第4話
柔らかいものがふにふにと唇に当たり、あまりにもそれが長く続くので息苦しくなって目が覚める。
「んむぅ…………」
「ねえ、恋葉ちゃん?」
視界いっぱいにエヴァちゃんの顔がある。
綺麗な顔だなぁとぼんやり思っていると、思わず一瞬で飛び起きる発言が飛び出した。
「毎日わたくしとキスしてくださいな」
「へ?」
あれ、そういえば今またキスしてたんよね? え、いつから?
ウチは昨日が初めてのキスで、エヴァちゃんとは友達で。一気に心拍数が上がって顔が熱くなる。
「落ち着かないといいますか。やっぱり、百合キスは必要不可欠で、朝の目覚めとお休み前にはなくてはならない習慣になっていますから」
習慣? 習慣になってるって何? どういうこと?
そんなにたくさん他の人とも……って、いやそれはそうか。会ったその日にキスできるくらいだもん。そっか。いや、別にショックとか、そういうのじゃないし。
「エヴァちゃん、ウチと同い年なのに今まで何人と付き合ってきたん?」
「お付き合い? それは恋人という意味でしょうか? そういった経験はありませんわねぇ」
「は? え? じゃあ習慣になるくらいの百合キスって誰と??」
うん? 寝起きで頭まわってないウチがおかしい?
「それは、お母様とお姉様ですわよ?」
不思議そうに首を傾げられても、えっと、イギリスではそれが普通、とか?
「挨拶みたいなものですわ。ですからさっきも食堂で知り合った方と……」
ああ、帰りが遅かったのはそれで。いや、流石に普通じゃないよね? そんないろんな人と、キスとか。え?
「もちろん、ちゃんとしたお相手ができたらもうしません。でも、恋葉ちゃんはルームメイトで、一番わたくしの近くにいるでしょう? それに、恋葉ちゃんはとっても可愛いですもの」
可愛いって……嬉しいけど、キスも、嫌ではない。うん。初めてだから他の人と比べられないけど、その、気持ちいいし。安心するような気がする。でも、相手ができたら終わるなら、それって、すぐな気がする。だってエヴァちゃんは可愛いから。
「ウチじゃなくても、いいんやない? 学校始まったら、周りはもっと可愛い子ばっかりやし」
「そんなことはありませんわ! 恋葉ちゃんはとっても可愛いんですのよ! 心配しないでくださいまし。わたくしがしっかりリードいたします」
引くつもりはないらしい。
だけど、どうにも納得できない。だって、相手がいなくて困ってるわけではないはずだ。さっきだって知り合ったばかりの子とキスしたって言ってたくらいだし、わざわざウチを確保しておく必要はない。
答えないウチに焦れたのか、両手をギュッと指を絡めるように握られる。と思ったら、そのまま後ろに押し倒された。目が覚めて体を起こしただけだったから、頭は枕の上に戻っただけだ。痛みはないけど突然のことで驚いてしまう。
「やはりまだ足りないようですわ、恋葉ちゃんには百合の素晴らしさを知っていただきたいのです」
「んむ」
馬乗り状態ではあるけど、体格差もさほどないし、エヴァちゃんは軽いから抵抗するのは簡単だ。でも、キスされるのは嫌じゃない。唇が触れて、舌が入ってきて、吸われて、どうすれば分からないうちに息が上がって、頭がふわふわする。そうなると、もう何も考えられない。
「ねえ、良いでしょう? 恋葉ちゃん」
「んぇ?……あー、うん……?」
ぱぁっと花が咲くようにエヴァちゃんが笑った。
……えっと、なんの話だっけ?
「寝るだけなんて勿体ないと思っていましたが、恋葉ちゃんと一緒にお昼寝するなら悪くありませんわね♪」
その後も流されているうちに、また瞼が重くなっていく。
「ご飯の時間には起きましょうね。おやすみなさい、恋葉ちゃん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます