『般若心経』

 前回、宗教について触れたので今回は有名な般若心経について。

 これは、ほとんどの人が知っているお経だと思います。


「え? 聞いたことがないけど」


 そうですか。西遊記をご存知ないですか。

 ご存知ない人も若い方には多いのかも知れません。

 じゃあFGOでもいいです。


 かの三蔵法師がお経を持ち帰るという旅の果てに得たお経の1つなんです。

 三蔵法師については称号なので『玄奘三蔵』と記した方が正しいのでしょうけど、7世紀頃の人です。現代ですら命が危ういような旅をしてよく帰ってきたものです。

 唐からインドまで往復して約3万kmの旅だったそうですが自動車を使ってすらキツい距離です。それをたった17年でお経を集めつつよくもまぁ、と。大量に持って帰ってきたお経を彼が死ぬまでに必死に翻訳したものが現代にまで伝わっています。


 さて、その玄奘三蔵訳の般若心経を読みやすくしたものが以下です。


 "摩訶般若波羅蜜多心経

 観自在菩薩行深般若波羅蜜多時。照見五蘊皆空。度一切苦厄。

 舎利子。色不異空。空不異色。色即是空。空即是色。受想行識亦復如是。

 舎利子。是諸法空相。不生不滅。不垢不浄。不増不減。

 是故空中。無色無受想行識。無眼耳鼻舌身意。無色声香味触法。無眼界。乃至無意識界。無無明。亦無無明尽。乃至無老死。亦無老死尽。無苦集滅道。

 無智亦無得。以無所得故。菩提薩埵。依般若波羅蜜多故。心無罜礙。無罜礙故。無有恐怖。遠離一切顛倒夢想。究竟涅槃。

 三世諸仏。依般若波羅蜜多故。得阿耨多羅三藐三菩提。

 故知。般若波羅蜜多。是大神呪。是大明呪。是無上呪。是無等等呪。能除一切苦。真実不虚故。説般若波羅蜜多呪。

 即説呪曰。羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提薩婆訶。"


 頭に仏説、ラストに般若心経、で終わるものもありますが文字数をここまで削れます。表記については「呪」ではなく「咒」で表記してあるものもありますが使われている文字については細かいお話だということで。


 これは大乗仏教の極意とまで言われています。

 お経を勘違いしている人がいるかも知れませんがこれは呪文とかそういうのではありません。内容が大事なのです。意味がわかるのなら無詠唱でも良いのです。


 え? 最後、この呪文を唱えろって書いてるって?

 よくご存知ですね。



 般若心経は凝縮しすぎて圧縮ファイルのようになっている文字列なのですが、私はこれを科学的な話だと感じました。『空』というものを説く内容となっています。


 観音菩薩がシャーリプトラに説いた言葉の一番中核となる部分です。シャーリプトラは釈迦の弟子の一人、舎利弗しゃりほつのことです。意訳は色々あると思いますが、私はこれは物質の状態変化のように万物が移り変わることを示していると捉えています。


 それを人の心や全ての生命にまで適応したスケールの大きな考えです。究極的に正しいか誤っているかは別として、そのような思想をすること自体が非常に哲学であり、科学的と思います。


 水がどんな状態変化を遂げようと、水が水であることには変わりありません。『質量保存の法則』ですね。


『人が生まれて死ぬことすら、人であるということに変わらないと。現在にあるのは「今こうであること」でしかない。

 また、我々が世界を認識しているのはあくまで主観であって世界の形を正しく認識しているわけではない』


 とも説いています。全ては『空』だと。

『空』が何を指しているかは正確には理解できませんが、無ではないようです。有るように見えてもない、その逆もしかりと。先程の水の例えなら水蒸気と水の関係と言ったところでしょうか。人生の老いや死もそうだというのは少し理解ができないところもありますが、この観点からすると転生モノがありうるかも知れませんね。

 異世界に行かずに永久にループし続ける世界も可能性はありそうです。無限の可能性がありそうです。

(仏教は輪廻転生というループから悟りを得て抜け出し『涅槃ねはん』に至ることを目的にしている宗派が多いのでそもそも転生モノの原点の1つは仏教なのでしょう。)



 悩みや苦痛、様々な感情も全て主観でそう感じているだけだと説いています。まぁ、よくわかんなかったら『羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提薩婆訶ぎゃていぎゃていはらぎゃていはらそうぎゃていぼじそわか』って唱えとけばいいよって締めになっています。『頭で理解することが全てじゃない』ってすごいぶん投げですね。

 ちなみに唱えるだけでいいのだそうですが、調べてみると意味としては「往ける者よ、往ける者よ、彼岸に往ける者よ、さとりよ、幸いあれ」 だそうです。(全国曹洞宗青年会のサイトより)


 祝いの言葉ですね。


 ということで般若心経はすごいよって話でした。


 では、今回はこれにて。

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