『国外追放』がトレンド

「悪女であるジュンアイ・ラブコールを『国外追放』する事と新しく僕の婚約者になったドロボウ・ネコ男爵令嬢と結婚する事を宣言します!」

 

 サル王子がそう高らかに宣言する。その宣言にジュンアイ公爵令嬢と周りの貴族は慌てる。

 

 しかしまだ婚約破棄が遊びではなく本当に行われている事にまだ気が付かない王は笑いながら言う。

 

「おお!『婚約破棄』や『真実の愛』だけじゃなく『国外追放』まで使うとはすごいやんけ!

 凄い成長した事に驚いとったけどこの成長速度は流石のワシでも予想外やわ!

 ワシの知らん間に息子が凄く凄い成長しててマジハッピーハッピーやんけ。」

 

 こんな事を言っている王は置いておいてトレンドの説明をしよう。

 

『国外追放』。それは『婚約破棄』や『真実の愛』と同じ様に恋愛物語のタイトルである。

『真実の愛』の悪役視点のお話しで『真実の愛』の後日談である。

 

 その話は悪役が罪に問われ力も金も権力も何もかもを失い最後は国外にある魔物が住む森へと追放されて魔物に殺されて終わる話である。

 

 他の創作物は悪役をギロチンにかけたり磔にしたりとだいたい同じ様な終わり方だが『国外追放』の終わり方は今までに無い斬新な終わり方として話題となった。

 

 もちろん創作だからこそできる事でありリアルでは出来ない。その理由は個人から力を永久に奪う事は出来ない上に国外追放は言い換えれば犯罪者を殺さずに逃がしているのだ。

 

 王子はその事も考えられないので王子という権力を使いジュンアイ公爵令嬢を無理矢理捕らえる。そしてジュンアイ公爵令嬢から力を一時的に奪い本当に魔物が住む森へと追放したのであった。

 

 そして本当にジュンアイ公爵令嬢が力を封じられ魔物が住む森へと捨てられた事を知った王は今更この婚約破棄はごっこ遊びでは無く本当の婚約破棄である事に気が付いた。

 

 流石の頭ハッピーな王でもこの事実が普通にヤバい事ぐらい部下達からの教えて貰わなくとも分かっていた。

 

 すぐさまサル王子とネコ男爵令嬢を捕まえ同じ牢屋へとぶち込んだ。そしてジュンアイ公爵令嬢を救助する為に隊を作り出し救助へと向かわせた。


 しかし捨てた場所まで行ってもその周辺をくまなく探してもジュンアイ公爵令嬢は見つからなかった。

 

 人員をできる限り増やし捜索するも、状況は変わらない。結局ジュンアイ公爵令嬢を見つけることが出来ずに僅か一週間で捜索が打ち切られたのであった。


 そしてこの日を境にトレンド王国は悪い方向へと進んでいくのだった。

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