第1話 星が消えた夜
「星、星。星がないと変だ。スッゴい変。」
ほし?星か?空の星か?レビューの星か?でも、どれにしても「ないと変」というのは違う。さっぱりわからない。ヒントをくれ。
「ベツレヘムの星だけないってどうしてなのかな?」
なんか読めてきた。クリスマスツリーのことだな。店に売ってないってこと?てか、セットで買え。
もうちょっと静観静聴してみよう。悩んだり、悲しんだり、怒ったり、表情七変化、面白い、…かわいい。かわいい?それは違う。
「だいたい廊下の真ん中にドーンと鎮座しているもんだから、朝とか登下校の時に邪魔になんだよ、あ、邪魔はだめだ。」
『遅刻しそうな人には不人気やわな。』
「言葉遣いに問題有りだ。今はいろいろと厄介だ。お邪魔におなりあそばす?お邪魔でいらっしゃる?これは単に敬語っぽいもんを使っただけで邪魔は健在だ。なんて言ったら無難だ…あーわからん。」
それどうでもよろしいです。
違う方向に走り出して壁に激突。語彙が貧困なんだから、無理するな。
『ベツレヘム、トップスターがないん?』
ほうほう、登下校、廊下、星とくればわかった。それはあれだ、師走の声が聞こえると、学校のエントランスにひょっこり現れるビックツリー。
ミッションスクールでもないのになぜか設置されてる、大方あのツリーのことだろう。あぁ疲れる。少ない情報を繋ぎ合わせていくこのクイズも一興だ。
「でかいから、誰かがツリーに当たってそれで落ちたのかな。頭に当たらなくてよかった。誰かに当たったとか聞かないし。」
また、あんなでかい木に当たるかな。枝に刺さるならわかる。
『そんなん、そこそこでかいんやから、さすがに落ちとったら気づくやろ。実際当たったら、脳震盪です。いつからないんや?』
「落ちたんじゃないなら、盗られた?でもどうやって?ツリーのてっぺんはかなり高いのに。あのツリーってば20メートルはある。」
はい、独り言モードに入った。『いつから?』は完全スルーされた。
『20メートルって、そんなあったら天井突き破ってるし、底面積どんな広さになるねん。確かに、今年のはいつもより台座が高くて、大きめな気がするけど、3メートルくらいやで。かなり盛っとるな。』
「それにやっぱり木はいい。大きな木は守ってくれそうで、マイナスイオンも出てるし、そばによるとふわーと木の暖かさが伝わってくる。そうそう触ったらほんのり暖かかった。やっぱ自然は偉大。」
腕組んでなんかそれっぽい哲学者みたいなこと言ってる。
『残念やけど暖かさもマイナスイオンも伝わらへんと思うで。』
思い込みとは恐ろしい。今年は寂しいことに世界的にもみの木不足、だから、その影響で例年は生の木だけど、今年のツリー本体はフェイクを使ってるらしい。よって木の温もりもなけりゃマイナスイオンもない。頼れるどころか幹が分割されるタイプだから危なっかしい。
でもそのかわりに生の木ではできないイルミネーションがチカチカしている。そのせいで暖かいとか言い出したんだろうな。単純だ。そこがいいとこだけど。
「でも星だけ盗ってどうするのかな。」
おー、あっちこっちに話が飛びまくり。もう完全に盗難説決定。最初からつけ忘れかもよ。
「自分のツリーに飾るのかな。チャームにするのかな。鞄に付けたらいいかも。他のオーナメントは要らなかったのかな。今年は色々なオーナメントがついてるのに。杖とかベルはお馴染みだけど、イルミネーションで光る用にいつもはないキラキラ光る球体?ボールみたいなのとかツリー型の三角錐?円錐?とか増えてる。光が反射してすっごいきれい。ベルがいいなぁ。」
遠くを見つめて語ってる。そろそろ止めるべきか。
よくわからんのは君のしゃべりだ。
『あほか、鞄につけたら目立つし、直ぐ犯人ってわかるやん。あの星、かなりでかいから、持ち歩きするのも重うて大変やで。それに一般家庭のツリーの上にのせたら、重みで間違いなくツリーが折れる。ベルって、鞄につけて熊避けの鈴にすんのか?』
相変わらずのおとぼけだ。
何に使うのが問題じゃなくて、ただ欲しかったんだろう。何にしろあの星は特別だ。
『もしかして知らんのか。あの星のこと。みんなが噂してるあのこと。』
「あんだけ輝くってことは純金?あ、だからか。それ以外に役に立つこと…あるかな?」
『いやいや、純金やったら、そないなとこにポンと置いとらんわ。まさか、知らんのか!ほんまに?』
「そういえばなんかあの星の噂を聞いたような。」
面倒だ。よく知らないなら、首を突っ込むな。と言いたいが…そういう自分もよく知ってるわけではない。興味がないので、チラッと知ってる程度だ。なので偉そうに言えない。
えーとあれは…と窓から見える公園のツリーをみながら思い出す。公園には小さい子供たちがたくさんいる。クリスマスのイベントだろうか、大道芸をやっていたり、キッチンカー、ライオンのエアドーム、ステージもある。定番の風船も。
ん?ライオン?じゃない虎?あ、虎、虎のぬいぐるみ。"鯛焼き""赤い"の紙を持ってたの、虎だ。おっと違う違う、今は星だ、星の噂だ。えーと…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます