第7話 ゼッケン◯番〜
私がここを離れている間にリアちゃんは高校を卒業して自然な流れで『心霊相談』を始めていた。
リアちゃんのママが居酒屋を始める前、最初に経営していた古いbarが壊されずにそのまま残っていて、その店舗を利用している。
barの照明灯の看板にマジックで『相談所』とだけ雑に上書きした跡が数年で雨風に晒されて劣化した状態なので元々のbarの名前『ザボン』が勝ち残っていた。
それは宣伝しなくても相談者は動画きっかけで知ったリアちゃんを探してやってくるらしいので看板はあってもなくても影響はないということを物語っていた。
自然な成り行きで形になっていくものに宣伝は要らないのだろうな。
信頼が人を繋げるものだから。
地元は変な人間ばかりだけど、リアちゃんと私はもっと変だったかもしれない。
周りの人には子供時代の私達ってフラフラとあてもなく、ただ歩いていただけのように見えてたかも。
「製材屋の倉庫前」
「夫婦心中」
「貸し車庫の3番目」
「若い独身男性の首吊り」
「消防士さんの新築の家の後ろの林」
「県外の女性の服毒」
「それって腐乱してなかった?」
「臭いで発覚したからそうだと思う」
歩きながら、していた会話。
私達の住む街は自殺者が多い…
〝死〟は〝終わり〟ではなく1つの過程だと知れば堪えられる人がいたかも。
リアちゃんのママの情報網のおかげでそういう現場巡りをしながら学んできた。
なぜ私達はそんなことをしていたのだろうね、リアちゃん。
自殺が多い街、なんてあるの?
どうかしていると思う。
とても不自然だよね。
中には本当の自殺じゃない人もいるって誰か思わないのかな?
そんな場所には性への執着が強い人達は忌み嫌い近づいて来なかった。
そう、『生』ではなくて『性』
この街は、性欲に醜く執着する人間がとても多い。
温泉以外には何もない土地に出来る観光という名目の奥には性産業が次々出現して同じ思考の客達が寄ってくる。
死んだらもう快楽に溺れることが出来ないから人は長生きに執着するのだろうか?
世の中には他にもたくさんの好奇心や欲を満たすものが溢れるほどあって自由に選べるというのに、ここの住人達の多くが色欲に激しく取り憑かれて、それゆえのトラブルが絶えない。
でも外に働きに出て初めて知ったことがある。
自分の街で良識的な教養人と思われる人は外では多数の一般人だった。
その反面、やっぱりどんなに素敵な場所でも精神が歪んだ人間は存在したが…。
逃げたままでも良かったのに、それでも私はここに帰ってきた。
それはリアちゃんがここにいるから、というのが一番の理由だろう。
そのリアちゃんの『付き合って』は、その場限りのことではなかった。
「ね?おねえさんがお仕事を続けていけるようには配慮するから〜」
このお願いモードに私が抵抗出来たことは子供の頃から1度もなかった。
「そうだね、仕事の調整はいいんだけど…私で大丈夫なの?」
「うん、多分これからまた忙しくなりそうだから〜」
「忙しい時期とかあるんだ?」
「ううん、おねえさんが見えるおかげでさらに評判になるでしょ、今日の件で」
何か企むようなイタズラっぽい視線が怪しく光った。
「お婆さんが霊界から私を通じて一緒に活躍するとか?」
思わずドラックストアの店員さんみたいな、少し飛躍した想像をしてしまった。
「おねえさんは面白いこと言うね〜でもお婆さんの霊は何もしてくれないと思うよ、あれはポピュラーな残留思念だと思う、だから生きているおばさんの方が今日のことを話して噂を広めると思うんだ、とってもお喋りが好きそうだったでしょ?」
『生きているおばさん』ていうのも独特だけどリアちゃんのそういう発想は…
「呆れた、何それ」心の中の声の最後の方が、ポロッと口から出ていた。
「だってね、そうやって口コミが信頼度を高くするんだよ、ただね〜正確に広まれば良いけどね」
それにしても、と改めて思う。
久しぶりに見た。
ここに、リアちゃんの元に、帰ってきたせいかな?
