出来事(長壁コウSIDE)
配信者なんてことをやっていれば勿論、一大バズをひきおこして、一躍
でもある日起きてスマホをみたら通知が999+になっている、なんて体験をしたらどうなるか。
想像の中なら、やった!ついに私の時代が来たわ!乗るしかない、このビッグウェーブに……って喜ぶんだけど、リアルに起こると思考が停止して背筋が凍って、その後は頭がパニックになる。
慌ててSNSを開けると、動画配信用のDチャンネルアプリと短文投稿SNSのウィスパーに通知が殺到していた。
「何よこれ……」
慌てて開けてみる。アプリが立ち上がるまでの数秒がもどかしい。
八王子に行った時のポストに大量のファボとリプがついていた。フォロワーも昨日は128人だったのが10951人になっている……と思ったら11000人を超えた。
【聖地訪問!】
【記念に来ました】
【ニンジャマスターかっこよ】
【次は自分で配信してくれ】
【ついにニンジャマスターがベールを脱ぐのか】
【楽しみにしてます!】
【でもなんで自前で配信しないの、あんなに強いのに】
【闇に紛れるのがニンジャなんやろ】
【次回はトップの写真の姿で配信を!】
【太ももがえっっろ!】
【ファンになりました!】
【応援してます!】
【格好良かったぞ】
……何のことだかさっぱり分からない。炎上ではないらしいのだけはほっとした。
取り急ぎSNSで検索をかけると、動画が引っ掛かった。
どうやら配信者が中階層に転移の門で飛ばされて、事故配信寸前になったところを誰かが割って入って助けたらしい。
ていうかセーラって和風お嬢様の美少女配信者で最近有名な子だ。
そしてそれを助けたのが私と誤解されている。
動画を見る限り、その人はニンジャのような頭巾と黒装束を着ていた。
ちょっとでも個性を出そうかと思って忍者コスプレで配信したときは少しだけ視聴者が増えたから、その時の写真をトップに貼ってある。
でもその時のコスプレはいわゆるゲームで出てくるようなミニスカにニーソックスのくノ一風で、あれとは似ても似つかない
声も頭巾越しでくぐもっていて分からないけど……あたしの名前である長壁コウに聞こえなくもない。
私は背が高いから似ていないとは言えないけど、それでも
「どう見ても人違いなんですけど!」
叫んでは見たけど、口に出してもSNSに書き込まれるわけじゃない。
「人違いです。私じゃないです」
慌ててポストしてみたら、1分もしないうちにリプが殺到した。
【うわ、謙遜とか】
【奥ゆかしい日本の美徳】
【正体がバレたくない理由とかあるんですか】
【でももう遅い】
【ニンジャは正体を明かさぬが倣いでござる】
【人助けしてバレたならいいじゃないですか】
【きっと首領も赦して下さる】
【俺が許す】
【私も赦す】
そのあともズラズラとリプが流れていく。
これって、もう違いますとか言える空気じゃない。
【お前超々有名人やん】
【ていうか、能ある鷹は爪を隠していたのか】
【こんなに強いなら先いってくれ】
【イヤミか貴様っッ!】
友達からもメッセージが次々と来ている。
これはマズイ。この誤解は明らかにマズイ。
あたしはバトル志向の配信者のつもりだけど……ソードフィッシュを倒せるなんて無理だし、そもそもニンジャでもない。
まずはこの本物に会わないと……と言っても誰だかさっぱり分からない。
ただ、配信者セーラのことは知っている。彼女が唯一の手掛かりだ。それと八王子ダンジョン。
着替えてスマホと財布を鞄に入れて外に飛び出すと、明るい日差しと、日差しとは裏腹の新春の空気が肌に触れた。
階段を駆け下りつつ考える。
さっきの動画をちょっと見てもとんでもなく強いことくらいは分かった。
あたしだってこんな動画を見たら、同じようにその誰かのSNSに書き込みに行っちゃうかもしれない。
でも、この人のことの噂も聞いたことないし、勿論配信チャンネルなんてものもないはずだ。
だから今、こんなことなっているんだろうけど。
カバンの中でひっきりなしにスマホが震えているのが分かる。
通知が山ほど来ているんだろう……ていうか、この人誰なの?
でも、ふと思った。
これはもしかしたら……師匠との運命の出会いなのかもしれない。
◆
続きは昼に更新します。
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