肉屋はパトロール
「さてと、片付けは終わったからそろそろパトロールに行きますか」
日は落ち。あたりは昼と比べて極端に人が減り。明かりは月明かりと街灯と家の窓から漏れる光のみとなったこの時間。私のパトロールは始まる。
「さてと、歩いて街を一周したあとに四周くらい街を走りますか」
町内会長によれば私が歩く速度はバイク並みだそうだ。私は別にそうとは感じないんだがな。友人たちも町内会長と同じことを言うものだか困ったものだよ。本気の走りを見せたことがないのにね。
「……それなりに寒くなってきたねぇ。この前までは暑かったのに」
気づいたら冬だね。最近は刺激的な日が減ったから毎日が平和で時間なんて忘れてしまうよ。
「それにしても寒いなぁ。まだ、11月に入ったばかりだってのに……」
いや、さすがにこの寒さは異常だぞ? こんな寒さはここら辺の県じゃないぞ? どうなっているんだ。
「ふぅ……まさかね」
まさか、魔法とか使ってるやつは地球にはいないだろう。
まぁ、私がこっちに帰ってきて3ヶ月しか立っていないから日本の季節に慣れていないだけかもしれない。
「こんばんは」
「あ、こんばんは」
近所に住んでいるお兄さんに話しかけられた。
「なんか今日は寒いですね」
「ですね〜。今年はいつもより早く雪が降りそうですね」
「そうですねぇ。あっ、そういえば今はここらへん出歩かないほうがいいですよ。野犬が出るようなので」
とりあえず注意喚起はしておかなければ。知り合いの人が怪我をするのは嫌だからね。
「あぁ、噛まれた人が亡くなったと聞きました。それなら、今日は散歩はこれくらいにして帰りますか」
「ええ、そうしていただけると助かります。」
「パトロール頑張ってくださいね。それでは、さようなら」
「さようなら」
お兄さんが家へと帰られたので、パトロールを再開しますか……。
でも、野犬っぽい気配はこの街には一切感知できないな。野犬が出たのって、もしかしてデマか?
「まぁ、出てこないことが一番なんだけどな」
さてと、次はあっちの方にパトロールに行こうか――
――――キャァァァァ
「ん? 悲鳴が聞こえたな……そっちか……!」
走るか
夜の街を一陣の風が吹き抜ける。駆けていく風が人だと気づく者は誰一人としていない。
――――――――――――
作者の一言
ブリジュラスとかいう新たな600族の恥
小さな街の"普通"の肉屋 〜店主は普通だと思っている〜 紗斬_涼【スランプで更新作業はしてない】 @sakir-you
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