第3話 俺ってさ……?
家に帰ってくるまで、怒りやら情けなさやらで何とも言えない感情を持て余していた。
「…ユーリ、しっかり食べないと明日持たないぞ。」
俺と同じ黒髪、黒目を向ける父から諭される。同じ黒髪の母も心配そうにこちらを見てくるも食欲はなく、口に入れるのも辛い。なんとか胃に納め、ベッドに潜る。
もしかしたら、メアリーとは家族ぐるみで仲が良かったから何か聞いたのかもしれない。
だが今は親とは話したくない。
モヤモヤが残り、何とも言えない感情のやり場がなく、気づくと眠っていた。
深い霧から光が何本か差し込む草原。
ちらほら白い花が咲き、心地よい風が通り抜ける。
最高の昼寝日和だ。
そこにふと、影が現れる。
目を薄ら開けると影が話しかけてきた。
『……、ユリアス!』
『………なんだよ。俺は寝たいのに…』
『わー、キミ今世もそんな感じ?こりないねぇ…。』
『今世……?』
『…私は貴方が気づくきっかけを与えに来ただけ。現実には干渉できない約束だからね。』
『…まずあんた誰?』
何のことかさっぱりだし、まず誰か教えてほしい。
白い長髪に布がフワフワしてて、なんだか存在そのものがフワフワ舞う感じだ。実際浮いてるし。
眠気が冷めてきたから、少し起き上がる。
『私は…貴方の守護神。導きのマーレ神と呼ばれているよ。やっと今世でのキミを見つけられた。姿は変わっても、その黒眼、黒髪は変わらないね…《賢者》』
『《賢者》…?』
『そう。ユリアスは14歳になって、スキルが出現したでしょ?それが《賢者》。そのスキルがある者は必ず、私の加護が付いて、貴方が大切な者達も含めて護るんだ。』
『……俺はまだ選定の儀やってないから、自分のスキル知らないし、それ本当なのかわからんが…。』
『本当だよ。私が証明になるんだが。…信じられないって顔してるね…。』
しまった、顔に出すぎたようだ。
マーレ神、ちょっと親しみやすい感じなんだよなー。なんか何となくデジャヴ…気のせいか…?
『これから、君に賢者たる所以を教えてあげよう。少しずつ思い出すといい。』
マーレ神に胸の中心を指で押され、虹色の波紋が広がる。
そしてヒドい頭痛。
膝をつき、必死に頭を抑える。
なんだこれ??
色んな情報と生き様が現れては消え、まるで自分の経験した事のような感覚で処理されていく。
『……私の可愛い《賢者》…今世は何人の人生に耐えられるかな?』
……なんか不吉なこと言った…??
「ーー…………っ!!!」
目が覚めると、汗てぐっしょり濡れているのがわかった。
窓を見ると朝焼けで薄らと霧が染まり、まだ起床には少し早い時間だった。あまり時間は経過してなかったようだが、あの夢はっきり覚えてる。
「俺は……《賢者》だ。」
まだ少し慣れない。
「そりゃ当たり前だよな、50人の人生辿っても結局俺は俺だし。」
生きて死んで繰り返し、50人の人生と知識が詰め込まれた。
部屋の窓の前、映った自分を見つめる。
俺はまた、黒眼、黒髪。顔は普通より良い方だと思ってる。身長も同年代の平均より上だし、体系も少しやせ型だが筋肉は普通だ。
賢者は黒眼、黒髪がほとんどで、たまにアルビノのような容姿で、現れる人もいる。大抵、その時は体と精神が弱く、全員の記憶を継承出来てなかった。
今世?は耐えられたようだ。
父さん、母さん、丈夫に生んでくれてありがとう。
俺、頑張るよ。
……色々と。
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