第四集「真相」
「――君は本当においしそうに食べるね。見てるとこっちまで幸せな気分になる」
都名物の白麺に、白米が贅沢に使われた粥、生姜のきいた具材たっぷりの
冷えて、すっかり硬くなった
清鳳はといえば、自分の食事はそっちのけで琳瑯の給仕をし、次々と注文をしている。おかげで琳瑯が満足して箸を置いたときには、まだ相当の料理が残っていた。
しかし清鳳はなんら頓着せずに店の者を呼んで卓上を片付けさせ、食後のお茶を頼む。あれだけあれば何日分の食料に――そうは思うがどうしようもない。「
腹は満たされ、喉は潤った。次は――。
「あの、妹さんのお話ですが――どうして、家出されたんですか?」
琳瑯が尋ねると、穏やかに笑っていた清鳳がにわかに表情を収め、ふっと目を伏せる。僅かに口元を歪め、
「それが……。悪い男に騙されてしまってね」
「騙された?」予想外の言葉に、琳瑯は思わず眉を寄せる。
「でも相手は受験者でしょ? 最終試験まで進むなんて優秀だし、悪くない相手じゃ……」
茶碗に口をつけようとしていた清鳳だったが、ふとその手を止めた。
「あれ僕、相手は受験者って言ったっけ?」
しまった! 琳瑯は慌てて、
「三年前って、ちょうど今と同じく受験期だったから、そうかなーと」
苦しい言い訳を苦しい笑みでごまかしてみる。すると清鳳は何度も頷き、
「なるほど。君鋭いね、その通りだよ。――ただ、実は違っていたんだ。妹も、僕たち家族も、ヤツは受験者だと信じていたけれど」
「――どういう意味ですか?」
「ヤツは受験者じゃなかった。受験者のふりをして妹を騙してたんだ」
鼓声を聞きながら、琳瑯は廃寺に戻った。
「おかえりなさい」気づいたら、柔らかい笑みを浮かべて清燕が傍らに立っていた。着替え終わるのを見計らっていたかのようだ。
相変わらず青白いが、月光を受けているからそう見えるのだと言われれば、そうだと思える。今日の成果を聞きたくてうずうずしている彼女の、まるで邪気のないまっすぐな目を見たら、帰り道に固めてきたはずの心が揺れる。
「君のお兄さんに会って、全部聞いた。君は騙されていた」
真実を告げて、男探しは諦めさせる。そうして
だけどいっそ黙ったまま、彼女に勘違いをさせたまま清鳳に清燕の居所を教えて、弔ってもらった方がいいのではないか。俺のことを恨むだろうけれど、今さら真実を知って何になる。これ以上、無理に辛い思いをしなくたって――。
「その包みはなあに?」
清燕に言われて、琳瑯は手にした包みの存在を思い出した。琳瑯は黙って、それを彼女の目の前で解いて見せた。
「
「知ってる。
すうっと清燕の目が細くなり、表情が消えた――と思ったら、口元に妖しく艶めかしい笑みを浮かべ琳瑯を見つめ返してくる。
これは、誰だ――背筋がぞっとした。
「それならもう、隠し立ては無用ってことね。そう、私は相禄に騙されて――殺されたの」
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