第2話 【こみゅ限定】今月の雑談 2
私の考察がされているみたいだ。
コントロールが高いのは知っていたけど、そんな長所があるとは思わなかった。
私がゴブリンをたくさん倒していたのは、結局の所ゴブリンしか倒せないだったからな。
少しでも強くなるためには一体でも多く討伐する必要がある。今みたいに力があれば、スライム二百体やゴブリン三百体なんてする必要がない。
だから私としてはキングゴブリンを倒せるほうが凄いと思うし、そんな自分が考察されている事に実感がわからない。
『コントロールが規格外だって』
『ぶっ壊れ性能』
『ゴブリン200匹のせいか、凄さがよくわからん』
『キングゴブリン倒せなかったのもなー』
『あれ、コントロール激強だからスタミナ切れを起こさないよう自動制御されてる説』
『上手く魔力を調整出来ているから最低限の攻撃で倒せる。で、耐久出来る説』
『キングゴブリンはギリ倒せないとか、都合良すぎないか?』
「制御? 調整?」
なんだろう? そのまま勢いよく流れるコメントを見ながら考える。
勝手に魔力が制御されているなんて話は聞いた事がない。初耳だ。
その話がピンと来ないので、そのままコメントを見ていると、結構有名な話なのかリスナーさんの大半がその内容をコメントしていた。
なんでリスナーさんは知っているんだろう。
「みなさんが話されている自動制御って有名な話ですか?」
これって私が知らないのはまずいのでは? 少し恥ずかしいけど恐る恐るカメラに向かって尋ねる。
するとすぐにコメントが流れた。
『羊川さんの考察動画です!』
『真白さん。知らないなら気にしないで』
『やっぱただの考察か』
『信憑性あったから信じていたのに』
ん? 考察動画? 考察されているって話は出てたけど、もしかして動画まであがっていたの?
「あの、私の考察動画も出ているんですか?」
カメラに向かって尋ねながらコメントを見る。すぐにコメントが流れた。
『結構出てる』
『変なのはない』
『竜王と魔衛庁がバックについててそんな事するヤツおらんやろ』
『コントロール高過ぎるみたいで珍獣扱いはされてる』
『真白ちゃんはゴブリン耐久に火の壁と話題がつきないから』
『めっちゃウキウキしている冒険者も多いよな』
『最終的に冒険者オタクの語り場になる』
『あるある』
リンドヴルムさんが来てからネットに触れていなかった。と言うかそれどころかじゃなかった上にスマホもPCもリンドヴルムさんが使っていたから、配信タグの確認と魔衛庁からの連絡しかチェックしていなかった。
だから実際どうなっているかは知らないけど、何となく凄い事になっている事がわかった。
解説動画があがっているんだ。って私の解説動画って問題ないかな? 配信が終わってから考えないと。先生にも言っておいた方が良いかな。
今はこれ以上考えてどうにもならないし、とりあえず、リンドヴルムさんの反応を見よう。
そう思いながらリンドヴルムさんへ視線を送ると興味深いと言う表情で笑っていた。
「どうしたんですか?」
「真白の力が制限されているって面白い事を言う人がいるんですね」
「面白い?」
「正解ですよ。真白の事をよく見ていますね」
リンドヴルムさんが感心するように言った。私の力が制御されている。それはどうやら本当らしい。と言うかそれって、言って良いのかな? 一旦リンドヴルムさんの様子を見ていよう。コメントを見ながらリンドヴルムさんの言葉を待つ。
『正解なのか』
『まじか』
『よく見ているって。なんだろうこの余裕』
『どうせリンドヴルムの方が羊川の事知っているからだろ。知らんけど』
『後方ペット面か』
「僕の方が真白の事を知っている? もちろんですよ」
自信たっぷりで言った。本当によく言えるな。そのまま見ているとリンドヴルムさんが誇らしげな表情をする。そしてゆっくりと話を続けた。
「ふふっ。せっかくですし、真白のコントロールについて話しましょうか」
『ま?』
『言って良い話?』
『無理して言うなよ』
『チキンレースは止めてくれ』