あの水撒きしていたお婆さんが幽霊?
午前中の明るい青空の下にいた人が?
顔だって、しっかりと見えていた。
リアちゃんを見るなり表情を変えていた。
険しいような…あれ?
驚いたような…え?
迷惑そうな…ううん、違う!
思い出そうとすると、あやふやになる。
あんなにハッキリと見たのに、まだちゃんと覚えているつもりなのに…。
姿や動作はしっかり浮かぶけど顔の表情だけが思い出そうとすると、どんどん曖昧になる。
でも、顔の表情は思い出せないのに感情の機微が自分のことのように伝わってくる。
午前中のことだったのに、この曖昧でチグハグな記憶ってなに?
「そーれーと〜紹介しておきたいのが一応いるから」
言われるまま、久しぶりにリアちゃんの家に向かった。
リアちゃんの『相談所』になった店舗の方に直接行ったので、ちょっと安堵した。
家の中のママのサロン、私は苦手だから。
「緑〜」
…緑?
リアちゃんのひと声で男の子がカウンターから顔を出した。
髪の色が緑色だけど、リアちゃんが私に会いに来た時に一緒にいた『青』と呼ばれていた美少年だった。
『青』が『緑』に?
「この子は記録係兼電話番兼憑き物担当の緑です」
パキン
「よろしく!おねえさん」
「だから、あんたが気安くおねえさんゆうな!」
プチパチッ
「良いじゃん!」
「だったら少しはまともになってよ」
「それは仕方ないでしょ、俺って中身空っぽなんだから」
ピシッ
リアちゃんと『緑』君とお節介さんの会話に口を挟むタイミングがないので側で黙って聞いている。
「誰か来た?連絡とかは?」
「今日は今のところ大丈夫だよ」
古いbarはリフォームとか何もしてなくて案内もないから開いていると喫茶店に見える…照明が暗めで怪しげだが。
外見は元飲食店の空き店舗、ドアは常に開いていて出入り自由。
相談者はちゃんとここまで辿り着いて来るらしいけど、ほとんどの場合は電話で受けてリアちゃんが出向くようにしているらしい。
相談者達は人の数だけ様々な内容の話を持ち込んでくるという。
案外、リアちゃんの普通の感じが気軽に相談しやすいということだろうか。
心霊相談なんて、コーヒー飲みながら談笑するイメージじゃないからね。
きっとリアちゃんと『緑』君には人を惹き寄せるものがあるのだろう。
午後になって私の車にリアちゃんを乗せて地元のスキー場に向かった。
「まだ他にも行きたい所があるから付き合って」
『付き合って』という呪文使いで有無を言わせず私を引っ張り回すつもりみたい。
面白そうだからいいけど…
途中で廃墟のモーテルを通り過ぎる。
リアちゃんと『緑』君のデビュー舞台となった心霊スポットだ。
「ここから始まったとは思っていないんだよね、わたしはおねえさんとの出会いから始まっていたから」
リアちゃんは独り言のように呟くとモーテルから目を逸らした。
「私、最近もまた動画を観たよ」
「あれねー、誤解なんだよね、わたしにそんな霊能力なんてないもん」
「人の話ではリアちゃんはお祓いが出来るって」
「それは困るなぁ、でもここのおかげで心霊スポットの仕組みが少し理解出来たんだけどね」
「仕組み?」
「説明したいけど霊というのがそもそもわたしにはまだわからないことが多いから確証が全然ない、だから語れる術もないの」
「でも興味あるなぁ〜私はね、死んだ後の魂がどうなるのかすごく知りたい」
リアちゃんは何も返さずにちょっとだけ微笑んだ。
スキー場の入り口に着く。
そこは偶然にも高校3年の冬にバイトで来た場所だった。
カプセルリフトの乗り口の横に立つとリアちゃんは眩しそうに青空を背負った山の頂上を仰ぎ見てから「ここからあそこまで歩きだよ」カプセルリフトの終点よりもっと上の山の左斜面を指した。
「まさか上級コースまで?」
「そこまでは行かない」
まだ3月だけどゲレンデは上の方に少し雪が残っているだけで土がむき出しで草が生え始めている。
リアちゃんが見上げている方面を見て不安になった。
…あそこにも行くのかな?
