4.エピローグ

 巳上と足立は、警察に連れていかれた。

 居酒屋の前で、蝶野はぼんやりと佇んでいた。

「帰ろう、蝶野くん」

 店から出てきた虎屋が言った。

「……犯人は、巳上さんだったんだな」

 蝶野はそれだけ言った。

「……もしかして蝶野くん、巳上さんのことが好きだったのか?」

「ああそうだよ! ……でも、今はよく分からない。あの人は足立くんの彼女だ。……あの人は人殺しだ」

「…………」

 虎屋がポケットに手を入れると、触れるものがあった。

 引っ張り出してみると、それは赤坂の名刺であった。

「なあ、蝶野くん」

「……なんだ?」

「今度、メイドカフェへ行かないか? のメイドカフェへ、二人で一緒に」

 虎屋はそう言った。

 警察車両も去って、繫華街は、普段の雑然さを取り戻していた。

「……そうだな。一緒に行こう」

 蝶野は歩き出した。

 虎屋も並んで、通りに出た。

 深夜の空に、月は無かった。ただ星々だけが静かに燃えていた。

                                     了

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alone 名探偵・虎屋独歩 古手忍 from uNkoNowN @lemonadest

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