第12話 ついにテストだぞ
「琉生! ついにテストだぞ……!」
「龍はなんでそんなに嬉しそうなんだ? テストだぞテスト」
「だって今までの頑張り見せれるんだぜ? こんな嬉しいことねぇだろ!」
「……ははは。確かに、言われてみればそうだな」
俺は早めに待ち合わせをして龍と教室にいた。花蓮にはちょっと早めに行って勉強してくる、とだけ伝え今日は一人で来た。
あと、正直ちょっと花蓮と学校へ行くのが気まづかった、と言うのもある。告白されてからあったあの気まづいではなく、違う気まづさである。
なんでなのかはあんまり分かっていない。俺と花蓮の気持ちの差が現れた、そんな感じかな。
シンプルに昨日あった出来事をまとめると、花蓮は恋愛的に好きだと思っていた俺に告白した。でも実は、友達として好きだった。でも、俺は花蓮の事を恋愛的に好きだった。なのに振った。
あぁ……もやもやする。
「今日のテストは全部100点とるぞ! あ、でも、物理はちょっとだけ自信ないから90点とるぞ!」
「そこは全部100点とるって言っとけばいいんだよ」
「あはは! 目標は高くてなんぼか」
この龍の馬鹿さ加減に本当に助けられている。ただの馬鹿じゃないってのがミソだ。
「あ、琉生と龍じゃーん。2人も早く来てたんだ〜」
「よ、香澄。今年は赤点とんなよ?」
「取らないし! てか、前回のあの英語は2分の1外しすぎただけだし!」
「まぁ、運ゲーに持ち込んでる時点でダメなんじゃないかな」
「ぐぬぬ……今回は勉強したし!」
やっぱ部活の選手とマネージャーなだけあって仲はいいんだなぁ。
HRまでまだ40分ほど時間があるが、香澄もひとりで少し早く教室に到着した。他の生徒たちチラホラ登校してきている。
問題を出し合い、15分程経った時だ。
「そう言えばかれれんは来ないの?」
「確かに。いつも一緒に来てるじゃん琉生」
「あ、あぁ……花蓮には今日早めに行くとだけ言ったから……花蓮は普通に来るんじゃないかな……?」
「ま、そうか! 花蓮のやつ朝弱そうだしな!」
「確かに! ちょっとそれ分かるかも!」
「もしかしてもしかしてだけど、私が朝弱いって話してた?」
「「ぎょえ!」」
「ちょっと2人とも変な声出さないでよ。おはよ」
いきなりの登場に変な声を出した龍と香澄。その2人に挨拶をした後、俺の方を向き花蓮はニコッ、と笑いながら手を振った。
何も変わらない花蓮。詳しく言えば去年の花蓮にとても似ている。
「か、花蓮もちょっと早めに来たんだな。言ってくれれば……一緒に来たのに」
「ごめん。朝一緒に行きたくて連絡入れようと思ったんだけど寝坊しちゃってさ」
花蓮が両手でごめんのポーズを作りながら隣の席の椅子に座った。
それからなんだかソワソワしながら残った朝の時間をみんなで勉強に費やした。
キーンコーンカーンコーン
「えー、テスト1日目だがくれぐれも禁止行為だけはするなよー。みんなもギリギリまで勉強したいと思うからここらへんでHRは終わりだ。さ、頑張ってくれー」
そう言って先生は一度教室を出て行った。テストまであと15分。いつもならギリギリまで勉強しているところだが今日はやっても意味ないと思い、早めに切り上げた。
「あ、琉生。スマホって廊下のロッカーにしまわなきゃだよな?」
「あ、そうだ忘れてた。ありがと」
「おうよ。もうしまっちゃおうぜ」
俺と龍は2人で廊下へと向かい、自分のスマホをロッカーにしまった。
「ねぇ! 龍! 今回も私と……勝負よ!」
「あぁ……いいぜ? 負けた方は……」
「「ビッグバーガーセット奢り!」」
「やってやらぁ!」
「まけないわぁ!」
廊下で2人の熱に押され、俺は省かれてしまう。2人はずっと睨み合ってやらぁ、とかおらぁとか言っている。よし、2人は置いてもう戻ろう。
「ねぇ琉生?」
「ひゃい!?」
「なんでそんな驚くのよ。そんなに殴られたい?」
「いつからそんなSっ気強くなったんだよ花蓮」
「そーゆーの好きじゃないの?」
「好きじゃないわ! 変な意味に聞こえるだろ!」
「ま、そんなのどうだっていいわ。ねぇ! 私達も今回勝負してみない? 五教科の合計点!」
香澄のように無邪気に笑いながら提案してきた花蓮。高校に入ってから、いや、中学の時もしてこなかったこの対決。……いい。うん。すげぇいい。
「もちろんだ。じゃ、負けた方は……」
「「星野のカレーパン奢り!」」
「分かってるじゃーん」
「当たり前だ。あそこはよく使われるだろ俺らに」
星野のカレーパンとは家の近くにある星野ベーカリーというパン屋さんのカレーパンの事だ。毎度奢りをかけての対決の時はよくお世話になっている。これがまた美味くてな。花蓮は多分俺の5倍くらいこの店のカレーパンが好きだ。
「じゃ、せいぜいケアレスミスのないように」
「ケアレスミスが無かったら俺には勝てないみたいな言い方だな?」
「違うわよ! 実力で勝つし! 言い訳なしだからね!」
「当たり前だ。受けて立つよ」
こうして2つの戦いが始まった。
このやり取りを経て、俺は思った。強く思った。花蓮は友達だ。気の合う幼なじみだ。もう、過去に囚われるのはやめよう。
「やっぱ琉生と同じクラスになれて良かった〜」
さりげなく花蓮は言った。俺に行った訳でもなく、誰に言ったとかないこのセリフ。この、聞こえてしまったセリフ。
やっぱまだ……忘れられねぇよ……
花蓮の変化が、俺の迷いを加速させ、2年一学期中間テストは幕を上げた。
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