a=2 不変の真理

私の宇宙は音だけだ。

あのいつかの事故で

たしかに脳は働きを停止したはずだけど、

なぜか音だけはきこえる。

たぶんだけど、そのことをみんな知らない。

音だけとはいったけど思考もできる。

要するに私は

体を動かしたり何かを見たりすることはできないが

意識はあり、周りの音は聞こえる、

というなんともハードSFの重要人物みたいな、

そんな状態なのだ。

この世から半ば追い出されながら、

でも完全に追い出されてない私は、

まるで中途半端に準惑星なんて名前をつけられた

冥王星みたいだな、なんて思ったりもした。




俺にとっての宇宙は、彼女だった。

彼女の笑顔はまるで数学の難問、

いや、

そんなちっぽけなものじゃなく

天文学的な年数や人員を投じても果てなく続く、

でもある一定の法則で動く

整然とした美しさのある宇宙の真理みたいな、

そういう笑顔だった。

でもその法則はいとも簡単に打ち壊され

彼女は動かなくなってしまった。

あぁ、

人間って精巧すぎるんだと思った。

美しいガラス細工みたいにすぐに壊れてしまう。

僕の中の法則じみた確固たる何かがなくなった。

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