63. トークルーム & 師匠からのメッセージ
GTB トークルーム 魔女被害を憂う会 (1)
[ぺけ丸]
死んだー
[イガラー]
ケケ、何やってんだ?
転落死でもしたのか?
[ぺけ丸]
違うって
普通にプレイヤーに殺された
フライパンで
[まろにぃ]
フライパン?
いや、普通じゃないだろそれは
[どーまん]
意味がわかんねぇ
棒立ちでもしてたのか?
[ぺけ丸]
ガチでやったよ!
ぺけ丸カスタム vs フライパン
[イガラー]
ぺけ丸カスタムって
デザートイーグルベースのやつか
っても、所詮ハンドガンだからな
趣味の品だよなぁ
[ぺけ丸]
いやいや、意外に侮れない威力なんだって!
ごりごりに強化してあるから
ボディーアーマーだって貫通するからね?
何より懐に忍ばせておけるのがいいよね
どんなときでも頼りになる相棒だよ!
[まろにぃ]
落ち着けってw
[伝説の配管工]
そもそもどうして相手は
フライパンなんか武器にしたんだ?
[イガラー]
確かにw
[ぺけ丸]
それは知らない
たぶん他に武器を持ってなかったんじゃない?
始めたばかりみたいだったし
[どーまん]
初心者プレイヤーに負けたのかよ!
www
[ぺけ丸]
その通り!
でも、あれは腕前とかどうとかの問題じゃないよ
アイツ、俺の撃った銃弾を弾いてたからね
[伝説の配管工]
弾いた?
フライパンでってことか?
[どーまん]
はぁ!?
そんなことできんのかよ?
[ぺけ丸]
やってたからできるんじゃない?
しかも跳弾で反撃してきたからね……
狙ってやったのかはわからないけど
ちなみにトドメはフライパン殴打でした
[イガラー]
ケケケ!
GTBにおいては、なかなかない死に様だな!
[どーまん]
いや、どんな状況でもねぇだろ
[伝説の配管工]
真っ向からやって負けたみたいだな
まったく想像できないが
[ぺけ丸]
そうだろうね
実際体験した俺も何が何やらって感じだから
[まろにぃ]
大物新人現る……!
[どーまん]
まあ、悪くねぇんじゃねえの?
今のGTBは人が減るばっかりだからなぁ
[伝説の配管工]
そういう破天荒な新人がいれば
少しは刺激になりそうだ
[イガラー]
まあなぁ
だが、根本を解決しなけりゃいずれは……
[伝説の配管工]
忌々しい魔女め
[ぺけ丸]
ところでさあ
お願いがあるんだけど……
[まろにぃ]
どうしたんだ?
[ぺけ丸]
ぺけ丸カスタムが奪われちゃったんだよね
取り戻すのに協力してくれない?
[どーまん]
www
どんなときでも頼りになる相棒www
奪われてるじゃねえか!
[ぺけ丸]
うっさいよ!
[伝説の配管工]
まあ、ちょうど良い機会じゃないか
面白そうな新人をみんなで拝みにいくとしようか
[イガラー]
ケケケ、いいねぇ!
こういうの久しぶりだな
GTB トークルーム 魔女被害を憂う会 (2)
[どーまん]
くそっ、お前ら!
許さねぇからな!
戻ったら覚えてろよ!
[イガラー]
いや、やべぇ!
[伝説の配管工]
想像以上だったな……
[まろにぃ]
ヤバいって言うか……ヤバいだろ!
あれはフライパンじゃない!
ヤバい!
[どーまん]
……どうしたんだよ?
語彙が死んでるぞ
[まろにぃ]
どうもこうもない!
マシンガン連射しても、全部フライパンで防がれた!
[どーまん]
はぁ?
[イガラー]
防がれたっていうか
弾が吸い寄せられてただろ
[伝説の配管工]
確かにそうじゃないとおかしいな
確率的に
[どーまん]
チートじゃねえか!
[イガラー]
チート……なのか?
