聖女が嫌いなので。

カナデ

第1話 聖女誕生

「メアリー・ジェットさん、おめでとうございます!貴方は《聖女》に認定されました!」


 協会に響き渡る聖職者の声。

 直後に戸惑いながらも拍手と歓声が響く。


 今日は辺境地帯の農村にある協会で、年に一度ある『選定の儀』の日である。

 この日は皆、仕事を休み協会に足を運ぶ。


 選定は14歳になったもののみが受けられる。


 選定で有能なものは引き抜かれ、運が良ければ王都に招かれる。農村でも農業系のスキルがあれば就職に困らないし、運搬系なら商人として働き、物流も良くなるので結果村が潤う。


 そんなこんなでこの日は皆にとってとても大切な日なのだが、近年、少し事情が変わり、選定はある者たちを探すための手段となっていた。


 ここ十数年,、魔族の進軍が活発になり、人間の生活圏の縮小を余儀なくされてしまった。

 不安の波紋は広がり、徐々に生活の質が落ちてきたこともあり、あと数年で人間は魔族に下るとまで噂されるほどだ。


 近隣諸国は連合国となり、過去に魔王を倒したとされる伝説をなぞり、《勇者》《聖女》《魔道士》《賢者》の4人を探し始めた。


 どこにいるかわからない4人を探すには、14歳を迎えると発現するスキルを『選定の儀』でみるしかない。地道だがやるしかなかった国は、こんな辺境地にも聖職者を派遣し、儀式を行ってきたのである。


 まぁ、実際4人中2人は王都で認定されたようだし、俺も皆もこんな農村にいるわけがないと、彼女のメアリーの付き添い兼冷やかしに友達のスキルを観に来ただけだった。

 俺はあと三日後に14歳の誕生日を迎えるため、選定の儀は来年だ。


 そしてその彼女が、今壇上で《聖女》としてみんなにチヤホヤされて、頬を赤らめている。


 半年付き合い、さっきまでどんなスキルならいいか話をして笑っていた…


 メアリーが、《聖女》?


「これから《聖女》は王都に向かい、魔王討伐のための訓練に参加していただきます。メアリー様、不安かとは思いますが大丈夫ですよ。既に《勇者》と《魔道士》は発見された。残る《賢者》は居なくとも大丈夫とされていますからね、1年後の討伐は連合国が総力を上げて挑みます!あなただけではありません。」


 おぉーと周りから声か上がり、不安そうに聖職者を見つめるメアリーに、聖職者は肩を抱き寄せて支える。



 おい、俺のメアリーに何触ってんだ!!


 必死に自制しつつ、壇上に近寄ろうとする。

 そんな俺を視界に入れた聖職者がメアリーに手を差し出す。


「ではメアリー様、今後の予定を立てるためにこちらにいらしてください。これは国家の大事ですので他の方はご遠慮くださいね。さあ、お手を。」


「あ、はい…」


 30歳前後のおっさんに、急にお姫様扱いされたメアリーも満更でもない様子…


 ……くそっ、俺は近寄らせないつもりか?

 牽制のようにこっち睨みやがって……



 その日、メアリーは協会で保護され家族すら会うことは許されず、俺は途方に暮れて仕方なく家に帰った。



 こうして、今年の選定の儀は終わったのだった。

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