第14話 あれ…?


夜になり、親に挨拶をして自室に入る。


皆が寝静まった時間を狙い、仮眠をとり、静かに起き上がる。


深夜1時くらいだ。


井戸はこの村に全部で8箇所。

個人で使用している村長宅もカウントしている。


その内、水脈が繋がっている井戸は村の住民なら大体わかるので、とりあえず最低3箇所調べなければならない。


どこから行こうか…



と言うことで、まずは井戸水以前の問題。

この近辺の湧き水のでる山中に転移して、水のそのものの性質を調べてみる。


これを基準にすれば、さっきのように自信なく判定、なんてことにはならない。


「…よし。分かったぞ。次は…」


自宅から一番近い井戸周囲の物影に転移。

一応、認識阻害の魔法はかけているが、万が一勘の良い人間に気づかれないため。敵も誰かわからないから、念には念を入れる。


井戸水を精霊に水の球にして汲んで貰い、物影で成分を調べる。


湧き水の成分と変わらない。

ここは大丈夫だ。


やっと確認が取れてほっとする。




さて次は…メアリーの両親の使う井戸。

さっきと同じように確認する。

こちらも大丈夫なようだ。


万が一を考えて、井戸についていた精霊に、水質の変化があったら教えてくれるように頼む。



意外にもスムーズに調べられたため、村の全ての井戸の安全を確認できた。

2時間かからなかったので、自室に転移して布団に入る。



「(今日大丈夫でも、明日はわからない。ラスの言う条件にここも当てはまるし、……毎日確認が必要だな。)」


しばらくは寝不足確定だが、今後は湧き水の方には行かなくてもデータがあるため、今日よりは早く終わるはずだ。


「(目的がわからないな…なんで辺境ばかり狙うんだ。…人数が多いんだから王都の方狙えよな…。)」



そう、人数が目的なら王都を狙えば一発だ。

例えば他国から恨みを買って、王都の井戸に毒を流され、国民が犠牲になった国も過去にあった。だがそれは邪道だし、人として非道すぎると、周囲から非難が殺到した。


そしてその国は乗っ取られたものの、残っていた自国民が周辺諸国に協力を仰ぎ、再び自国民による統治に成功したのだが。


今回のケースとは違うため、参考にはならない。


わざわざ、辺境や農村を狙う。

遅発性毒でしかも複数回摂取しなければ、効果がないものを使う理由が、早期発見を避けるためだけなのか。


どちらにしろ、情報が少なすぎる。

明日、村周囲に放ってある情報収集係の精霊の様子を確認するか。


徹夜だけは苦手なので、今日はやらんぞ。


考えを放棄して寝返りをうつ。



「………。」


わざわざ定期連絡意外に、魔王様の方から伝えにきてくれるとは。

ちょっとむず痒い感覚だ。



この関係は何だろう。

番になったが、恋愛感情は無かったと思ったのだが。


契約で俺を見張るためじゃないのか?



………それはそれでモヤっとする。


自分でもラス様に向ける感情が何なのか、整理できない。



だめだ。これは考えても答えでないやつだな!


よし、寝よう!!



再度寝返りをうつと今度こそ思考を停止させて眠りにつくのだが…、数時間後、食事だと親から叩き起こされてしまうのは、言うまでもない。

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