第25話「エルフ最強戦士との決闘」
「――ほぉ、お前が魔王を倒したとかいう、英雄か? ただの小娘にしか見えんが」
エフティヒアの国王の前へと連れてこられると、早速馬鹿にした態度を取られてしまった。
どんな酷いおじさんかと思っていたら、美青年なのだから嫌になっちゃう。
さすがエルフってところだけど……いったい何歳なんだろ……?
エルフの王ってことだから、二百後半くらい?
でも、ミルクちゃんやクルミちゃんは凄く若いし……。
まぁでも――私のほうが、遥かに年上だね……!
年上をちゃんと敬いなさい……!
と、心の中でおどけてみる。
そうでもしないと、イライラでやばそうだ。
「お姉ちゃん、名乗りませんと……」
考えごとをしていたせいで、隣に立っていたアリシアちゃんに促されてしまった。
ちなみに、ミルクちゃん、クルミちゃんの二人には外で待ってもらっている。
いくらスキルで変装を隠しているとはいっても、さすがに親にはバレてしまうだろうから。
「あっ、そうだね」
私は笑顔でアリシアちゃんへと頷き、国王を見る。
「この度は入国を許可して頂き、ありがとうございます。私は――」
「あぁ、いい、いい。どうせさっさとお帰り願うのだからな」
カッチーン。
それが、魔王を討伐してもらう相手にする態度なの!?
人を馬鹿にするのもいい加減にしなさいよ!?
そう思うものの、国王には笑顔を向ける。
もしかしたら、額には血管が浮かび上がっているかもしれない。
「お父様、さすがにそれは、失礼にあたるかと……」
怒りを我慢していると、国王の隣に座っていた女性が、国王を
髪、瞳共に純白で、浮世離れした美しさだ。
彼女が、ルナーラ姫の言っていた友人らしい。
「はっ、こんな下等生物に、なんの気を遣う必要がある?」
「…………」
「ミ、ミリア様……? 抑えてくださいね……?」
ピリッとしたのが伝わったのか、アリシアちゃんが冷や汗をかきながら私を見てくる。
「大丈夫、気にしないで」
こんなのでも、一応は国を支配する王。
さすがにそんな愚かなことはしない。
「さて、我が国最強の戦士と戦い、敗れた際にはお帰り頂く約束だが……準備はいいか?」
国王は、私たちを今すぐにでも帰したいんだろう。
最強の戦士、か……。
エルフは弓の扱いと魔法スキルの扱いに秀でた種族だけど、どういう戦いになるんだろう?
そう思って、最強の戦士とやらが登場するのを待っていると――。
「お呼びでしょうか、国王様?」
腰に剣を携えた、女性が現れた。
……嘘でしょ?
「よく来てくれた、ローテリ。ヒューマンの英雄殿が、是非
いや、私が望んだわけじゃないですけど?
勝手に記憶を
「英雄ですか……へぇ?」
ローテリさんというエルフは、ゴミでも見るような冷たい目で私を見てくる。
「面白いですね。英雄を語るということは、よほどの実力があるのでしょう」
口元を緩め、馬鹿にするかのように笑みを浮かべるローテリさん。
よく言うよ。
全然そんなことは思ってない目をしてるくせに。
完全にこっちを見下している。
ただ、油断はできない。
威圧感と殺気は、勇者と比にならないくらいに強い。
むしろ、こちらを舐めてくれている今の状況は、ラッキーかもしれない。
「よろしくお願い致します」
「えぇ、こちらこそ。どちらで決闘を?」
私に合わせてローテリさんは頭を下げた後、すぐに国王へと視線を戻した。
すぐに戦いたいようだ。
「相応しい舞台を用意してある。こちらに来てくれ」
そう言って、国王に連れて行かれたのは――剣闘士が戦う、コロシアムだった。
既に観客席も満席になっており、多くのエルフが集まっている。
しかも、異様な熱量だった。
「殺せぇえええええ! ヒューマンなど、ズタボロにしろぉおおおおおお!」
「汚い下等生物が、よくもエルフの国に足を踏み入れたな!」
「ローテリさまぁ! 今日も素晴らしい試合を見せてくださぁい!」
うん、野蛮すぎる。
これが、あの誇り高きエルフ?
まるで、私が知るエルフとは別の種族みたい。
「はっはっは、昨日告知したばかりというのに、こんなにも国民が集まってくれるとはな。いやぁ、実にめでたい」
なるほど、見世ものにしたくて、国王が集めたのか。
ヒューマンがやられるところを見たいエルフたちが集まっているのなら、この熱気にも納得がいく。
だけど、それにしてもやっぱり異常な様子だ。
「ふっ、わざわざ忙しい前線から戻ってきたんだ。数秒で降参などという、つまらないことはしてくれるなよ?」
やはりローテリさんは、私を見下しているようだ。
おかげで、隣に立っているアリシアちゃんの表情が、不機嫌そうなものになってしまっている。
温和なこの子でも、ここまで馬鹿にされると怒るらしい。
「決闘のルールは? スキルの使用はありでしょうか?」
「スキルありでエルフとヒューマンが戦っては、それこそ勝負にならん。剣技で十分だ」
だから『戦士』として、剣士を連れてきたわけか。
一瞬、エルフが自分たちの長所を捨てたのかと思ったよ。
「わかりました。お気遣い頂き、ありがとうございます」
スキルはなしということで、私は常駐しているスキルを解除する。
剣は取られ、代わりに木刀を渡された。
てっきり、剣で戦えと言うかと思ったけど――まぁ、優しさではないだろう。
こっちのほうが
「――お互いが負けを認めるまで、勝敗は決しない。もちろん、スキルを使用しなければ、なんでもありだ。さぁ、かかってこい」
ステージに立つと、相対するように立ったローテリさんが、私に木刀を構えた。
どうやら審判はおらず、もう開始されているようだ。
「どうした? ほら、ハンデだ。一発打たせてやる」
「それはどうも」
お言葉に甘えて、私は木刀を一振りする。
それによって――ローテリさんの木刀が、吹き飛んだ。
「「「「「……は?」」」」」
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