冷たい雪解け水で出来た小川に小さなクレソンが大量に自生していた。
「今年は少雪で営業も早く終わっちゃった、だからもう誰もいない…」
「あ!」と思い出したようにリアちゃんは慌てて話を続ける。
「ここは元々頼まれているところでちゃんと許可もらってあるから安心して」
黙って入ることに敏感になっているみたいで、つい午前中のことを思い出して笑うとリアちゃんも遅れて笑った。
「…お婆さんは本当に苦手なんだよね、わたし」
リアちゃんは『老婆』関連のダメージを引きずりやすいようだ。
長いロープのカプセルリフトに沿って軽い山登りの気分でしばらく行くと『林道コース』の看板の前でピタッと止まった。
不意に何かを思い出したみたいだ。
「最初に来た時はリフトが動いてて、丁度ここで止まってしまったの」
上を指して「宙ぶらりんだったよ」と笑った。
「急に止まったから揺れて怖かったし、霧ガスがかかってきて視界は雪景色の中で周囲がもっと真っ白な状態、景色は雲の中みたいだった」
「何かの故障とか停電?」
リフトが止まるなんて、よくあることなのかな?
「後で聞いたら原因不明だった」
「原因不明で止まるって?安全性を考えると怖いね」
「…わたしが乗ったから?なんてね」
「霊障?」
「そうかも、でももっと怖かったのは止まっている間ずっと幻聴がしてたこと」
リアちゃんの話を聞いている時、気のせいか林道の木々の間に煙のような白い影がスーッと何度か通り抜けて消えた。
その奥には…いや、考えないようにしよう。
私のここでの体験は霊障とは無関係だから。
「リフトは朝1番の点検終わりで従業員さん達が乗って仕事の持ち場へ移動する営業前の時間だったからお客さんは1人もいないのに聞こえてきたのはスキー大会の歓声とアナウンスだったの」
「まだ誰もいないゲレンデでスキー大会?」
思い出した。
このスキー場は県内の小中学校の大会場所になっていて毎年シーズン中は数回のイベントがある。
才能ある未来のスキー選手候補には家族親戚総出の応援団が来るので賑やかだ。
学校行事としてもここでの大会は観客動員数が多い。
「ハッキリ聞こえたのは『ゼッケン◯番〜』ってちゃんと音響のエコーがかかっている女性の声とワーッてざわめきと拍手が混じった歓声がして、まるでイベント会場の真ん中で聞いている気分で…でも後で聞いたらリフトが停止してたのは実際は2~30秒で、すぐ動いたみたいできっと揺れてて怖かったから長く感じたんだと思う」
リアちゃんのその体験は依頼されてる心霊現象の調査とは別件のようだった。
私には先入観を与えずに反応を見たいから、ということで現場に着くまでは詳しいことは話してくれない。
今朝の老婆の件で味を占めたようだ。
依頼された場所はまだ先で、歩き疲れたのか、話しているうちに気が変わってしまったのか、リアちゃんは急にコースを変えた。
「もう1箇所気になっている場所があるの、でもこの先冬まで誰もいないからその場所にはまた1人では来るのは嫌だし緑がいても不安だし、でも今日はおねえさんがいて行ける気がしてきたから変更するね」
カプセルリフトが止まった場所近くの林道コースを右に入るとすぐにポツンとレストランが建っている。
スキー場の中のレストラン。
シーズンが終わるとその存在は気配が消えて滅んでいた。
レストランは入り口が大きな二重のガラス戸になっているが中の様子は奥が暗くて見えない。
一見すると2階建てのレストランでも実は3階建てで、1階に見える入り口は2階の部分だった。
山特有の斜めの敷地に建てられているので見た目がややこしい。
出入り口へのアプローチに隠されて冬は見えない1階部分が雪解けで丸見えになっていた。
今は木に囲まれていているだけのその場所は冬になると雪に埋まるので窓がなく周囲は常に湿ったコンクリート壁だから地下室と同じ環境だ。
辺りは静かで私達の足音と息づかいの他には鳥の鳴き声がまだ葉もない細い木々の間に響いて、それが生きている世界と繋がっていると教えてくれる。
だけど見上げても建物の他には枝ばかりで鳴き声の主の姿はどこにも見当たらない。
入り口までは古いウッドデッキでスキー板を置く場所を含めて広いスペースだけど、ここまでの道すがらでも真っ暗な入り口が見えていたせいか、もうそこから足を踏み入れるのが嫌になっていた。
そして、思い出したくもないがそこは私がバイトに来た初日に半日で逃げ出したレストランだった。
数あるバイト経験で、そこだけは辛くて逃げ出した現場だった。
バキン‼︎
建物に近づくと静かな空気を切り裂く鋭い轟音が突然全身に響いて胸を撃った。
鳥の声が一斉に止んで静まり返った。
誰かがいて太い枝でも折ったのか?それともどこか近くに熊がいて大きな枯れ枝を思い切り踏んだのか?
