『真実の愛』がトレンド

本当に婚約破棄を仕掛けて来た王子にジュンアイ公爵令嬢と周りの貴族達は戸惑う。

 

 そんなパーティ会場に一人の男が入って来た。その男はこのトレンド王国の王である『ウマシカナ・サル』。

 

「どしたんや皆の者!」

 

「父上!僕は悪女であるジュンアイ・ラブコールを『婚約破棄』しました!そして私は気づいたのです!男爵令嬢のドロボウ・ネコと僕が『真実の愛』で結ばれていると言う事を!」

 

 王子がとんでも無いことをほざく。しかしそれを聞いた王はこの婚約破棄がごっこ遊びだと思っているのでその遊びに乗るのだった。

 

「ほう、今流行りの『婚約破棄』をしたんやな!それに『真実の愛』も絡めるとは…見事やな!流石ワシの息子や!

 …それにしても流行りに対して消極的だったお前がここまで成長するとは…。

 ワシはとってもハッピーハッピーやんけやし、国民の皆もハッピーハッピーやんけ。」

 

 トレンド王国の王であるウマシカナ・サル。口癖は「ハッピーハッピーやんけ」。その頭は口癖通りハッピーで埋め尽くされている。

 

 そしてこの男、地力や政治力や戦闘能力などの王として君臨する為に必要な才能は皆無だがトレンドを察知する事だけは天才的。

 

 普段の政治活動は優秀な部下達からの助言などのサポートで何とか行えている。

 

 普通なら「こんな無能を超えた無能が王になるなんて常識的に考えて絶対ダメですよね。」と思うがトレンド王国は他国の常識を受け入れない。「トレンド王国はルール無用だろ」のスタンスである。

 

 そんなトレンド王国で王になる条件はトレンドに敏感な人間である事。トレンドに敏感であれば貴族でも平民でもスラムに住む者でも老若男女誰でも王になれる。

 

 さて、話を戻すが王子と王による先程の馬鹿みたいな会話で出て来た『真実の愛』と言う言葉。

 

 この言葉も数あるトレンドの一つだ。『真実の愛』は恋愛物語のタイトル名である。

 

 その話は洗脳され悪役との望まぬ結婚をすることになったヒロインが本来婚約者だった主人公の愛の言葉で洗脳が解けその後主人公とヒロインは無事結ばれる話である。

 

 その話のタイトルが『真実の愛』と言う。

 

 しかし今回の婚約破棄は『真実の愛』の話の様な悪役なんていないしヒロインも居ない、ましてや洗脳なんてものはない。

 

 つまりこの『真実の愛』はサル王子がジュンアイ公爵令嬢と婚約破棄をした上で浮気相手であるネコ男爵令嬢と婚約する為の理由付けとして、または言い訳として使われているのだ。

 

 そしてそんな事を知らない王はそのまま勘違いしたままサル王子が何を言うかを期待していた。

 

「それで?次は一体どうするんや?」

 

 この王の一言で事態は更に悪い方向へと進む。

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