『消されるなら言わなくて良いからな』
やっぱりリスナーさん達も心配している。この雑談は一言間違えるとお蔵入りになっちゃうからな。
「リンドヴルムさん魔衛庁に確認した方が」
「解説動画があがっているのでしたらきっと問題ないですよ。それに真白のコントロールが高いというのは知られていますからね。その話の延長ですよ」
「ですが」
「この動画も見られていますし、まだ
確かにそう言われるとそうだな。なら丈夫そうだし、一頭リスナーさんには魔衛庁に連絡しないようにお願いだけしよう。
『確かに』
『魔衛庁凸か』
『動画も消されていないしな』
『公式からの供給きちゃああああ』
『考察が捗る』
『冒険者オタク大歓喜』
『気になっても魔衛庁に勝手に問い合わせるなよ』
『魔衛庁に問い合わせ×』
『魔衛庁を困らせるなよ』
『いつもの』
『イエッサー』
『りょ』
言おうと思ったらその前に一気に了解コメントが流れた。最近はリスナーさんがこんなノリで注意喚起してくれているので助かる。
だからか私とリンドヴルムさんはあまり他の方に迷惑かける事なく配信できている。本当に温かいリスナーさん達だ。
「僕は話題にあがっている動画は見ていないので、動画の通りとは言えませんが。出会った時の真白は同レベルの七割くらいしか出せていなかったですね」
了解コメントが落ち着いたのを見計らって、リンドヴルムさんが言った。七割くらい。同期の友達に比べると火が弱かったのは、そう言う理由もあったんだ。
七割。そっか。コントロールが強いと言われてもやっぱり火力が低いのがはっきりとわかるのは少しショックだ。
「七割……ですか」
「安心して下さい。僕に会う前の話です。今は同レベルの冒険者より真白の方が出せてます」
考えながら聞いているとリンドヴルムさんが続けた。あれ? 突然増えた?
「七割じゃないんですか?」
「ある程度レベルがあがると普通は意識的にコントロールするようになるんですよ」
「意識的にコントロールをするんですか?」
「真白は簡単に最適な魔力を出せるから気にする必要はないです」
確かに魔力が上がると魔力で盾や弓を作ったり色々出来る。だからコントロールが必要になってくるんだ。
そう言えば今日の火の盾は勝手に雑誌サイズになっていた。大きくなるが試してみたが、結局は最初のように新聞紙くらいのサイズになることはなかった。
「そう言えば今朝の火の盾は小さかったですね」
「ええ。真白と同じレベルの魔力量でしたら普通は単行本サイズの盾になりますよ」
単行本って漫画だよね。今日の火の盾ですら心許なかったのに、それ以下?
「えっ!」
「ふふっ、普通は簡単に盾を作れないんですよ。凄いです」
凄いでしょうって、そんなサイズだったら盾は作らない方が……そっか。だから火の盾を出すのにある程度のレベルが必要なんだ。
火の盾を安定して出せている。強くなった事を少し実感出来た気がする。
そのままコメント欄へ視線を移す。
『知らなかった』
『真白ちゃんも知らなかったのか』
『結論:真白ちゃんは凄い』
『それは知ってる』
『奇遇だな。ワイも知ってる』
それを見てリンドヴルムさんが目を細めた。
「ふふっ。そして僕はそんな素敵な真白に拾って貰い、真白の唯一の眷属になりました。そして真白の可愛い眷属と魔衛庁に認定してもらって、質問配信でしたね。質問配信は本配信を見て貰うとして、次に行きましょうか」
「振り返らないんですか?」
「ほら、うっかり話していけないことを話したら良くないですし」
『了解です』
『りょ』
『可愛くないが次だな』
『せやな』
『よし、次だ』
『可愛い眷属ではないが、次に行こう』
一斉に次と言うコメントが流れる。チキンレース。その言葉が頭に浮かぶ。余計なことを言わないようにしないと。
「そうですね。次に行きましょう」
話を終わらせるように伝えるとリンドヴルムさんは「はい」と笑顔で言った。
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