第七話:青春の幕下ろし
ついに迎えた卒業式。
あのときは蕾だったのに、今日の桜は満開だった。
ひらひらと桜の花びらは空を舞い、まるでわたしたち門出を祝ってくれているように思えた。
式は何事もなく終わり、さっきまで目を真っ赤に腫らしていたののかだったけど、教室を出るころには気持ちの整理もついたのか、晴れやかな表情を浮かべていた。
「つみきちゃん。わたし、このあとたいちくんとごはん食べに行くんだけど……」
もじもじしながらそう話すののか。きっとごはんと言いつつも、高校生最後のデートでもしてくるんだろう。
「行っておいで。せっかくなんだから、沼倉とチューまでしてきなさい」
「つ、つみきちゃん……!?」
軽い冗談で言ったつもりだが、思った以上にののかは顔を真っ赤にしてしまった。
「ののかー」
そこへ、友人たちとの話を終えてきたであろう沼倉が、ののかを迎えに来た。
はぁ……すっかり沼倉も、ののかのこと名前呼びか。
「じゃあね、ののか。沼倉と楽しんできて」
わたしはののかにそう言い残して、先に学校を出た。
校門の外では、みかが待っていた。
「先輩。帰りましょうか」
二人で帰り道をゆきながら、ふとみかは言う。
「つみき先輩。わたしはつみき先輩のこと、ずっと前から……好きですからね!」
いきなりなんだ、と思ったが、きっと失恋したばかりのわたしを元気づけようと言ってくれたのだろう。
「……ありがとな。でも、ののかのことは、もうたいぶ吹っ切れてるから」
そう答えると、みかは「むー……」と唇を尖らせてしまった。そういうことじゃなかったんだろうか?
……まあ、そのうち機嫌なんてなおるだろう。
「そういやみか、このあと暇か? 高校生活最後になるわけだし、せっかくだからわたしも、どこか出かけようと思ってさ」
するとみかは、途端にパァっと顔を明るくさせた。
「……っ! それってデートのお誘いですか!? ぜひお供させていただきますとも!」
……思ったよりも、機嫌がなおるのは早かったようだ。
――最後の最後で。ののかと過ごすことは叶わなかったけど、これはこれで、わたしらしい青春の幕下ろしといっていいだろう。
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