第3話

 押し切られる形で部屋に戻ってからモコモコうさぎさんパジャマに着替えさせられ、何故かいっぱい写真を撮られ、初日ということで気疲れもあったのかこの日はぐっすりと眠れた。

 目が覚めるとエヴァちゃんは興奮状態でまたいっぱいキスされた……。寝起きだったし、もしかして夢かなって思わなくもないけど、唇の感触がリアルでまだ覚えてる。どうやら夜眠れなかったようで、キスの途中で電池が切れたように突然ぱたりとベッドに倒れこみ眠ってしまった。変なテンションになってたのは寝れなかったせいだったんだね。部屋にはシングルベッドが二台ちゃんとあるのに、結局使ったのはウチのベッドだけだ。

 パーソナルスペースが、ない? って感じ。誰にでもそうなのかな? まあ、学校が始まれば分かるか。


 そんなわけで、今は昨日買ってきたお菓子をつまみながら、ダラダラとネットサーフィン。それにも飽きてくると視界に入ったのは、昨日自慢されたエヴァちゃんの百合漫画コレクション。初めて知ったジャンルだけどこんなにたくさん作品があるんだ、と驚きながら、薦められるままにパラパラと捲った。正直これって本当に読んで大丈夫かなって思うような刺激強めのシーンもあって。でも、ちゃんと読んでみたら面白いのかも、と思い、適当に一冊読み始めてみる。

 感想としては、普通に面白かった。なんというか、女の子同士の恋愛ってだけで、少女漫画と同じというか。別に身構える必要なんてなかったなって。でもやっぱり、キスって恋人になってからするものよね? 昨日の今日で何回キスした、っていうか、されたっけ……?

 思い出すと恥ずかしくなって、頭から追い払うようにいろんな本を読んでいるうち、後ろでエヴァちゃんが身じろぎし始めた。

 気づけばもうお昼を過ぎていて、食堂がもう少しで閉まってしまう。まあ、ウチはお菓子でいいや。気づいたら空いた袋が散乱していて、昨日あんなに買ったはずのお菓子がほとんどなくなっている。また買い足さなきゃ。


「恋葉ちゃん?」

「エヴァちゃん、おはよ。食堂もうすぐ閉まるけん、お腹空いたなら急いだ方がいいかも」

「恋葉ちゃんはもう済ませましたの?」

「うん。気づいたらお腹いっぱいになっとったし、大丈夫」

「午後の予定は?」

「うーんと……寝る?」


 これ読み終わったら、寝ようっと。

 既に眠くなってきている。エヴァちゃんがパジャマから着替えるために立ち上がり、空いたベッドにゴロンと寝転んだ。


「あら、こんなに読みましたの?」


 机に積まれた本に気づいて、嬉しそうに声をあげる。


「うん。面白かったよ。百合漫画も少女漫画と同じで面白くてドキドキするんやね」

「それは良かったですわ♪ 恋葉ちゃんには百合の素晴らしさを体感していただきたいのです!」

「そっか~……」


 ……ん?

 読みながら聞き流したけど今、体感って言った?


「では、行ってきますわ」

「いってらっしゃい。どんな感じやったか後で聞かせてねー」

「? 恋葉ちゃんも食べたのでしょう?」

「ウチ、お菓子食べた」

「お菓子? お菓子がお昼ご飯なんて一体どういうことですのっ?」


 あれ、なんか怒ってる? 一人で食べたからかな。


「ほとんど食べたし、後でまた買いに行って一緒に食べようね」

「そうじゃありませんわよ! 全く、お菓子はもう食べないでくださいまし! 夜ご飯は必ず一緒に食堂で食べますからねっ」


 もう! とぷりぷり怒りながらエヴァちゃんは部屋を出て行った。

 体感していただきたい……って、やっぱりそういう、ちゅー、みたいな……? そ、そうだ、なんとなく。そう、別になんでもないけどお菓子食べたし、うん、歯磨きしよう。

 そして、漫画を読みながらしばらくエヴァちゃんの帰りを待っていたけど、なかなか帰って来ず。そのうちに、すっかり眠ってしまっていた。

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