それなら普通に無敵とかになるんじゃねえの?
[どーまん]
そりゃ……確かに
[まろにぃ]
あれはチートとか生易しいものじゃない!
魔王だ!
魔王の所業だ!
[イガラー]
どうどう
落ち着けなー
[伝説の配管工]
そもそもサイバノイドが管理するゲームで
システムの監視をすり抜けるのは不可能に近い
できるとすれば、サイバノイドくらいだろう
あの魔女のような、な
[どーまん]
って、ことはフライパン野郎はサイバノイドってことか?
[伝説の配管工]
それはわからないが……味方にできれば心強いな
[イガラー]
ケケケ、確かにな!
魔女にぶち当てたらどうなるか……面白そうだ!
[どーまん]
そりゃいいな!
アイツらのインチキじみた防御を
無効化してくれりゃあいいんだけどな
[伝説の配管工]
ちょうどタイミングが良い
囚人プレイヤーたちが脱獄計画を企てている
ほーいちのところに投獄すれば
あとはヤツが仲間に引き込むだろう
[どーまん]
お?
ってことは、勝ったのか?
そういや、ぺけ丸はどうした?
[イガラー]
俺たちは勝ってない
ペケ丸が全部持っていった
[どーまん]
はぁ?
[まろにぃ]
アイツ、あの路地にパトカーで突っ込んできたんだ
で、俺たちごと轢いた
[どーまん]
なんだ、お前たちも殺されたのかw
ざまぁw
◇◆◇
「それじゃあ、今日の配信はここまで! 見てくれた人、どうもありがとー!」
笑顔で終了の挨拶をするのは配信者のウェルンだ。流れるコメントを少し眺めたあと、ウェルンは配信を落とした。そして小さくため息を吐く。
配信チャンネルの登録者数、視聴者数はともに悪くない。しかし、以前のような伸び率はなかった。
仕方がないことだとは理解している。あのときは状況が異常すぎた。デスゲームという史上類を見ない事件に巻き込まれたこともあるが……取れ高の権化のようなプレイヤーとフレンドになれたことが大きい。
今の状況も決して悪くはないのだが、一度大きくバズった経験があると、どうしてもそれが基準となる。そのせいで、ウェルンはもどかしい気持ちを抱えていた。
「お兄さん、今、何してるのかな? 師匠が転がりこんだって話は聞いたけど」
ウェルンが師匠と仰ぐのは、リリィという少女。現実世界に移住してきた珍しいサイバノイドだ。アルセイのサービスが停止してから、少し後、彼女の方から連絡があって、今も交流が続いている。
「うん? あ、噂をすれば……」
ピコンと鳴る音にスマホを見れば、そこには噂の師匠からメッセージが届いたという通知が表示されていた。いそいそと開封すれば、そこにはとある動画のURL。
「何だろう?」
首を傾げつつ、ウェルンはわくわくした気持ちがわき上がってくるのを自覚した。師匠が送ってくるのだから、きっとあの人物が関係していることは間違いない。ウェルンは一も二もなく、動画を再生した。
「うわぁ……あいかわらずだなぁ」
動画は見覚えのある少女と、見覚えはないが誰なのか一目でわかる人物が大暴れする内容だった。フライパンで銃弾を弾いたり、ヘリを落としたり……やりたい放題だ。全くやったことがないゲームだが、何故か懐かしい気分になってくる。
「GTBか。問題があって人気が下火になってるって話だったけど……これはやるしかないなぁ!」
現在配信しているゲームが中途半端になってしまうが、それでも視聴者は納得してくれるだろうという確信がある。配信において、面白いは正義なのだ。そして、ウェルンのリスナーは例のプレイヤーのハチャメチャな活躍に魅せられた者がほとんどである。喜ばないわけがない。
そうと決まれば、善は急げ。ウェルンは、自分も始めると師匠に返信してから、早速GTBのダウンロードを始める。その顔には、ため息をついたときのような憂鬱さは少しも残っていなかった。
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