…熊だったら、どうしよう?
聞いたことはないが太い生木を熊が一気に裂いた音かもしれない。
リアちゃんを見ると私の横で一緒に固まっていた。
「嫌だね、こんな警告ラップ音」
ラップ音…?こんな衝撃音が?
誰もいないレストランの入り口に目線を向けてリアちゃんも足を止めたままだった。
爆音のラップ音だったのか…熊じゃなくて良かった。
それにしてもなんて音なんだろう、と改めて建物を見回すと怪しさでは定番の地下室のような1階よりカーテンが引かれたままの3階の窓が気になった。
ずっとは見つめていられずに逆に目を逸らした。
バイトに来た時はこんな風にじっくり観察することはなかったから気がつかなかったが外の離れた場所から見上げただけで、もう得体が知れない危なさが眼球の粘膜に張り付きそうで不穏な空気感が窓から伝わってきた。
〝見てはいけない〟
一瞬でそう思って視線を避けた。
…考えてもいけない。
そういうものが世の中には存在してる。
「来たかったのはこのレストラン?」
「うん、ここは気になって1度来ているの、ちゃんとしたレストランで営業の準備をしていた時に案内してもらったんだ」
3階は狭いのだろうか?窓は小さくて建物の真ん中に1つだけ、見た感じが古そうな布の柄物のカーテンが引かれてて建物がレストランとわかっててもカーテン1つでその雰囲気は崩れていた。
どう見ても誰かの部屋みたいな生活感が漂っていた。
1度見たきりのカーテンの模様は色褪せていてはっきりとはわからなかった。
おそらく私がバイトに来た時よりもずっと前から変わっていないものだと思う。
「この3階って、なんだろう?」
ずっと思っていた違和感をリアちゃんに聞いてみたくなった。
「やっぱりおねえさんも変な感じする?わたしもここに入る前に案内で一緒に来た所長に真っ先に聞いたの、誰か住んでるみたいですね、と」
「うん、私もここの外観はレストランよりも人の家に見える」
「所長がね、ここに働きに来ている人達は通いの地元民で泊まり込みの人にはゲレンデの下に寮があるので2階(3階)は多分休憩室ですね、という答えだったんだけどねー、実際は違っていたよ」
所長は1階を地下として3階を2階と思っていたのだろう。
着任したばかりの所長で詳しいことは知らず予備知識しか持ってなかったようだ。
そうじゃなかったら、リアちゃんへの相談はこの場所こそが本命だったかも。
そして、もしもここが最初からの相談場所だったらリアちゃんはきっと来訪しないで一言で片付けていたかもしれない「解体をおすすめします」と。
ラップ音は1度しか鳴らなかった。
私はそれがなくても建物には近寄りたくない。
なぜそう思ったのか?
