プロローグ

プロローグ1


 かつて最終戦争と呼ばれる巨大な戦争があった。

 発端は小さな国の若き民族主義者の場当たり染みた凶弾だった。それが老いたる帝国の皇太子の胸を貫いたのである。聖暦七一四年のことだった。


 小国と老国の戦争に過ぎなかったはずのそれは、雪だるま方式に肥大化した。各国で結んでいた同盟の条文に刻まれた、相互参戦義務の一文が別の国を戦争に引き込んだのである。それがまた引き金となって別の国の戦争を招き、いつしか二つの巨大な陣営に分かれて争っていた。


 大アルビオン神聖帝国、リリス共和国、ルテニア帝国が中核となった協商国と、アレマン帝国、オストリンデ帝国、タルキア帝国からなる中央同盟国が激しく対立した。

 戦いは四年間も続いた。実に官民合わせて、最低でも千五百万もの命がこの戦争で失われた。この戦いが終わった時、アレマン、オストリンデ、タルキアの三帝国は、地上から姿を消していた。


「この戦争は、全ての戦争を終わらせるための戦争である」


 さる国家元首のスピーチである。この戦争の名前でもあった。

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