大量絶滅を招いた生物

 約35億年もの生物の歴史の中で、とある種の活動による環境汚染のせいで他の生物を大量絶滅に追い込んだ生物種がいます。

 その環境汚染物質は現代も地球上に存在し続けています。


 とある種とはランソウのことです。

 そして環境汚染物質は酸素です。


 ランソウはシアノバクテリアとも呼ばれ、葉緑素をもつ細菌(原核生物)です。

 現代ではアオコとして田んぼや湖沼に湧いていることがあります。ミドリムシが大量発生している場合もありますが、あれはシアノバクテリアではありません。

 シアノバクテリアはその後、他の原核生物と一体化して植物の祖となったと言われています。


 シアノバクテリアは25~30億年前に、二酸化炭素だらけの地球上に生まれた細菌の一種です。

 当時はまだ細菌が水の中でウヨウヨしていて地上に出ることが叶いませんでした。

 強烈な紫外線が降り注いでいたからです。

 菌類の弱点は今も紫外線であることは変わっておらず、紫外線に対する進化として葉緑素が生まれたようです。

 葉緑素は害を及ぼす日光を利用してエネルギーを生成する光合成を行います。

 これによってシアノバクテリアは大繁栄を遂げました。


 が、副産物というか排気ガスとして酸素を排出し続け、それが地球を覆うこととなりました。

 酸素による環境破壊です。

 酸素は猛毒です。

 容易に物を発火させる原因となり、万物を酸化させ、風化の一因となります。

 当時の原核生物は酸素により大打撃を受け、大量絶滅が起こりました。


 そんな中、猛毒である酸素を利用して代謝を行う生物が生まれてきました。

 我らの祖先となる生物はこうして生まれたわけです。

 酸素によるダメージは受けつつも、酸素がないと生きていけないという存在。

 酸素を使った代謝はデメリットはあれども、莫大なエネルギー効率をもたらすのです。また、大量の酸素がオゾン化(O³)することによりオゾン層を形成、オゾン層を作り紫外線の影響を緩和し、陸地に生物が進出することを助けました。

 陸上に上がった植物が燃える原因になったのも皮肉な話ではあります。


 さて、人類がもたらす大量絶滅。これはおそらくシアノバクテリアのように大気組成を大幅に塗り替えるようなものではありません。


 どちらかというと二酸化炭素の排出およびそれに伴う気温変動による変化なので大気組成には大した影響を与えていません。

 新たな物質で大気を満たすようなこともしていません。


 そう考えると人間の環境破壊は画期的というわけではなくシアノバクテリアほどの後の進化を一変するほどの劇的変化というわけでもないです。

 ただ、速度が早いというだけで。


 人類は自然発生によってはありえない物質を生み出したという実績はあるものの、世界を変えるような物質は生み出せていません。

 毒という観点から見ても人間の生み出す毒素は菌類が生み出す自然毒には脅威度の時点で全く及んでいません。

 もちろん、マイクロプラスチック含む過去に地球になかった物質が及ぼす影響は未知数です。

 これらを危惧するのは良いでしょう。

 何が起こるのかわからないという点は当然あります。


 ですが、それに惑わされるのもいかがなものかと思うのです。

 後になってそれが猛毒だとわかった時に手遅れだという話も理解は出来ますが、必要以上に危惧するのも間違いだと思います。


 念のために警戒するというのは当然否定しません。

 その対応策としての研究は当然なされるべきです。

 が、どこぞの環境大臣のようなものに踊らされる現実としては非常に馬鹿馬鹿しいとしか言いようがないです。


「何が起こるかわからない」を危惧するならば人間の活動全てが何を起こすのかわからないのです。

 それこそ電気を使うことから辞めるべきという話になるのです。

 そういう思考停止も解決策としてはあるのでしょうが、私はそれを合理的とは呼べないと断じます。


 人間ごときがシアノバクテリア様に及ぶとは思いませんが、大量絶滅を招くという点だけにおいて大先輩の功績に並ぶ可能性はあると思っています。

 しかし、まだまだ人類の持つ力はチクシュルーブインパクター(恐竜を滅ぼした一因である隕石)の足元にも及んでいません。まだ間に合うので生き残る研究を頑張れば良いでしょう。


 ということで、生物史最初の大量絶滅を招いた、シアノバクテリアの話でした。


 今回はここまでで。

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