初めてこのレストランの中に入った時に真っ先に見た光景を思い出したから。
私がためらっている間にリアちゃんは1人でズカズカとレストランに近づき入り口のドアをガチャガチャ押し引きして「やっぱりここは鍵が掛かっていて入れないね」と言った。
入れなくてホッとする。
「あー残念だな、おねえさんに見てほしかったのに」
「何を?」
「ここの3階の入り口だよ」
「うん」
「こういう所って怪しいのは地下ってイメージあるでしょ、だから入って最初に1階に降りて見たけど暗くて狭いだけの漬け物置き場だった」
あぁ、微かに覚えている。
そこで働いている人達が丹精込めて作っていた漬け物の樽、4つ。
「でも、その場所にいてもわたしは上が気になってザワザワしてたの」
「1階は真っ暗な空間だけでやっぱり何も感じなくて、次に3階に行く階段を見たらそこは階段の上段から全部コンクリートで塞がれていたんだよ、一緒に行った所長も知らなかったみたいで驚いていた」
やっぱり、そこを見たんだねリアちゃんも。
私も真っ先に目に入っていたよ。
3階の部屋入り口が不自然に塗りつぶされた壁になり階段の上が途中から天井に繋がっていた、あの場所を。
外から見た部屋に行ける入り口がどこにもないの。
「依頼はここじゃなくて上級コースの左手側のゲレンデにあるパトロール隊の休憩所で、その2階で昼寝をすると窓がノックされてうるさいんだって、パトロール隊員が休めないと疲れが蓄積するから仕事に支障が出るので祓って欲しいってことで仕方なく2回目は緑を連れて行ったんだけど…」
『緑』君が『憑き物』担当というのは、憑かれやすい体質だからなのね。
リアちゃんは『緑』君を連れて行って取り憑かせて連れて帰る、という荒業を今までしてきたようだ。
なんとなく、ラップ音の扱いを思い出す。
特別な何かをしなくてもリアちゃんが動くだけで霊も移動するのかな。
「でもね、そこには気配も何もないから空振りだったの、なんとなくわかってはいたことなんだけどね」
「でも今日はそこに行くつもりだったんでしょ?」
「そう、おねえさんが一緒なら何か見えるかもしれないって思ったんだよね、でもやっぱりこっちに来たのは正解だったよ」
「正解?」
「わたしみたいなのがここに触れてはいけないってことを教えてくれたから」
「つまり、依頼は断るってことになるの?」
「ここはもう手遅れの禁忌ゾーンかもしれない、祓うとかのレベルじゃない場所ってあってね憑いているものの違いっていうか上手く説明出来ないけどわたしには扱えないモノかも」
「リアちゃんって祓うことは出来なくても憑くのはわかるの?どうやって緑君に憑いたり離れたりするのがわかるの?」
これは動画を観た時からの疑問だった。
祓えないといっても憑いていることがわかるようだったし『緑』君が無事な様子を見ると1度憑いても離れてそこにはいないようだから。
これを知るのは『霊』そのものを理解するのに重要なことの1つだと思う。
「あー、それは気配と、それから匂いだよ」
「匂い?霊に匂いがあるってこと?」
「例えば死にそうな人が匂いでわかることがあるの、そばにお迎えの霊が来ていて、死臭がするっていうでしょ」
いえ、そんなこと初耳です。
そして、そんな気持ち悪い例えを言わないでほしかった。
「でもそれだけじゃないの、その人が好きだった物、生前使っていた整髪料の香りとか?…この間ペパーミントの香りがした時はなんだか急に寂しい気持ちになったし、もしかしたらその人が身につけていたものかな?あとお彼岸は供養する人が多いせいなのか霊が来るとその霊の香りに混じってお線香の匂いもする」
「それはリアちゃんだからわかることじゃない?」
「わたしは、そうじゃないと思っているよ、誰にでもわかるのに気づくかどうかの違いかな?匂いはほんの一瞬って感じだから今度チャンスがあればおねえさんにも教えるね、緑も体験してるから、わたしだけの幻臭じゃない証明にもなる」
「私にも匂いがわかるのかな」
「うん、あいつは四六時中なんか連れて来るからさ、それが離れた時の軌道の近くにいたら絶対わかるよ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます