a=4 深山もさやにさやげども

セミは本当に可愛そうなのか、

とふと思う。

小さい時お父さんが熱心に

「セミは1週間しか生きられないんだ」

と語っていた。

もしかしたら小学校の先生もそんなことを言っていたかもしれない。

その話を聞いたとき、

私は素直に

「可愛そうだな」

と思っていたけれど、

今思うとセミはなんとも思ってないんじゃないか。

セミの中ではその一週間が全てであるから

一週間しか生きられないのは当たり前だと思ってるだろう。

というか、

私も可愛そうって思われてるのだろうか。

私は私の今の全てを受け入れられているのだろうか



ベットに横たわる彼女は、

なんだか深山のようだ。

動きはしないが

その内の芯のあたりから

一つ一つの生物の生涯を感じてしまう。

彼女からもなにか、

言いようのできないなにかが伝わってくる。

それは雨のような優しさと激しさの両者を孕んだ

いかにも彼女らしいものだ。

だからこそ思う。

彼女は「可愛そう」だと。








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