第2話 え…?
朝日が山の頂上を越えたら目覚める。
日中は畑仕事。少しの自由時間に近所の友達や恋人と会う。日が山に入ると魔物が出やすいため家で家族と過ごす。明日の道具の手入れ。就寝。
これが俺、ユリアス・ロードの日課。
俺とメアリーは家も近い幼なじみだから、自由時間は一緒にいた友達の一人だ。
だが、メアリーから照れながら二人きりの時間がほしいと言われ、数日ドキドキしながら過ごすうちに告白された。メアリーを意識してから好きになるまで、時間はかからなかった。
メアリーは薄い桃色の髪で、頬も白く愛らしい容姿で、少し腹黒いが性格も良いほうだ。幼なじみだからお互い苦手なものも怒るポイントも知ってるし、お互い気兼ねなく付き合えた。
だから友達からも既に夫婦のようにセット扱いされたのも、誇らしかったし、これからもずっと離れずに居られると、
そう思っていたのに
「ユーリ、別れてほしいの。」
選定の儀から三日後、出発を明日の早朝に控えたメアリーに会えたと思ったらこれだ。
「…なんて?」
「だからー!」
頭を片手で押さえつけ、ため息。
いや、訳分からん。
「私、《聖女》だったの!だから貴方とはもうお終い。ね。」
ね。って頭をコテンってされてもさ
「だって、魔王討伐したら帰ってくるだろ?」
「……は?」
「俺は帰ってくるの待ってr…」
「いや、帰りませんが??」
……はぁ?!
「せっかく王都に行けるのに、魔王討伐したらお金いっぱい貰えるし、衣食住全部王様が負担してくれるんだよ?しかも討伐し終わったらしばらくは周辺諸国まわってキレイなドレス着てパーティーに出るんですって!そこで貴族様の目にとまればそのまま結婚もできるんだって言われてー!頑張ったご褒美みたいな??もー素敵すぎない??」
「メアリー…、で、でもご両親は…?」
「いや、知らない。私の人生だもの。お金は国から出るみたいだし、勝手にやるんじゃない?実は昨日、ちょっと価値観の違い?みたいな感じでケンカになってさー。一人娘とか老後の面倒とか言われてもって感じ。まぁ、縁切ったからどうでもいいのよ。」
ウソだろ…?本当にメアリーか??
こんな早口で、しかもあんだけ溺愛してるご両親…子どもが出来にくかったらしく農民には珍しく一人娘らしい…にクズみたいなこと言ってるなんて……。
少し腹黒いところが見える時は大抵、自分の身内をヒドく言われた時くらいだったのに。
ショックで言葉が出ない。
「ユーリとは性格は合うのけど、物足りないの。付き合っててもつまんない。」
「……本気で言ってるのか?」
「当たり前でしょ?ユーリはこの村ではまあまあな方だから付き合っただけだし、お金はあるみたいだったから色々買ってくれたのは嬉しかったかなーってくらい。」
「金……」
「あんた、そのくらいしか価値ないから!」
ガーーーン
俺は振られた。
その言葉がのしかかり、思考が停止した。
いつの間にか扉の外に閉め出されて、仕方なく協会を後にしようと廊下を歩き出すと、少し先にあの30歳くらいの聖職者が壁に寄りかかっていた。
その前を通り過ぎようとしたとき、ぼそりと呟きが聞こえた。
「……なんていらないんですよ。」
「………っ?」
「このまま、村で農民やって楽しい余生を過ごしてくださいね。」
俺の肩に手をおき、背中を向けて歩き出す。
明らかな敵意の言葉だけが耳に残る。
悔しいが視界にシスターが歩いてくるのが見えたので、手が出そうな自分を必死に抑える。
「…永遠にさいなら」
来年の選定の儀だけはアイツじゃありませんように。
そう願いながら俺は帰路についた。
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