第19話 どうするかな。


魔王様に試されてると、思い始めてから1週間。

今日は定期報告の日だ。


まだ、お互いに信用していなかったが、信頼はしている関係だと思っていたので、余計に疑心暗鬼だ。


でも行かないとダメですよね………。


と言うことで転移。


目の前に魔王様。


「………こんばんは。」


「こんばんは、愛しの番。今日は遅れずに来たな。」


「……以前の教訓を生かして、時間は守ろうと思いましてね。」


「…そうか?では行くぞ。」


また肩を抱かれる。


まぁ、目を合わせなくて済むからこの位置はとても楽だ。


魔王城に入ると、いつもの従者が一礼してくる。

少し笑っているように見えるが、何がおかしい。


そのまま、執務室に入り、報告を開始。

いつもの流れはこの後、魔王に寝室につれて行かれるのだが、今日はこのまま聞きたいことがある。


お互いにソファで対面に座り、報告書を手に話しているが、いざとなったら………俺は死ぬかもな。



「……と、下女が噂してたくらいですね。」


「うむ、魔族の印象はただ下がりだな。」


「……そうですね。でも……」


「…ん?」


「それを…狙って情報操作してますよね?魔王様…?」


「………。」


「貴方の間者は王城の奥深くまで入り込んで、多分、聖女本人とも接触してますよね?……そして、」


ここで、一気に聞かないと気力が保たない。


「辺境に毒を仕込んだのも、…貴方の指揮の下で行われている。」


「……ほう。」


先を聞いてくれるらしい。促すように顔を上げて、口角を少し上げている。



「……毒かどうかはまだ、一部しか知らない情報で、それを良いことに教養のない、辺境の村の人間には魔族のせいだと、…呪いだとか適当なことを噂として広める。」


魔族の印象を下げる。次に聖女の評判を上げる。

このためには、教会にも協力者が必要だ。


「そこで、聖女様を祭っておけば、前準備は完了する。………あとは落とすだけでしょう?」



今、聖女様は王都の人間たちには慕われている。

辺境にはそのへんの情報がくるのが遅いので、教会の関係者がここまでくることで、王都の噂を流し、聖女様の印象を上げておく。


民衆の関心は聖女様一人に向く。


だが、肝心の本人はその自覚はなく、連日買い物で贅沢三昧。


教養なんてないから、人心掌握の言葉も知らない。



そんなことが公になったらどうなるか。


「…国への不信感を民衆が抱くように仕向ける。」


「………。」


「そこで魔族討伐となれば、それは大変なことになるでしょうね?…パーティーメンバーの信頼すら怪しい。」


「…そうだな?」


笑みが深くなる。

やっぱり……。


俺も自称ぎみに笑い言葉を続ける。



「これは俺へのテストなんでしょう?いつ作戦に気づけるかの。……何点ですか?」



報告書をテーブルに投げ、魔王と目を合わせる。


従者も静かに成り行きを見守っている。


静な室内。


漂う緊張感。



「………まぁ、まだ生まれて間もないお前には、そこまで期待してなかったからな。」


「……魔王様に比べたら、まだ14年しか生きてませんからね。」


「それを賢者の能力がどのくらいカバー出来るか、お前自信の思考なども知りたかったからな。少し試してみただけだ。……怒ったか?」


「……良い気分はしません。」


「だろうな。だが、お前はまだ賢者の能力が全て開花していない。それは今回わかった。」


やっぱり。この魔王は以前の賢者たちを知っている。だからそれと比べたんだ。



「まぁ、賢者の力を使えれば、すぐわかったんだろうが。その年で自力でここまで考えられるとは、見事だ。そこは評価する。」



「…………」


「賢者の力はどうすれば開花するか、それが出来なければ、賢者でいる意味はない。」


ヒドいこと言ってくれるな。このやろう……。



魔王もテーブルに報告書を置き、立ち上がると、今度は俺の近くに歩み寄ってくる。



「……私が手を加えてやろうか…?」


「……っ…え…?」


戸惑う俺に手を伸ばし、俺の頭に置いたかと思うと、何やら魔力が流れてくるのが分かる。


「………う…っ!!」



なんだこれ……!?

頭が……割れそうッ!


以前感じた頭の痛み。

賢者の記憶を継承した時のものと同じ…

痛すぎて頭を抱える。



「さあ、お前は耐えられるかな…?」



………それ、同じようなことアイツも……。



そこで俺の意識は途絶えた。

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